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反乱勃発 04



 会議室まで来た四人はルイとフラン、クレールとロイクに分かれて対面で座り話し合いを始めた。


 会話の口火を切ったのはロイクで、彼はフランに陳謝する。


「王女殿下、小官は過去の事故で目を負傷しており、サングラスを常時着用しておかねばなりません。どうか、御理解の上ご容赦をお願いします」


「そうか、そのような理由なら仕方ないな」


 フランはロイクに着用を続ける事を許可した。彼女は、絶対君主制の君主でしばしば見られる”神聖不可避“という考えはないので、合理的な理由があればそれを許す。


 その二人のやり取りを聞いていたクレールが、冷静な声と表情でこう言い始める。


「殿下、その様に申しておりますが、それは嘘です。この者はただ単に女性慣れしていない【童の者】なので、女性と話すと目が泳ぐのでそれを誤魔化すために着用しているのです。なので、優しい目で見てあげてください」


「だっ…だっ、誰が【童の者】だ! 失敬な! 失敬な!」


 クレールにすぐさまその様に反論したロイクの口調は、図星を突かれたのか明らかに動揺しており、サングラスで隠された目は明らかに泳いでいた。


「そうか【童の者】のなら仕方ないな…。私を謀った事で、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったが、【童の者】なら大目に見てやろう」


 フランは<love(慈愛)>と書かれた洋扇で扇ぎながら、ロイクにそう言葉をかける。

 その彼女の目は、とても優しい目をしていた。


「違うから! 【童の者】じゃないから! 本当に違うから!」


 ロイクは反論を続けるが、その対応の仕方と態度がどう見てもそうとしか思えない。


「私の勘違いだったな、すまない、すまない」


 違うと言い張るロイクに、クレールは哀れみの目で見ながら謝罪の言葉を述べたが、信じていないのは明白であった。


 フランはこれ以上どう対応していいのか困り、ロイクから目線を逸らして洋扇で扇いでいる。


 この後ロイクと真面目に会談をおこないフランは、彼を小規模ではあるが新設した艦隊の司令官に任命することになるのだが、それはまたの機会とした。


 そして、話は再び現在に戻り、ルイとロイクは宇宙戦艦の廊下で話を続けている。


「フラン様が、ロイクさんに艦隊を預けたのは、今回の事を予期していたからでしょうか?」

「だろうな…。私に与えた艦隊の駐留場所が、この星系の隣にあるアブウィルだからな。偶然では無いだろう。一年前からこの辺りを決戦の場と決めていたに違いない。それにこの先の宙域で宇宙機雷もかなり前から敷設しているしな」


(一年前ではなく恐らく数年前からだろう)


 二人は更に推考して声には出さなかったが、同じ結論に思い至る。


「しかし、君も大変だな。あんな【性悪ゴスロリ姫】に気に入られて。せっかくのイケメンなのに女遊びも出来ずに、<蛇に睨まれたカエルみたい>な生活を送っているのだろう? ざまぁだな」


 ロイクはルイの今の生活状況を的確に当ててみせ、最後に自分と違ってモテそうな彼が苦労していることに対して、大人気ない台詞を言った。


 ルイは、ロイクの発言の最後の言葉に引っかかりを覚えたが、その見事な洞察力に感嘆を覚える。


(見事な洞察力だな…。流石はフラン様にこの若さで小規模とはいえ艦隊を任されるだけはあるな…)


「聞こえているぞ【童の者】。誰が【性悪ゴスロリ姫】だ、そのサングラス叩き割ってやろうか?」


 そう言ながら、フランは<Destruction(撃滅)>と書かれた洋扇を広げ、扇ぎながら近づいてきた。


(洋扇にいつもとは違う物騒な文字が書かれている…。戦闘用だろうか…)


 ルイがフランの洋扇の文字を見て、その様な事を考えているとロイクが自分を【童の者】(真実)扱いした彼女に対して、この様に反論する。


「ど、ど、ど、ど、【童の者】ちゃうわ! この【性悪ゴスロリ姫】!」


 彼は反論になっていない反論を言った後、フランにギリギリの悪口を吐いて走り去ってしまった。


「戦闘前にあのような事を言って良かったのですか?」


「先に私を【性悪ゴスロリ姫】呼ばわりしたのはアイツだからな。それを大目に見てやったのだから、奴もわかっているだろう」


 ルイの質問にフランはそう答えたが、流石に大人気なかったと反省しているようだ。


 自分の乗艦に戻ってきたロイクは、艦橋で待機していた副官ジョフリー・ワトー少佐に相談する。ワトー少佐は筋骨隆々の体格をしており叩き上げの軍人で、その見た目から鬼軍曹のイメージを連想させるために軍曹と呼ばれていた。


 ロイクはこの年上で経験豊富なワトーを信頼しており、今回のフランとのやり取りを聞いた彼は上官にこう言い放つ。


「あんたお姫様に、何とんでもないことを言ってるんだ?」


 ワトーの歯に衣着せぬ発言に、ロイクはこのように言い返す。


「だって、あの【性悪ゴスロリ姫】が、【童の者】って煽ってくるからつい…。軍曹、今回の戦いで、功績を上げたら許してくれると思うか?」


 この問にワトーは自信はないが、上官を安心させるためにこう答えることにした。


「まあ、不敬罪でその場で拘束しなかったということは、そういうことでしょうな…」

「なら、安心だな。今回の戦いは負けないからな」


 ロイクはそう自信に満ちた顔で、二の線気味にワトーに答える。


(普段は優秀なのに、どうして偶に馬鹿なことをするんだこの人…)


 ワトーはそう思いながら、作戦の準備を進めていく。

 フランはロイクが立ち去った後に、ルイにここに来た本来の目的を話し始める。


「そうだ、本題を忘れるところであった。ルイ、戦時特例でオマエを少佐に昇進させ、私の副官にするから、戦闘時には艦橋で私の側に控えよ」


「はっ」


 彼は命令に返答すると、フランの後について艦橋に向かう。




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