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宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~  作者: 土岡太郎
第2章 サルデニア侵攻戦

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ピエノンテ星系の戦い 03



 それに、例えサルデニア艦隊が殲滅されても、自分が目の前の敵本体を壊滅させフランを捕らえる若しくは戦死させれば自分の功績と評価をあげることができる。


 例え逃したとしても、総司令官が撤退すれば残存するガリアルム艦隊はこの星系から退却し、この国への侵攻作戦も中止されるであろう。

 そうなれば侵攻を阻止するという最低限の任務を果たすことができ、自分の面子を保つことが出来る。


 そのように考えたアーベントロート中将は、サルデニア艦隊に援軍を送らない決断を下す。


 躍起になって攻勢を指示する司令官に、参謀のオスカー・カウン准将は冷静に現状の戦況を見て一つの危惧を進言をおこなう。


「閣下、サルデニア艦隊の進軍が敵の左翼艦隊の反撃によって阻まれ、むしろ押し返され後退をはじめております。このままでは、前進する我が艦隊との間に間隙ができています」


 カウン准将の言う通り、ドナウリア艦隊はフラン艦隊を後退させ、サルデニア艦隊はヨハンセン艦隊に押されて後退している。


 並列していた両軍の左翼と右翼の艦隊は、前後に分かれることになり僅かな間隙が生じてしまう。この間隙にガリアルム艦隊が突入してくれば、そのまま艦隊の後方に回り込まれ挟み撃ちにされてしまう危険があるからだ。


 カウン准将の進言を受けたアーベントロート中将は選択に迫られる。

 前進を断念して後退するか、部隊を振り分けて間隙を埋めるかであり、後退を選べば今ある勢いを失ってしまい、フラン艦隊に立て直しの機会を与えることになってしまう。


 アーベントロート中将は、参謀に自艦隊の右翼の部隊の一部に間隙を埋めるように指示を出すと、そのカウン准将は反対意見を具申する。


「閣下、ここは攻勢を諦めて後退すべきです。でなければ――」


 カウン准将がそこまで言った時、ロイク艦隊がこの機を逃すわけがなく縦に三列の縦隊を組むと『稲妻』のような速さで、その間隙に突入してきた。


「反時計回りでサルデニア艦隊の後方に回り込め!」


 間隙に突入したロイク艦隊1000隻は、三列の縦隊のまま反時計回りにサルデニア艦隊の後背に回り込みながら、砲塔を左側に旋回させてサルデニア艦隊に向ける。


「補給艦と補給を受けている艦を狙え! 撃て!!」


 戦争とは無慈悲な殺戮であり、相手の隙や弱点や狙うのは常套手段であった。

 ロイクの攻撃命令を受けた彼の艦隊は、前進を続けながら補給中でシールドの張れない補給中の艦とその補給艦にビームによる非情な砲撃を開始していく。


 サルデニア艦隊がこうも簡単にロイク艦隊に後背を取られたのは、空間の開けた天頂天底右翼方向は警戒していたが、左翼はドナウリア艦隊がいた場所であるため警戒していなかった。


 更に前面のヨハンセン艦隊の攻撃の対処に苦心していたサルデニア艦隊は、意識の大半をそちらに持っていかれていた為に、味方がいたはずの左翼からの回り込みは完全に不意を突かれた形となってしまう。


 ロイクは参謀のゲンズブールに命じて、分艦隊司令官のエドガー・マクスウェル大佐を呼び出させる。


「エドガー、お前は200隻率いて、この先の補給艦と補給を受けている艦を攻撃しろ!」

「了解!」


 彼の艦隊は1000隻で、サルデニア艦隊は苦境に立たされてはいるが、未だに1700隻が健在であるために、彼の艦隊では後背を全てカバーすることはできない。


 そこでロイクは敵艦隊の背後の半分くらいまで進むとそこで艦隊を停止させ、全艦を進行方向から左に向けさせ、敵艦隊に対して艦を正面に向くようにすると、前面に展開するサルデニア艦隊の背面に砲撃を叩き込んでいく。


 艦が横向きのほうが、後部砲塔を使えて攻撃力が増すが、船体が横を向いている為に被弾面積が上がり、その分エネルギーシールドを広範囲に張らねばならず、エネルギーを浪費してしまう。


 艦を正面に向けるほうが、被弾面積が減りシールドもその分狭く張るだけで済むため、消費エネルギーの軽減になり、補給を遅らせることが出来る。


 エドガーは200隻を率いてそのまま前進し、ロイク艦隊本隊がカバーしきれない距離の補給艦や補給を受けている艦に、移動しながら砲撃を撃ち込んで撃沈させていく。


 ヨハンセンはロイク艦隊に呼応するように、数的有利となった艦隊の内500隻を分艦隊司令官ウィリアム・バスティーヌ代将に任せると、サルデニア艦隊の右翼に回り込ませ包囲攻撃を行わせる。


 ヨハンセン艦隊約3000隻と背面のロイク艦隊1000隻に包囲され、攻撃を受けたサルデニア艦隊は艦を次々と虚空に消失させて損害を増やしていく。


 その友軍の戦況をモニターで見たアーベントロート中将は、自艦隊右翼の部隊を救援に向かわせようとするが、対峙するフラン艦隊の猛反撃を受ける。


「さあ、諸君! もう後退する必要はない、総反撃を開始せよ!」


 フランの反撃を指示する号令と共に、間隙をつくるためにわざと後退していた彼女の指揮する艦隊は、その鬱憤を晴らすが如くドナウリア艦隊に苛烈な攻撃を叩き込み、数で勝っているはずのドナウリア艦隊が今度は逆に押され始めていく。


「何故、先程まで押していた我らが逆におされているのだ!?」


 アーベントロートの疑問に参謀カウン准将は、自分の推察を報告する。


「わが艦隊はこの戦場に到達して、すぐに開戦したために補給も兵達の休息も充分に行えませんでした。そこに攻勢を掛けるために、エネルギーや物資を多く消耗し…」


 参謀の推察を聞いたアーベントロートは、すぐに反論をおこなう。


「それは、敵も同じではないのか?!」

「恐らく敵艦隊は補給艦を、我々より更に多く連れて来ているのかと…」


 参謀は上官の疑問に至極当然な理由を述べたが、その答えは間違っていない。


 フラン艦隊の後方には、大型の補給艦が10隻ソーラパネルを展開してエネルギーを蓄えながら待機しており、エネルギーだけならレーザー送信技術で後方から一度に複数の艦に補給することが出来る仕組みとなっていた。


 この大型補給艦は、バリバール財閥とその他財閥に依頼して民間造船所に造らせたモノで、造船した各財閥には戦争協力の名目で百五十年掛けて無利息で支払う契約になっている。

 もちろん各財閥は難色を示したが、拒否すれば売国奴扱いされる世論に渋々応じるしかなかった。


 この大型補給艦はその船体の大きさから、船速が遅く戦場に到達したのは戦闘が始まって10分たった後である。


 そのため戦闘開始と同時に発せられる妨害電波により、レーダーに捉えられずにドナウリアにその存在を認識されなかった。


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