上半身だけで歩く
ある画家の遺作
ベニヤ板に描かれた黒馬
描きあげられた部分は馬の胸まで
馬の目を覗くと
それは
「頭と胸だけでも、生きて歩いてゆくよ」
そんな風に答えた気がする
そして
「あなたは歩かないの?」
そう問いかけてくる黒馬の声が聞こえた気がした
目の内からのぞくのは
黒馬の意思か
それとも
画家の意志か
おれも、もうすこし歩こう
今日はそんな絵に出逢った
―あとがきのようなもの―
神田日勝さんの展示会特集をTVで見ました。
この騒ぎで、東京の美術館が閉まっていなければ、
生で見てみたい。
そんな絵たちでした。
あの方の作品を、画面を通して見ながら思ったことは、
目に入るものを貪欲に吸収しながらも、個というものは失わず、
閉ざされた世界の壁を破るために、愚直に努力している。
そういうことを思わせる絵だったのですね。
奥さんが生前の神田日勝さんの印象を語った、
「水に浮かんだ一滴の油」
という言葉は、
絵から感じた印象と共に、自分の心を揺らしました。
ちょっとですね、
自らの創作の心構えを、作品に問われた気がしたのですよ。
そんな作品に出逢うことも、たまにはありますね(笑)