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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第4章 第一次対大同盟戦

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マレンの戦い 05


 北に派遣されていたルイ艦隊が、クレールの戦場到着推定時間の2時間より1時間も早く戦場に到着できたのには、彼がフランの救援命令を連絡艇から受ける前から戻ってきていたからである。


 ルイは麾下の艦隊3000隻で、北の航路を通って撤退するかもしれない敵艦隊を補足して、味方の本隊が到着するまで足止めする命令を受けたが、正直3000隻で1万隻の敵艦隊を足止めするなど無謀な話だと彼は思った。


 現にイリスは3000隻で6000隻を相手にしていたが、防衛に徹しても50分で戦闘維持が難しくなって後退を進言している。


 行軍中にルイは、この任務は多くの被害が出る無謀な任務と考えて、撤退する事を決心する。

 普通なら軍隊である以上、司令部の命令を現場指揮官の一存で変更する事は許されない。


 だが、ガリアルム軍においてはフランから認められたヨハンセン、ロイク、リュス、ルイに於いては、状況に合わせて現場の判断で作戦行動を変更するいわゆる自由裁量権が与えられていた。


 もちろんその作戦変更によって、損害を出したり作戦全体に大きな支障を出したりした場合は重い罰を与えられる事になる。


 保身を考えるなら、フランの作戦に従って北に前進を続けて、敵の艦隊と戦って数で負けて撤退、若しくは前進しすぎて救援に間に合わない方が、軍人としてフランの命令を遵守した結果なので、罰を受けないか責任を取ることになっても罪は軽い。


 南に派遣された1000隻の艦隊が、未だに戦場に到着していないのは、そのような理由でフランの命令を遵守して、南に長距離の進軍を行っていたためである。


 ルイは引き返す時に、「被害が多くなるから」という消極的な考えで、撤退するわけにはいかなかったので、指揮官席で足を組み、肘置きに肘をついて頬杖をつき、低い声で自信ありげな有能な戦術家(※あくまでルイのイメージによる)を演出しながら、こう撤退命令を参謀のシャルトー准将に伝えた。


「准将。敵艦隊は撤退せずに、分散させた本隊を強襲すると私は推察しています。なので、今すぐ本隊に戻ろうと思います」


 シャルトーは、今まで天才であるフランが読みを誤った事がない以上、彼女の命令に従ったほうが良いと判断する。


「閣下の推察の可能性も充分ありえます。ですが、聡明なる総司令官閣下の命令通り動く方がよろしいかと思われます」


 そして、何よりこの将来有望な若い上司の保身のために、命令に従うことを薦めることにした。


「ですが、私には敵の先遣艦隊があまりにも脆すぎるのが、こちらに自分達が撤退するつもりだと誤断させる為ではないかと感じて……」


 ルイは撤退するための言い訳をそこまで話すと、自分のそれとなく聞こえるように言った撤退の根拠が、実は的を射る考えでは無いかと思い始め、更に思考を走らせる。


 撤退するつもりなら、むしろもっと我々を引きつけるのではないか?

 被害が出る前に撤退したのは、後の決戦の為の兵力温存と考える方が自然ではないか? 


 では、冷静に考えれば推察できた事に、何故今まで考えが及ばなかったのか?


 それは、フランがそう判断したからであり、皆が今まで全ての判断が正しかったチート級天才のフランが、そう推測したのだから今回もそれが正しいと盲信していたからだ。


 では、今回はどうだ? フランの考えは、判断は正しいのか?


 ここで、ルイはパドゥアの戦いの後でヨハンセンに、何故フランに自分の考えた作戦の進言をしたのかをそれとなく聞いた時の彼から返ってきた言葉を思い出す。


「”殿下が人間である以上、失敗を犯す可能性もあり、その結果多くの将兵が犠牲になるのを己の保身の為に見過ごすことは出来ない” そう考えたからだよ」


(ヨハンセンさんの言う通り、フラン様が人間である以上、判断を間違える事だってある。なら、僕はその時の為に動くべきではないのか?)


 だが、ルイは自分の能力よりフランの能力を信頼している為に、今までの自分の推考に自信を持てずに少し迷うが、次のように思考すると答えは自ずと見えてくる。


(どうせこのまま進軍しても、我が艦隊の艦隊数では大した戦果は上げられない。だが、敵が本隊を攻めていた時には、援軍として大きな価値がでてくる… なら、迷う必要はない!!)


 ルイはそう決意すると後は早かった。


「准将。今すぐ艦隊を反転させ本隊と合流します。全ての責任は私が取ります。至急、全艦にこの命令を通達してください」


「はっ」


 ルイがそう命令を通達すると、彼の表情、態度から決意を察したシャルトー准将は、すぐさま全艦に艦隊の反転、本隊への合流命令を通達する。


 だが、ルイがこの決断を下せた事には、少し後ろめたいところもあった。


 それは、例え自分の判断が誤っていて作戦に支障をきたしても、フランと自分の関係性から自分に重罰を与えないと考えていたからであり、彼の予想通りフランはルイが失敗しても上手いこと口実を考えて罰は与えないつもりでいる。


 ルイは惑星トルトナから西進した本隊に敵が急進して来た場合、惑星マレン宙域か惑星サンジュリアーノ宙域での会戦になると考え、艦隊を南西に向けて進軍させた。


 その読みは当たっており、ようやく主役らしい有能さを見せる。


 こうして、ルイ艦隊は本隊との合流の為に、南西に進軍中にその本隊からの救援を伝える連絡艇と接触して、マレン付近での会戦の情報を得るとフランなら自分と合流するために北東に後退してくると考え、惑星フィリポーナ宙域を目指して進軍を早め、結果救援に間に合うことができた。





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