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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第4章 第一次対大同盟戦

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第二次ロマリア戦役 01


 宇宙暦1799年4月21日―


 その夜、明日の出撃を控えたフランは両親と過ごしていた。


「フラン、今回の戦いはどうなのだ?」


「準備はできる限り行いましたが、正直に言えば前回の戦いよりも厳しいモノになると思います。ですが、負ける気はないのでご心配なく」


 フランはメアリーの時と同じ様に、勝負は時の運なのでどう転ぶかわからないが、両親を心配させないように強気な発言をする。


 だが、もしもの時の為に叔母のいるエゲレスティアに、二人を亡命できるよう準備はさせていた。


 次の日―


 フランは出陣する前に、全兵士と全国民に向かって、戦意高揚の演説をおこなう。


 モニターに映し出された陶器人形のような白い肌と整った顔、陽の光で綺麗に輝く銀髪、その色と対比した黒いゴスロリ風軍服を身に纏った少女は、演説台に立つと少しの間沈黙を続ける。


 そうやって、演説を聞く者達の注目を集めてから、凛とした表情と落ち着いた声でゆっくりと演説を始めた。


「勇敢なる兵士並びに臣民の諸君! ドナウリアはその野心から、卑怯にも一方的に『カンポ・フォルミドの和約』を破り、我が国が正当な理由で得た領土を領土奪還などと称して戦争を仕掛けてきた」


 彼女は最初ゆっくりと言葉を発していたが、その口調は演説が進むに連れて徐々に早くなり、声に熱も少しずつ強く乗り次の部分で最大となる。


「これを許すのは先の戦いで犠牲になった者達への冒涜であり、未来の子孫達に大きな禍根を残す事となるであろう。そうならない為にも、我らはこの苦しく辛い戦いに、全国民一致団結して挑み勝利せねばならない!」


 そして、フランが演説を最高潮で終わらせた時、それを聞いていた者達の気分も最高潮になり、気分の高まった者達はその場で「オーーーー!」大きな声をあげた。


 フランの演説により、世論は一気に『戦争に賛成』『戦争に協力』『打倒大同盟』に傾く。


 宇宙暦1799年4月22日―


 フランソワーズ・ガリアルム大元帥率いる北ロマリア迎撃艦隊、ユーリ・ヨハンセン中将率いる艦隊はそれぞれの第一目標地点に向かい首都星パリスから進発を開始する。


 フラン艦隊はサルデニア侵攻時と同じ様に、惑星リオムまでの航路上に事前に用意しておいた補給物資を使って、ワープを繰り返し約二週間でリオムに到着し、前回と同様艦隊のエネルギーの補給を行っていると、諜報部より敵軍の情報が入った。


「もたらされた情報によると、北ロマリアに侵攻してきているドナウリアの指揮官は、ミヒェル・メーラー元帥率いる12000隻だそうです」


 総旗艦ブランシュでクレールから報告を受けたフランは、敵将の名に聞き覚えがあり、彼女に確認をおこなう。


「メーラー元帥と言えば、確かオットマン帝国方面の指揮官の名だったな」


「はい。今年で70歳になる老将で、50年以上の軍歴を誇る経験豊富な老練な指揮官だと聞いております」


「50年以上か… 貴官と私、ルイにヨハンセン、アングレーム、それにシャーリィの軍歴を足しても、まだ足りないな… 厄介な相手になりそうだな」


(ありきたりな策を採ってもその豊富な経験によって、対応されて有効な手にはならないかもしれないな…。ならば予想もつかない策で、意表を突くしか無いな…)


 フランは指揮官席の肘掛けに肘を付いて頬杖をつき、モニターに映し出された周辺の星系図を見ながら、<considération(熟考)>と書かれた洋扇で頭を扇ぎ老将の意表を突く作戦を思考する。


(よし、これで行くか!)


「クレール、直ちに各提督を会議室に集めよ!」


 フランは作戦を思いつくと、クレールに命じて指揮下の提督達を会議室に集めさせた。


「我が艦隊は補給が済み次第、東に進路を取り同盟国のスイッス連邦領ジュネブ星系惑星ジュネブに向かう。そして、そこから更に東に進みシンプロン航路を抜けて、ロンバディア星系惑星ミナノに出る」


 スイッス連邦と北ロマリアの国境沿いには、広大な航行不能の宙域が存在しており、そこには通行できる航路も数箇所あるが細く危険な為、外敵からの侵攻を防ぎやすくそれが小国ながらドナウリアから独立できた一因である。


 シンプロン航路はその危険な航路の一つであり、フランも当初はそこを通過するつもりなどなかった。


 だが、フランの予測ではこのままトリーノに向かっても、マントバ要塞陥落には間に合わず、マントバ要塞を陥落させ士気が上がって、更に補給路も確保されている敵軍と戦わねばならなくなる。


 更に敵軍の指揮官は経験豊富な老将であり、警戒して恐らくいつものように戦術で翻弄する事は難しいと推測され、そうなれば自軍の被害が大きくなる可能性が高い。


 そこでフランは、危険なシンプロン航路を通過する次のような作戦を遂行することを決断する。


「私の読みでは我らがミナノに到着した時には、既にマントバ要塞は陥落しており、敵はミナノを越えてトリーノに向かっているであろう。故に我らは敵の背後を突くことができ、敵の後方遮断をすることができる」


 この作戦は、マントバ要塞とミナノ陥落を逆手に取る作戦であるが、裏を返せばその2つを犠牲にするという冷酷な作戦でもあった。


「後方を遮断された敵軍は、退路と補給路を断たれた事により、敵兵の中に動揺が走り、上がった士気も下がるであろう。そうなれば敵軍はトリーノを諦めて我らに戦いを挑むか、撤退するかの選択に迫られることになるであろう」


「素晴らしい作戦だとは思いますが、シンプロン航路は難航路で、通過するのに危険を伴います。わざわざその様な危険を冒さす必要は無いのではありませんか?」


 リュスはこの危険な作戦に立場上正論を持って、フランに反論しそれに対して彼女はこう自分の考えを話す。


「危険だからこそ、敵もその様な場所から来るとは考えず、それ故に敵の意表を突く事ができ、敵から主導権を奪うことができる。この一点においても、危険を冒しても実行する価値のある作戦であると思っている。それに我軍の練度ならシンプロン航路を、被害を最小限で通過する事はできると考えている」


 フランのこの説明を聞いたリュスを含めた提督達は、「なるほど」と頷いてこの作戦を支持する。




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