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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第4章 第一次対大同盟戦

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マレンの戦い 04


 戦いが始まってから、30分―


 フランの携帯端末にメールが入る。


 <フラン様、敵の攻撃きびつい。後退したいよ。ぴえん アリス>


「おい、クレール、アリスからメールの着信があったのだが…。”きびつい”って何だ? ”ぴえん”って、何だ?」


 フランが大事な報告をメールで、しかも、理解できない文体で書かれていた為に少しイラッとして、クレールに内容を聞いてみた。


「若者言葉ではないでしょうか? 年齢が近い殿下が解らないのに、私が分かると思いますか? そもそもアリスには報告はメールでなくて、直接通信を送るように指示してください」


 だが、当然クレールもわからないので、当然の流れで本人に確かめ更に説教をする事になる。


「そうだな。アリスを呼び出せ」


 イリスの旗艦『ジェモー』に通信を繋がり、モニターに映るフランを見たイリスが席から立ち上がり敬礼すると、姉のその行動を見たアリスも慌てて敬礼をおこなう。


「アリス! 状況報告は、メールではなく通信で行なえ!」


 フランがモニターに映る二人に向けて、端末に表示されているアリスのメールを見せると、イリスは驚いて、「メールで報告したの!?」と言った表情でアリスを見た。


 実は撤退したいという意見具申したのはイリスであるが、コミュ障の彼女にはできなかったので、アリスに任せたのであるがこのザマである。


 そもそも自分がやるべき事を妹に任せた手前、イリスは妹に強くは言えず涙目で、彼女を「ちゃんと報告してよ~」と言った表情で、無言でポクポク叩くことしかできなかった。


 すると、根は良い子のアリスは、「ごめん、ごめんってば、お姉ちゃん~。フラン様もごめんなさい~」と素直に謝る。


「イリス、今は敵の攻撃が強すぎるため、後退すれば敵の猛追撃を受けて、艦隊全体が総崩れとなる可能性がある。我が艦隊から、1000隻増援を送るから、すまないがもう暫く持ちこたえよ」


 フランの命令を受けたイリスは敬礼して、命令受諾すると厳しい戦況に身を置くことになった。


 だが、“覚悟を決めた女は強い”


 いつもの頼りない印象を受ける彼女からは想像ができない胆力と粘り強さで、旗艦のシールドに幾度も敵の攻撃が当たりその衝撃で船体が揺れる中で、1000隻の増援を得たとは言え、それでも倍以上の敵艦隊の攻撃を受けながら何とか戦線の維持を続ける。


「前方の艦隊の指揮官は、防御戦において優秀だな。的確に艦を動かして、良く耐え忍んでおる。これでは、なかなか突き崩せんな。だが、守るだけでは、ジリ貧だがのう」


 メーラー元帥は戦術モニターを見て顎を触りながら、イリスの善戦を評価するが同時にこのまま戦いが進んでも守っているだけでは、敗北を先延ばししているだけであると同情にもにた感想を持つ。


 戦闘開始50分―


 遂にイリス艦隊は戦線を維持できずに、彼女は後退を考え始める。

 その時、フランの武運なのか他の者の武運かは解らないが、ドナウリアに緊急事態が起きた。


 敵の総司令官であるミヒェル・メーラー元帥が心臓発作を起こして倒れ、意識を失うという事態が起きたのだ。


 今年で70歳になる高齢のメーラーが、心臓発作を起こすのは不自然なことではないが、このタイミングでというのは、やはり天がフランを助けたようにも見える。


 参謀長のザハールカは、直様軍医を呼んで治療に当たらせるが、軍医は十分な検査と治療をするために後方で待機している病院船に移送すべきだと提案した。


 病院船は、その名の通り戦いで傷ついた兵士達を治療する為の船であり、国際条約で完全非武装にする事に決まりになっており、戦力外として絶対に攻撃しないようにとなっている。


 総司令官が倒れたことによって、指揮系統が一時的に麻痺する事になり、その為組織だった行動がとれずに艦隊の動きが鈍くなり、攻撃も散漫となり明らかに艦隊に隙が生じる事になった。


 フランを始めとするガリアルムの優秀な指揮官は、その好機を見逃さず、


「今だ! 一撃を入れた後、撤退を開始せよ!!」


 フランの号令の元に、リュス、イリス、エドガーは眼前の敵艦隊に強力な一撃を入れる。


 総司令官が倒れて混乱している所に、強力な一撃を受けたドナウリア艦隊は更に混乱が広がり、参謀長のザハールカは一度艦隊を後退させて、混乱の収束と態勢の立て直しを図ることにした。


 そして、その隙にガリアルム艦隊は一気に後退を開始する。

 しかも、総崩れになる事の多い撤退行動をその士気と練度、指揮官の能力の高さによって、秩序を保ったまま隙も見せずに見事におこなう。


 そのために、敵左翼のオトマイアー中将は後退するリュス艦隊を追撃しようとしたが、味方本隊が後退したこともあって、本隊と足並みを揃えるため追撃を諦める。


 だが、オトマイアーのこの判断もフランとガリアルム艦隊にとっては、天の助けであった。


 何故なら、ガリアルム艦隊も長時間の防戦により、どの艦隊も余力はなく彼の艦隊の追撃を受けていれば、反撃できずにそのまま敗走していたかもしれない。


 それに、ガリアルム艦隊は後退しながら交代で補給と休息を行っており、交代とはいえ補給と休息をしている所に、オトマイアーの追撃を受ければ大損害を被っていたであろう。


 フランがその様な危険を冒したのは、先程の敵艦隊の動きの鈍さとその後のお粗末な反応、そして敵左翼の追撃の躊躇から、敵の司令部に何か予期せぬ重大な事が起きて、その対応に追われているのであろうと推察し追撃は無いと判断したのであった。


 そして、何よりここで危険を冒しても補給と休息を行わなければ、艦隊の反撃体勢が整わずそうなれば、結果的に敗北する事になり撤退は免れないからである。


 こうして、マレンから惑星フィリポーナまで、後退してきたガリアルム艦隊はここで本格的に補給と休息、損傷艦の応急修理を始めた。


 指揮権を引き継いだ参謀長のザハールカ率いるドナウリア艦隊が、体勢を整え追撃を再開したがその航路には後退するガリアルム艦隊がばら撒いた機雷が敷設されたおり、対処にそれなりの時間を要することになる。


 ドナウリア艦隊が30万キロまで迫ってきた時には、敵本隊を相手にしていたイリス艦隊以外は、何とか反撃体勢を整えることができた。


 そして、そこにフランの待ち望んでいた北に派遣していたルイ艦隊が、援軍として戦場に到着して、これにより戦力差はほぼ互角となる。


 遂にマレンの戦いは、最終局面を迎えようとしていた。


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