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和風ファンタジー&現代恋愛

星降る夜に、願い放ちて

掲載日:2021/10/01

『仙道企画その2』参加作品です。音楽からお話を生み出すご企画。

詳しくは「あらすじ」にて。

 着信音が鳴り響く。

 バイト先からだ。今日はシフト、入ってなかったはずだけど。


 疑問に思いつつ電話を取ると、慌てた声が告げてくる。

 

「大変だ、大量に星が降ってるぞ」


 連絡に驚き、急いでベランダに出て、空を見上げた。



 うっわぁ……!!



 夜空いっぱいに、次々と星が降り注いでいる。



「今夜はまた、ずいぶんと大盤振る舞いな……」


 思わず、通話相手に確認する。


「こんなに大量に降ると、"願いの回収(・・・・・・)"、間に合わなくないか?」

「だろ? だもんで全員に号令がかかった。おまえ、B地区カバーな」

「ええっ、そんな急に?」


 座卓テーブルのカップ麺を振り返る。夕食にしようと、さっきお湯を注いだとこなのに。


「予定にないことされちゃ、困るよぉ――……」

「その文句は、神様に言ってくれ」


 雇い先のトップ相手に、バイトの身で言えるわけないだろ。


「一体、何があったわけ?」


 緊急出動の、理由くらいは知っておきたい。


「神様の(すえ)のお嬢様、地上に(とつ)いでたろ? ついにご出産だって。孫見たさに、空窓(・・)(ひら)いた」


 くっ。それでか! 赤ちゃん誕生は、めでたいけど!


「じゃあ、頼んだぞ! こっちは今から、七夕短冊班にも声かけるから!」


 "じゃないと間に合わない"。


 悲鳴気味な電話向こうの声を無視し、ぐったりと肩を落としながら、通話ボタンを切った。




 ――流れ星は、天の神様が地上をのぞいた時に、こぼれおちる光だと言われている。神様が扉を開いている時だから、願いの声が届き、叶うのだと。――




 でもね、考えてみて? どんだけ地上と天上世界が離れてると思ってんの?


 その距離を補い、願いを届けるための従事者が、いるわけですよ。


 遠い昔、神様が覗いた時、地上で嘆く人々をみて、思われたらしい。「彼らの願いを拾いたい」と。


 そんな神様のご意向に沿うため、天界は要員を雇うことにした。


 流れ星にかけられた"願い"は、()()()()()が回収して、神様に届ける。

 僕らが職務を果たせば。散らばる願いは、空まで届く。


 さらばラーメン! 戻ってきたら、食ってやるからな。

 たとえのびきって、変わり果てた姿になっていようとも。


 僕は涙を飲みながら、肉の身体を、脱ぎ捨てた。





☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆





 星が天空を横切り。人の目には見えない、微かな光が縦横無尽に空を舞う。

 いくつも。いくつも。いつ果てることなく。





☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆


☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆


☆.。.:*・゜☆




 っはぁぁ、疲れた。ホント疲れた。


 突然呼び出されて、空を()(めぐ)る事2時間。

 取りこぼすことなく、担当地区の"願い"は回収しきれた、と思う。人員出てたし、ピークは終わった。後は、今日の当番で(さば)ける。


 昨今、空を見上げる人間は減っている。

 平時はこんなことないから、会社に内緒で掛け持った秘密のバイトなのに。無茶ぶりされると、明日の仕事に(さわ)っちゃうよ。


 さっきまで(かか)わっていた、数々の願いを思い出す。

 他愛ないものから、複雑もの。微笑(ほほえ)ましいものから、深刻なものまで。

 今回は、たくさんあったなぁ。


 ふぅ。


 無数の願いに、()てられた気がする。


 僕は、無力だよな。

 神様みたいに、人の願いを叶えてあげる、力がない。


 僕の()()()()は、()()()()()()()()()()()()()()()()というけど。

 世代を重ねるうちに、その力は薄まって、僕の代ではすっかり失われてる。


 皆が(いだ)く気持ち、(あふ)れる想い、僕にはどうすることも出来ない。


 ただ、神様に届けるだけ、だ。結果を見届けることもなく。


 ふやけきって、冷めたラーメンが、激しくマズい。

 何となく(かな)しく感じるのは、ラーメンのせいだ、きっと。

 



 ――ピンポーン――




(え、玄関チャイム? こんな時間に?)


 時計を確かめるも、間違いなく深夜だ。


 続いて、鍵穴をガチャガチャと回す音が聞こえた。


(まさか?)


