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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第4章 第一次対大同盟戦

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ライン方面戦 03


 宇宙暦1799年5月9日―


 ヨハンセン艦隊はバ=ラン星系惑星ストラーブールで、国内最後の補給を行うとこの辺りの国境線代わりとなっている【ライン】を1日掛けて越える。


【ライン】は【スイッス連邦】から、極超巨星と超巨星が北の【ドナウリア領ネイデルラント】まで奇跡的に縦に数十個並び、そのそれぞれの恒星が生み出す強力な恒星風が繋がって、1つの大河のように見えることから、【通称:ライン河】と呼ばれ【ライン】の流れる地方をライン方面と呼称していた。


【ライン】の恒星風同士は繋がっておらず、隙間が存在し【ライン】を渡る時にはその隙間を抜けることになる。


 ストラーブールの国境にはその隙間の1つがあり、ヨハンセン艦隊はその隙間を通ってラインを通過すると、ゲルマニア側には惑星ケールルがあり、当然そこには国境防衛設備があった。


 だが、そこは既に先行しているロイク艦隊によって攻略されており、ヨハンセン艦隊はそのまま次の目標地点である惑星フロイデンスタットに進軍する。


 宇宙暦1799年5月18日―


 バーデ=ヴィルテンベルク星系ヴィルテンベルク王国首都星シュツットガルト宙域に、オソロシーヤ帝国のアレクセイ・プリャエフ大将率いる前衛艦隊10000隻が到着している。


 艦隊がここまでの長い遠征で消費した物資の補給を受けていると、プリャエフ大将にガリアルム艦隊が国境から惑星フロイデンスタットを経由して、そこから北上してシュツットガルトへの航路上にある軍事施設を攻略しながら、進軍しているという報告が入った。


「閣下、どういたしますか? 迎撃に向かいますか?」

「いや、ここで暫く待機する。何より本国からの長征で、兵士達は疲れ切っているからな」


 参謀のコリヤダ少将の質問に、プリャエフ大将はそう答えたが、彼の言う通り艦隊はインゲルマンラント星系首都星ザンクト・ペーテルスブルクから、4ヶ月以上の長距離航行を行っており、兵士達の疲労はピークに達している。


 そのため、兵士に休息を与えねばならず、それに下手に迎撃に出るよりもう暫く情報を集めて、敵艦隊の正確な位置を把握したほうが迎撃作戦も立てやすいのは、言うまでもないだろう。


 従って、プリャエフ大将の決断は現時点では間違いではない。


 宇宙暦1799年5月21日―


 バーデ=ヴィルテンベルク星系は、【ライン】の影響か小惑星帯があちこちにあり、狭い宙域が多く航行に時間を要し、更に道中の軍事施設を無力化していたため、ロイク艦隊はシュツットガルトの南に位置する惑星ヘネンベルクまで15日間を掛けて進軍をおこなう。


 ロイクは惑星ヘネンベルク宙域で先行させている偵察艦から、プリャエフ艦隊がこちらに向かって来ている情報を得る。


「やはり、迎撃に出てきましたな」


「我々が派手に暴れたバーデ大公国とヴィルテンベルク王国から、我が艦隊を迎撃するように請われたのであろう。よし、作戦を第二段階へ移行させる。まずは、兵士に交代で休憩を取らせろ」


 報告を受けたロイクは、ゲンズブールにそう命じると艦隊にプリャエフ艦隊が接近してくるまで待機休憩を命じた。


 ロイク艦隊は、連日の軍事施設攻略とそれにともなう行軍とで兵士達は疲弊しており、少しでもその疲労を取りたかったからである。


 宇宙暦1799年5月22日―


 プリャエフ艦隊は惑星ヘネンベルク宙域で駐留するロイク艦隊を補足するが、


「よし、敵が30万キロまで来たら後退するぞ」


(さあ、生死をかけた鬼ごっこの始まりだな。果たして生き残るのは、どちらになるか…)


 彼の命令の元、ロイク艦隊はプリャエフ艦隊が30万キロに到達した次点で、撤退を開始する。


「閣下、敵が撤退を開始しました。追撃しますか?」


「そうだな… 暫く追ってみるか。それに取り逃がしても、追撃で行軍した道中の軍事施設を奪い返せばいいしな」


 参謀に作戦行動を尋ねられたプリャエフ大将は、今後の艦隊の行動指針を伝えると撤退したロイク艦隊の追撃を開始させる。


 ロイク艦隊はヘネンベルクから、2日間南西に行軍すると惑星ナゴールトまで撤退すると進路を西に変え、惑星ローナドルフ方面に進軍を始めた。


 その目的は…


「我々を狭い航路に誘い込むためだな…」

「そう思われます。この先は、小惑星帯が数多く存在しており、狭い航路も多数存在します」


「敵がこの時間の掛かる狭い航路をわざわざ進軍してきたのも、撤退すると見せかけて我軍を狭い航路に誘引して、大軍の利を活かせないようするためであろう」


 追撃するプリャエフ大将は航路図を確認して、ロイク艦隊の意図を看破する。


 二人の推測のうち半分は当たっており、ロイク艦隊がこの航路を進軍してきたのは、撤退時に敵を狭い航路に誘引して数の不利を補うためであった。


「ですが、敵に奪われた軍事施設を取り戻すには、この航路を進まねばなりません」

「それもそうだな」


 プリャエフ艦隊は惑星ナゴールトの施設は破壊されているため、そのまま前進を続けて惑星ローナドルフを通過する。


 そして、暫く進むと次の惑星バルトドルフへ向かうルートに、小惑星帯の間を抜ける狭い航路が現れた。


「偵察艦を先行させろ」


 プリャエフ大将は、その狭い航路に偵察艦を先行させて、安全を確かめる。


 暫くして偵察艦から報告が入り、狭い航路内及び航路出口にも敵艦隊が居ない事が確認されるが、それは逆を言えばロイク艦隊に逃げられたことを意味していた。


(安全確認で時間を掛けている間に、敵に逃げられたか… だが、ここまで来て手ぶらで帰るわけにもいかん… この先のバルトドルフを解放してから帰還するか)


 艦隊10000隻を動かしている以上、乗組員達の食料消費だけでもそれなりであり、このまま帰還しては、ただ物資を浪費しただけと後に叱責されるかもしれない…


 そう考えたプリャエフ大将は、せめてこの先にあるバルトドルフと帰り道にあるローナドルフ、ナゴールトの3つの惑星を開放して、今回の出撃の功とすることにした。


 それが、ヨハンセンとロイクの罠の始まりとも知らずに…



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