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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第4章 第一次対大同盟戦

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死闘マレンの戦い 05


 イリス艦隊は崩壊した敵本隊の投降艦を処理しながら、船速の速い艦に命じて後方にいる敵の病院船を臨検させていた。


 その臨検によって、病院船の中に敵総司令官であるメーラー元帥が、入院している事を知る。


「フラン様、なんでも敵の総しれーかんが、病院船にいるんだって。どうしますか~?」


 そう緩い感じでフランに報告したアリスであったが、涙目のイリスにポクポク叩かれて「どうしますか!」と、キリッとした表情で敬礼して聞き直す。


「元帥の入院している病院船だけ、拿捕してあとは開放せよ」

「了解☆」


 涙目のイリスにポカポカ叩かれながら、アリスはそうは返事をして敬礼すると通信を切る。


「相変わらず困った奴だ…」

「あの娘には、後で軍隊での礼儀を再教育しておきます」


 通信が切れたモニターを見つめながら、フランとクレールは少し呆れた感じでそう会話すると、続けて次の会話に移行した。


「クレール、負傷者の治療と損傷艦の修理、艦の補給の指示を頼む。あと、ピエノンテ公国にいるワトー准将とロマリア王国国境で待機しているタルデュー准将に、麾下の艦隊と補給艦を連れてこの宙域に来るように伝えろ」


 今回の戦いを終えた現在のガリアルム艦隊には、前回までのような余裕はない。


 そのため、現在交戦しているロマリア艦隊に勝利したゲルマニア諸国連合艦隊、若しくは、存在しているかは不明であるが、索敵にかかっていないドナウリア艦隊に強襲されれば敗北は必至であった。


 そこで、フランは念の為にワトー、タルデューの両艦隊を呼び寄せる指示を出したのである。


「ルイが収容されている病院船から、何か報告はあったか?」

「いえ、まだ何も」


「そうか…。すまないが、私は少し自室で休んでくる…。後を頼む…」

「はっ」


 フランは、そう言うと指揮席を立ち自室に戻るとシャワーを浴びた後に、ベッド倒れ込そのまま横たわる。


 合理主義者のフランは、手術室の前で手術の成功を祈るより、緊急事態に直ぐに対応できる旗艦の自室で神に祈ることにした。


 フランは神という存在をあまり信じてはいない。


 もし、神が存在しているなら、自分を含めた専制君主など存在出来ないだろうし、戦争なども起きないはずである。


 フランは神に祈った後、ベッドの上で天上を見ながら、洋扇を少し開いては閉めるのを無意識で繰り返していた。


「ルイ… これは、私達の幸せな未来の為の試練だ… 私達がこんな試練に負けるはずがない… 私とルイの未来は、輝いているはずだ… だから、オマエは死ぬワケはない… そうだろう… ルイ…」


 そして、そのような前向きな願望に近い言葉を口にしながら、不安に押しつぶされそうになる心を何とか保っている。


 彼女が神に頼る時は、自分以外の親しい人が危機的状況にある時で、自分ではどうしようもできない時であり、少なくとも戦いの時は神頼みなどしない。


 最初から神頼みの司令官に率いられる軍隊、そして兵士など不幸すぎるからだ。

 そのためフランは、神に祈る前に打てる手は全て打っており、それはもちろん”今回も”である。


 その頃、病院船ではルイの緊急手術が行われており、彼を搬送した軍医は手術室内で驚愕していた。


 何故なら、ルイの手術を担当しているのは、フランが連れてきていた<神の手>と言われる天才的テクニックを持つ天才外科医<ジャック・ブラックモン>である。


 彼はその卓越した神業のようなテクニックで、ルイの手術を手際よく進め、僅か1時間でこの難手術を無事に終わらせてしまう。


 フランは王宮に仕える優秀な宮廷医師達以外にも、負傷した兵士をできるだけ助けるために、優秀な医者を高額で雇って病院船に待機させており、<ジャック・ブラックモン>もその一人である。


 もちろんその経費は高額になるが、<兵士の命を助けるため>となれば、誰も声を大きくして反対はできない。


「そうか! ルイの手術は上手くいったか!」

「はい。今は集中治療室ですが、2~3日もすれば一般床に移れるそうです」


「そうか… そうか… 」


 クレールからルイの手術成功の報告を受けたフランは、先程までの憔悴しきった表情とは打って変わって、憑き物が落ちたような安堵の笑顔を浮かべる。


「それと拿捕した病院船から通信が入り、メーラー元帥の意識が戻ったそうで、元帥がフラン様と会談を求めているそうです」


「いいだろう。私としても元帥とは、一刻も早く話がしたいと思っていたところだ。今すぐ向かうと伝えろ」


「はっ」


 クレールが敬礼して通信を切るとフランは新しい軍服に着替えて、自室から出るとそのままクレールと護衛役の親衛隊隊長マリー・ディタリー中佐と数人の親衛隊を引き連れて、連絡艇に乗りメーラー元帥の病院船へ向かう。


 フランがメーラーの病室に入ると医師に容態を見守られたメーラーが、ベッドの上から彼女に敬礼をする。


「フランソワーズ殿下、まだ体調が優れぬゆえ、ベッドの上からの非礼をお許しください」


「いや、こちらこそ体調が優れないところを申し訳ない。だが、元帥も承知していると思われるが、アナタにはすぐにでもやって頂きたいことがある」


「停戦命令ですな?」


「流石はメーラー元帥、話が早くて助かる。アナタには降伏及び、この北ロマリアでの一旦の停戦条約を受諾してもらいたい。そして、その事を通信で敗走する部下に知らして頂きたい。そうすれば、我軍もこれ以上、この北ロマリアで無益な戦いをしなくて済みます」


 フランの提案を聞いたメーラーは、顎を触りながら少し考えた後に、彼女の方を向くとその目を真っ直ぐに見つめながらこう尋ねた。


「もちろん、部下の命は保証していただけますかな?」


「当然です。それに、私は停戦が成った後に元帥には、これからこの病院船で停戦命令を受け入れた部下達を指揮して、ドナウリアまで撤退して貰おうと考えています」


 自分の質問に対するフランのその答えに驚いたメーラーは、当然このように聞き返す事になる。


「我らを捕虜にせずに、見逃すとおっしゃるのか?」


「どうせこの戦いが終われば、捕虜は祖国にお帰しするつもりなので、それが今であってもこちらとしてはさほど変わりは無いのです」


 メーラーはフランの目を見つめ、その真意を探ることにした。

 そして、長年の経験からその目が嘘を言っていないと感じ取る。


「今の我軍の状況では、最善の条件でしょうな…。わかりました、殿下の要求を受けいれます」


「元帥の賢明な判断に感謝します」


 メーラーはベッドの上から味方の通信チャンネルに向かって、麾下の艦隊に降伏と一旦の停戦条約の受け入れた事とフランの出した条件を部下達に伝えた。


 オトマイヤー艦隊は総司令官からの停戦命令を受け入れ、ガリアルムの追撃艦隊に停戦信号を出して艦隊を停止させる。








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