「こんばんは……。あ――っ、(カイ)くん、またそんなの食べてる――! 夜中にインスタントとか、良くないよ?」

「……咲希(サキ)ちゃん? えっ、今日は()れないんじゃなかった?」


 合鍵を渡してる彼女が、突然やってきたことに目を丸くしてると。


「残業で遅くなったけど。会いたくなって、来ちゃった。外から窓の明かりが見えたから、起きてるかな~~って。迷惑だった?」

「とんでもない。すごい嬉しい」


 僕の返事に、咲希ちゃんは(はじ)ける笑顔でテーブル()かいにちょこんと座る。

 か、可愛いっ。

 サプラーイズ、だ。メールも()しに。


 咀嚼(そしゃく)したラーメンを胃に送る僕の前で、手に持つ袋から次々と並べられるのは。


「深夜のコンビニ・スイーツは、太るんじゃない?」 


 ラーメンのこと、言えないよ。

 ツッコむと、軽いパンチが容赦なく顔に届く。猫パンチっぽい動きだけど、爪の出てない猫パンチなんて、痛くない。


「今日は頑張ったから、自分へのご褒美。一緒に食べよ? ね。さっき見た? すっごい数の、流れ星だったの」


 知ってる。それでひと働き、して来たからね。

 

「何か願い事した?」


 今ならまだ、神様行きの"願い便"に、咲希ちゃんの願いもぶっ込める。


「ふふっ。私の学生時代の先生がね? 流れ星に咄嗟(とっさ)に3回唱えられるほど、常に心に思ってる事なら、それは自分で叶えられるよ、って言ってた」


「すごいこと言う先生だね?」


 一理(いちり)ある。人の力では及ばない願いも、世の中には多々あるけど。咲希ちゃんの願いは?


「流れ星見た時、(カイ)くんと一緒に見たいなぁ――って思って、すぐに会いたくなったの。そして出来たら、毎日一緒にいれたらいいな、って心に浮かんだんだけど、この願いって叶うと思う?」


 ………………。それって。


「それは……。僕が叶えてあげられる願い事、かな」


 神様に頼まなくても、僕が。


 息を()めて(たず)ね返すと、咲希ちゃんは(ほが)らかに微笑(わら)った。


「むしろ、(カイ)くんじゃないと、叶えられないと思うけど?」


 いつの間にか、咲希ちゃんの息遣いが、体温が、すぐ目の前に迫っていて。小さなテーブルは邪魔者のごとく、横にずらされてた。ラーメンはこぼれず、スイーツも倒れずに。


 咲希ちゃん、器用だな……。


 横目でテーブルを見つつ、柔らかな咲希ちゃんの腕に、手を添えた。



 あ……、ラーメン味で、ごめん。



 ◇




 僕の遠いご先祖は、ランプの魔神だった。


 数多くの願い事を叶えに叶えて、ランプから解放された後、人間(ヒト)と結ばれた。

 子孫(しそん)である僕には、少し不思議な力がある。だから、天界から声がかかって、バイトまで請け負ってる。

 だけど、たくさんの人の願いを叶える力までは、持ってない。


 でも。

 大好きな人の"願い"を叶えることができるなら。

 充分だよね。


 そして、それが自分の"願い"と同じなら。

 最高だよね。



 さっきまでの心の(モヤ)が、優しく(ほど)ける。

 星降る夜は、願いが叶う、素敵な夜だ。

お読みいただき、ありがとうございました(^^)/

魔法のランプの舞台は中国なので、有りでしょう(笑)。フルタイム勤務のお勤めの傍ら、天界のバイトをしている介くんです。申告してないので、バイト代はお金じゃないんだと思います。


作品の発想元となった曲をはじめて聴いた時、夜空いっぱいの流星群が見えました。次に、軽快な曲調なので、携帯の着信音にしたいなって思い、そのふたつを組み込んで、今回のお話を作ってみました。投稿ジャンルはどこだろう?


仙道様の企画概要はコチラ ↓↓↓

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2082320/blogkey/2864230/

お星様の下に、企画概要&音源ページと作品一覧へリンクしているバナーを貼っています。

挿絵(By みてみん)


更に今年8月、『仙道企画その1』にも参加しています。

『時と砂が、夢見る先に』https://ncode.syosetu.com/n9659hc/

良かったらあわせてお楽しみください。


個人的に新作の宣伝『挨拶がわりに星押して、救われた彼の話。』https://ncode.syosetu.com/n5290hf/ もぜひ!

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仙道企画その2
― 新着の感想 ―
わあっ! 好き(´- `*) 不思議で、楽しくて、ロマンティック♡ 彼のご先祖様にも興奮しました。 そしてカップラーメン味の…… このイケメンくんなら、にんにくだろうが背脂だろうが問題なしです( ・…
[良い点] 仙道アリマサ様の企画その2から拝読させていただきました。 曲にとても合った優しい、ほっこりした作品でした。 読ませていただき、ありがとうございました。
[良い点] ☆.。.:*・゜☆ を使ってるのがいいですね! 私には思いつきません! お話もファンタジーなのに現実的で世知辛くて、なのにリア充が! くっ! ハッピーになりやがれ! [一言] 仙道さん企画…
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