出会って4秒で〇〇 たちばなまゆみ
連載中の作品があるのに新作を書く愚行をするのでお馴染の庭城優静です。
親友の新美浩太郎君に「――こんなテーマの作品どうかな?」と聞いたところ、
「ブラバンよりこっち書けよ豚野郎!」とアドバイスを貰ったので、ガ〇ルばりのサマーソルトキックを喰らわせてから「わかったよ」と言いました。
ブラバンと並行して書けていけたらなと思うます。(そもそもブラバンだって書いてないやん)
サブタイトル、毎回ふざけていきますのでご了承を……。
眼が覚めるとそこは異世界だった。
まさか、これが最近流行っている異世界転生というやつなのか……。
私、多智花麻由美は死んだであろう時と同じスーツ姿を触りながら考える。
「お酒の飲み過ぎ?……そんな感じじゃないわよね。夢だとしても――今の方がまだ幸せだわ」
そう、私は間違いなく死んだのだ。それも最悪の死に方だと、瞼を閉じながらそう思う。
※※※
私は重い足取りで夜の待ちを歩いていた。
帰宅中である。
会社の下らない飲み会の帰り、地元のごく普通の川を繋ぐ橋での出来事だった。
橋の歩道側、私と同じ酔っ払いのおっさんとすれ違……えなかった。
重たい男性の体重が私に寄りかかってきたのだ。
千鳥足の私と、おっさんの攻撃、場所が橋だとすれば……私は落ちた。
ボクシングをイメージして欲しい。
フラフラのボクサーにクリンチまがいなことをされ、ロープという名の欄干に背中を預けたのだ。――いや、預け過ぎたのだ。
私は逆上がりをしたかの如く、くるりと宙を舞い、川へ急降下していく。
悲鳴を上げる私。
顔色が一瞬にして変わるおっさん。
全身にもの凄い振動が伝わったと感じた時には、もう私は動けなかった。
身体にかかる冷たいものが川の水なのか、自分の血なのか判断がつかない。
だが、不思議なことに私が死を迎える顛末は、こうして説明が出来、しっかりと整理出来るのだ。不思議なものだな。
転落している最中に、その出来事をボクシングに置き換える力があるのだから。――アドレナリンだかの無駄使いだ。
虚しい人生だったな……と瞼が強制的に閉じようとした時に私の眼に写り込んだのは――おっさんの口から滝が私の方に向けて飛んでくる瞬間であった……。
最期に見る光景がおっさんのオーロラって……笑えない。
最悪だ。それが最期に抱いた感想だった。
***
そして、今に至る。
「少し整理しよう。私は死んだ、間違いない。天気は晴れ、気温は丁度いい。そしてここは……異世界の森であってるね?」
鬱蒼と生い茂る森。
見たことの無い動物……いや、化物たちが私を見て様子を窺っている。襲うなよ、お願いだから。
木が伐採されている綺麗な一本道を見つけた。
二本の轍はおそらく馬車だろう。
「車だったら拍子抜けだもんね」
私は独り言を漏らして轍の道へ進んでいく。
慣れない山道を進むと広大な街並みが見える。
「わあ!やっぱり異世界っていったら近代なのね」
当然の如くビルなどはなく、その代わりに大きな西洋のお城が見える。
「街が見えたとしても言語は?お金は?――詰んでるじゃん。最近流行っている転生ものってどうやっているのかしら?もっと見ておけば良かった」
第二の人生を歩めるかと思ったが、早くも終わりそうである。
とりあえず、街に向かってみよう。運の良い事に日本語でも通ずるかもしれない。
私は溜息交じりに足を運ぼうとすると「すいません」と後ろから声がかかる。聞き取れた!――日本語!?
「はい!?」
私は驚いて後ろを振り向く。
後ろには綺麗な金髪と白い肌、魔法使いの様な真っ黒いローブと軍隊を彷彿とさせる軍服を着こんだ青年が私を見ていた。
背中には武器の様な大きな杖の様なものを背負っていた。
「……貴方、『転生者』ですね?」
言語が通じるよりも、『転生者』という単語に私は心を打たれた。助かった!彼は転生ものでいうところの協力者だ。
「はい!!そうです!!」
助けを求めるように彼に近づいてそう告げると、悲しい顔をされた。
え?どうして?年上の女子は嫌いか?イケメン。
「そうですか。では――」
彼は背中に背負っている杖を取り出す。
杖の端から青く光る長い刃が出てくる。――鎌だ。
「さようならです」
「は?それってどういう――」
私の発言は最後まで出なかった。
二度目の出来事だ。
私の視界は大きく宙を舞う。
前回と違う所は、私の身体はその場に立ち尽くしていることだ。……私の首から下が直立しているのだ。
首元には、アニメで見たような魔法陣が浮き出ている。
ああ……だから血がでていないのか。
私の首がゆっくりと地面に落ちようとしている。
青年の鎌が私の首を吹き飛ばしたのか。
あっけない人生。あっけない異世界転生。――いいや、本来の異世界転生とやらはこれが正解なのではないだろうか。
転生して凄い力を手に入れたり、生前の記憶のお蔭で悠々と生活が出来る方が可笑しいのだ。
だとしたら私は恵まれている。
痛い目にも酷い目にも合っていない。むしろ、生前よりもマシである。
最期の光景がおっさんの汚いオーロラではなく、アニメに出てくる様な金髪の美少年に悲しい顔をされながら死ぬのだから……。
そろそろ地面に落ちる。二度目のアドレナリンも終わるだろう。
せめて私を殺す動機くらい知りたかったな……まあ、いいや。
私は自分の意志で瞼を閉じる。
青年と出会って4秒も経っていないだろう、あっけない。
こうして私の異世界転生は、一瞬で終わりを迎えるのだった。
次話を今月までに書いたら、僕は一つ成長したと言えますね。
あれ?目標低過ぎね。まあ、いいや。