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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第4章 第一次対大同盟戦

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死闘マレンの戦い 04



 被弾した『ベニール』は、直様近くの艦がシールドを張って盾となり、護衛行動を取った為に、最初の被弾だけで済み被害は中破で食い止めることができた。


 味方艦の護衛を受けながら、『ベニール』は艦の応急修理が行われる中、敵射程距離外まで後退しており、その頃には艦橋の消火と負傷者の治療もあらかた済ませている。


 艦橋ではルイの応急処置を済ませた軍医が、ルイを移動の為のストレッチャーに乗せる指示を出した後に、衛生兵から傷の処置を受けながら上官の様子を見守っているシャルトー准将に報告をおこなう。


「応急処置は済みました。これから、後方で待機する病院船に急いで搬送して、緊急手術を行います」


「頼むぞ。なんとしても助けよ」


 シャルトーはそのように短く答えると、ルイを乗せたストレッチャーと軍医を見送る。


(絶対に命を助けよ! その方に万が一の事があれば、この国は偉大な指導者を失うことになるかもしれん!)


 本心では軍医にそう強く釘を刺したかったが、シャルトーはこの事が余計なプレッシャーになってはいけないと考え言葉にしなかった。


 次に彼はフランに報告をおこなうことにする、正直なところ彼女の反応が予想できるだけに気が重いが、状況を伝えてこれからの指示を受けねばならない。


 その報告を受けたフランは、再び軍服の胸元の当たりを握ると心臓の辺りを抑えながら、大きく目を見開き何かを繰り返し呟き続けている。


「ルイは大丈夫… ルイは大丈夫… ルイは大丈夫… 」


 その大きく見開いた目は瞳孔が開き、過呼吸気味になり、その呟きは先程の言い聞かせるのとは違って、まるで自らに暗示を掛けているようであった。


 その姿は先程よりも悲壮感が漂っており、その痛々しい姿を直視できるものはおらず、モニター越しのシャルトーを始め、艦橋にいるオペレーター達、クレールですら心配そうに彼女を見守る事しか出来ない。


 フランは5分ほどその状態を続けた後、大きく深呼吸をすると総司令官としての姿を取り戻してシャルトーに指示を出す。


「ロドリーグ艦隊の指揮は、副司令官のクラヴェル代将に既に任せている。貴官は彼の旗艦に移乗して、参謀としての職務を全うせよ」


「はっ」


 シャルトーは命令を受諾すると、敬礼して通信を閉じる。


「何だ、クレール。何か言いたそうだな?」


 通信が切れた後、フランはクレールが自分を意外そうな表情で、見ていることに気付きその意味を尋ねた。


 彼女は答えるかどうか少し悩んだ後に、彼女の方を向くと頭を少し下げてこう答える。


「……失礼ながら、ロドリーグ提督が重傷を負ったと聞いた閣下が、予想以上に取り乱さなかったのが意外だと思ったものですから… 申し訳ありませんでした」


「戦闘が続いている以上、今の私には泣くことも許されないからな…。 それに…」


 フランはクレールに、モニターを見つめたまま自分が冷静を保っている理由を、こう答えた後に、「それに、ルイが私を置いて死んだりはしない」と最後に自分に言い聞かせるようにそう呟いた。


 戦う艦隊(兵士達)を動かすには“攻撃するのか? 守るのか? どこを攻撃するのか?”という<明確な意志>が必要であり、その意思を持ち命令という形で示すのが司令官である。


 だが、その総司令官を失った敵右翼艦隊は、その<明確な意思>が無いため統一した動きが出来ず徐々に混乱をきたし始めた。


 そこに、前からルイとイリスの艦隊、後方からエドガー艦隊の攻撃を受けた為に、敵右翼艦隊の混乱に更に拍車が掛かる事になり収拾がつかなくなる。


 その状態で挟撃されれば、纏まった反撃も防御も出来ずに、敵右翼艦隊の艦は次々と旗艦の後を追うことになり、冷たい虚空に爆散することになった。


 そうなれば、士気も下がり戦場を勝手に離脱する艦も現れ始め、敵右翼艦隊は崩壊することになる。


 ルイ艦隊が、同じく司令官が不在になったのにもかかわらず、戦線を維持しているのは直ぐに指揮を副司令官が引き継いだというのもあるが、何よりもフランという偉大な天才的司令官が、総司令官として艦隊全体に<明確な意思>を示しているからであった。


 ザハールカが戦死して約10分、敵右翼艦隊は壊滅状態となり、その戦況をモニターで観察していたオトマイアーは、包囲されることを恐れて撤退を試みる。


(この敵の猛攻撃の中、艦を反転させれば甚大な被害がでてしまう…)


 しかし、戦火を交えているフランとリュス艦隊の猛攻撃を受けながら、敵前回頭すれば多くの被害が出てしまう。


「敵に包囲されないように、陣形を維持したままできるだけ速く後退せよ!」


 そのため被害を抑えるためには、このままの状態で後退を命令するしかなかった。

 だが、そこにエドガー艦隊がその船速を活かして、オトマイアー艦隊の背後に移動する。


「攻撃して、敵の後退を阻むぞ! 撃て!!」


 そして、後退してくる敵艦隊の背後に、砲撃を加えてその後退の阻害行動をはじめた。


「敵艦隊の右側面に攻撃を加えて、数の少ないエドガー艦隊から、できるだけ敵の注意を引くぞ!」


 そこに少し遅れて、敵艦隊の右側面に到着したルイ艦隊がクラヴェル代将の命令で攻撃を開始する。


 ルイ艦隊に右側面から圧迫を加えられたオトマイアーは、艦隊数の少ない後方への対処よりも右側面への対応に艦を割かざるを得なくなり、有効な対処ができない後方からの攻撃で後退速度が鈍くなってしまう。


(このままでは、前方、後方、右側面からの半包囲攻撃で、戦力が削られるだけだ… ならば!)


 オトマイアーは取り返しがつかなくなる前に、被害を覚悟して空いている左側に撤退することを決断する。


「全艦左に急速回頭! 敵の包囲が及んでいない左側面から、最大船速で撤退する!」


 オトマイアー艦隊は三方向から攻撃を受ける中、艦を左に急速回頭させると最大船速で、ガリアルム艦隊の包囲が完成していない左側面から撤退を始める。


 リュス艦隊とフラン艦隊が、右翼を伸ばして敵艦が逃げ出そうとしている空白地帯を埋めようとするが、その前にオトマイアー艦隊が次々とそこから包囲を抜けて、戦場を離脱していく。


 しかし、オトマイアー艦隊は包囲からは抜け出せたが、その代わりに5000隻から約2000隻まで撃ち減らされてしまう。


「閣下、追撃なさいますか?」


「追撃が可能な艦のみで行わせよ。ただし、無理に深追いする必要はない。追撃の指揮はリュスに任せる」


 そして、このリュスの追撃で、更に約1500隻まで減らされることになる。



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