プロローグ,「もっと食べたい」
完全没入型VRゲーム機器、“調整されし理想郷”略式呼称──“DU”(ドゥー)は20××年の昨今爆発的な勢いで人々の間で浸透していった…。
脳波を読み取るデルタシステムが使われ、感応器は色々なタイプがあり、初期の形はエヴァの起動時に綾波レイ達が米神に着けていたなんか丸っこい機械のようなものを左右の米神に装着する。
…今では色々な“アダプター”や“カバー”が売られており、カバーの方が安い。大体500円から1500円くらい。スマホのカバーのような物だから安いのだが、アダプターは機械そのものをカスタムするから高いのだ。これも相場は980円~4500円くらい。
値段の差はデザインとか、最低限のゲーム(3D)を最低限速度待ちなしで遊べるが最新の処理速度も桁違いなゲームは起動は出来てもゲーム途中でいちいち速度待ちしなくてはならない。
(因みに最新のは四次元──所謂国民的有名な猫型ロボットの四次元ポケットのような事が可能)
御門院遊兎──齢10歳の美幼女は3年前に“御門院”のグループ会長、御門院友禅65歳に養女として引き取られた。
…元は“捨て子”の朱火遊兎が「御門院遊兎」となってもう3年だ。
無味無臭なゴミみたいな人生が掬われた気がした。
「遊兎、お誕生日おめでとう。これは私からのささやかな贈り物だよ」
「…っ!?新作DUのゲームソフト…!!ありがとう、お父さん!!」
「おめでとう、遊兎。俺からは大きなウサギのぬいぐるみだよ」
「僕からはドルチェ&ガッバーナの香水とアンドロメダの新作ゴスロリワンピース。きっと似合う」
「私からはゴディバの新作チョコレートとネックレスです。海斗のワンピースにも合わせられるシンプルな物にしましたよ」
御門院長男(顧問弁護士兼社長秘書)から大きなウサギのぬいぐるみ、
御門院次男(副社長)からはブランド物の香水とワンピース、
御門院三男(社長)からはこれまた有名ブランド物の新作チョコレートとネックレス…真珠と貝殻モチーフが可愛いい。
長男──御門院全は35歳、
次男──御門院海斗は32歳、
三男──御門院氷雨は30歳。
因みに御門院の三姉妹は今不在である。一人は大会、一人は卒業旅行(何回行くねん)、一人は映画撮影。
長女──御門院揚羽は30歳(氷雨とは双子)、
次女──御門院翼は25歳、
三女──御門院鴉鳥は18歳。
ハリウッドで絶賛映画撮影中なのは長女の“揚羽”で、
ロサンゼルスでゲーム大会の遠征中なのは次女の“翼”で、卒業旅行中(今月三回目)なのは三女の“鴉鳥”。
この三姉妹は鳥のように自由だ、掴み所がない…と言うかちょっと暇が出来ると海外に逃亡してしまう。
揚羽は兎も角、翼は国内にいると見合いさせられるので(それを理由に)逃げている。18歳の鴉鳥はただ海外で親しい友人と遊びたいだけだ。海とか海とか。(正直そんなに変わらないだろうと突っ込んだけれど聞きやしない)
…“兄弟”としてのふれあいなんてそれこそ毎年10日もあれば十分だと言うほど直接の対面がない。
DU内なら、まあまあ逢う機会はある。…確実ではないが。
三男三女。上4人は結婚して国内に家族が…、家庭がある。
「三姉妹からのプレゼントは郵送…だっけ?」
「(こくん)…うん、そう。」
因みにプレゼントの内枠は揚羽が10代前半からも使える化粧品セットとイヤリング、翼がグアムのミニチュアドームと何故かコンドーム(…“ドーム”と“ドーム”を掛けたのか?)、鴉鳥は自作オルゴール(自作なのはオルゴールを納める小物入れ?容器?)曲はFF7のテーマソング。
三姉妹のはいつも郵送の関係で誕生日からちょっとズレて届く。
閑話休題。
2月2日…高学年に取っては受験結果がそろそろと出る日であったり、明日が節分だからと意気込む孫バカのジイジが予行演習を密かにしたりーー残り少ない三学期を楽しむ(?)青春の1ページだったり。
小学四年生の遊兎にとっては明日(今日?)深夜0時に正式配信がされるDUソフト、オンラインゲーム【エンドレスエコーカーニバル】─EEC─が楽しみでならないのだ。
何気に一番貰って嬉しかったのが父からのDUの新作ソフト、これが一番嬉しい。
早く明日にならないだろうか?(※夜9時以降の父の意を汲んだ使用人の監視があるので出来ないのだ)
なので朝昼晩の内風呂とトイレと食事、それから学校の宿題の時間以外だと遊べる時間には限りがある。ドヤァッ!!