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同じ塾で隣の席の女の子が可愛い。  作者: raitiiii
中2の1学期
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第1話 同じ塾で隣の女の子が可愛い。

 周りに聞こえるのは多くのシャーペンを走らせる音やページをめくる音。


 俺は目の前の数学の問題を解きつつ、隣の席へと目を向ける。


 そこにいるのは先生と一緒に問題を一生懸命解いている同い年の女の子。


 大きな真ん丸な目は真剣で、しきりにうんうんと頷いていることから、とても頑張っていることが分かる。


「じゃあ松田さん。この問題解いてみてくれる? 先生は春名くんの方見てるから」


 俺が女の子のことを見ていると、先生のそんな言葉が聞こえてくる。


 俺は慌てて数学の問題に視線を戻す。


 ここで先生と視線が合うとなにしてたんだと思われるからな。


「春名くんどう? 進んでる?」


「進んでないです。この問題がわかんないっす」


「あ~この問題はこうやってね~」


 俺は先生の解説を聞きながらチラッとまた隣の女の子の方を見る。


 松田鈴(まつだ すず)。 中学校が同じだけど話したことが今日までなかった女の子。


 女の子の中でも小柄な体、黒髪ショートボブに大きな真ん丸な目はどことなく小動物を連想させる。


 とても可愛らしく、特に笑顔が可愛いということで結構男子の中でも人気がある女の子だ。


「春名くん? 春名陸くん聞いてますか~?」


「あ、すいません。ちょっとぼーとしてました」


「もうっ! 部活で疲れてるのは分かってるけどしっかり集中してよ!」


「す、すいません!」


 俺は先生に注意されたので謝る。


 よくよく見ると松田さんもこっちを見てクスクス笑っているのが見えた。


 自分の顔が赤くなり、体温が上昇しているのが分かる。


 俺はすぐに先生に解説を頼み、必死に照れている顔がバレないようにした。


 中1の秋からこの塾に通い、塾の雰囲気に慣れたのに、まさか一緒に授業を受ける人が変わるだけでこんなに戸惑うなんて思わなかった。


 あぁ……男友達と気兼ねなく勉強してた頃がもうこんなに恋しいだなんて。


 俺はそんなことを思いながら、先生の解説を聞いて計算式を問題集に書き込んでいくのだった。


 _____学年が一つ上がり、後輩というものができて少しワクワクしている中2の春。


 俺、春名陸(はるな りく)は通っている塾での環境が変わった。


 仲の良い男友達がいるからという理由で通い始めた中学校からも近い塾。


 どんどん友達も入ってきて、俺が古参メンバーと言われるようになっていた。


 しかし、ある日塾長から中2男子たちにある決定事項が告げられた。


 それは『何人か通っている曜日を変更してもらう』というものだった。


 それを聞いた俺たちは離れたくないから嫌だと言ったが、塾長から理由を聞いてなにも言えなかった。


 理由は同じ曜日に中2男子が固まりすぎていること、仲が良いのはいいが、全体的に成績が上がっていないことが理由だった。


 自分たちにもその自覚があったし、親からも『あんたたち同じ曜日に固まらない方が集中して勉強できるんじゃないの? 成績あんまり上がってないじゃない』と、時々小言を言われていたからな。


 だから、俺たちは理由を聞いて反対することができず、塾長の決定事項を聞くしかなかった。


 そして、誰が曜日を変えるかは平等になるようにジャンケンをし、俺は負けてしまった。


 そこから俺以外にも負けた何人かが、何曜日になるか先生などの都合も合わせて決めることになった。


 そして、悲しいことに俺だけ誰とも友達と被らない曜日になってしまった。


 しかも、男子たちの間では“女子日”と言われている曜日になってしまった。


 “女子日“とは中2の女子だけが集まっている曜日だ。


 塾全体の女の子の人数は男子より少ないんだけど、この曜日は男子よりも女の子の方が多い。


 後、成績優秀者が多い。まさに男子たちとは正反対だ。


 友達の中には『ハーレムじゃん!うっらやましぃ!』とおちょくる奴もいたけど、俺は女の子と話すことはあまりないので、正直女の子だけのこの曜日になったことは嫌だった。


 でも、決まったことだし、自分が悪い点があったので諦めてその曜日に通うことになった。


 そして、今日が変わってから初めての授業の日で、それも今終わりに近づいていた。


「あっもうこんな時間だね。 今日はこれでおしまいにしようか! 私、宿題コピーしてくるから片付けとかして待っててね!」


 終わりのチャイムが鳴ると先生はそう言って職員室の方に向かう。残された俺と松田さん。


 周りは授業が終わったことで騒がしくなってきたが、俺たち二人はどことなく気まずい雰囲気だ。


 えぇ…どうしよう気の利いたこととか言えないよ?


 最初の挨拶の時だって名前とクラス言っただけで、それ以降会話一切しなかったし……。


「えっと、春名くん。 これからよろしくね?」


「あ、うん、よろしく」


 俺が緊張していると、松田さんも緊張した様子だが話しかけてきてくれた。


 よしっ……! 松田さんがせっかく話しかけてくれたんだから俺も頑張らないと!


「あの_______」


「鈴―! わたし先生に聞きたいことあるから少し待っててくれなーい?」


「あ、わかったよー!」


 俺が話しかけようとすると、松田さんの友達の声が聞こえてきた。な、なんてタイミングの悪い……。


 しかも、先生も宿題持って帰ってきたから更に話しかけにくくなったじゃないか!


「はい松田さんも春名くんも宿題忘れずにやってきてね。 それじゃあバイバイ!」


「さようならー!」


「あ、ありがとうございました!」


 先生は宿題を渡すと職員室に戻っていく。


 松田さんの友達も職員室から出たのが見えた。


 今自分の荷物を回収したから、松田さんのところに来て一緒に帰るんだろうな。


「あっ! 琴も準備できたみたいだから帰らなくちゃ! 春名くんまた今度ゆっくりお話ししようね! これはお近づきの印! じゃあね!」


 松田さんも友達に気づいたみたいで、慌てて帰りの支度をして帰ってしまった。


 俺の机の上にはお近づきの印と言って置いていったイチゴミルク味の飴が一つ。


 美味しそう……。俺は飴をポケットに入れて、帰りの支度をしてから塾を出る。


 外は春になったとはいえ、夜だからまだ少し肌寒かった。


 でも、貰ったイチゴミルク味の飴がいつもより美味しく感じて、肌寒さは全然気にならなかった。


全133話+あとがき。

毎日2話更新で、時間は1回目が12時〜13時。

2回目が夜の19時〜21時の予定です。


ネット小説大賞十にも参加しています。

応援などよろしくお願いします。

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