第一章 episode 01
私はある町の研究所の中で生まれた。名前は「ルミ」。
そして私には兄弟がいた。生まれた順番は、私が最初でその後に「サーニー」「ケイ」「ルタ」「ハール」「ソルム」「マキ」。
私たちは、研究所に住む大人たちと一緒にご飯を食べたり、文字や計算の勉強を教えてもらったり、一緒に遊んだりしながら楽しく毎日を過ごしていた。
ただ、私たちの周りには不思議なことがいくつかあった。
まず、兄弟が生まれるたびに大人たちが減っていったこと。マキが生まれた時には大人は1人もいなくなってしまい、私たち兄弟だけが残された。
2つ目は、大人たちが私たちに「大きくなるまで勝手に他の部屋に入ってはいけない」と何度も言い聞かせたこと。私たちが行くことができたのは、自分たちの部屋とキッチンと食堂、それから研究所にある小さな庭だけだった。人の気配が私たち兄弟のものだけになってすぐ、大人たちを探して勝手に1つの部屋を覗いてしまったことがあるが、その時にマキを見つけて部屋に連れていき、皆で名前を考えて、大人たちから教えてもらった勉強を同じように教えたんだった。
そしてなにより、私たち兄弟の中には大人にはない体質を持っている者がいること。ルタは紙を指でなぞるだけで鉛筆を使った時と同じように字を書けたし、サーニーが料理を教えてもらっている時にはコンロの火が急に大きくなって危うく火事になりかけたことがあった。
私たちの中には次第に違和感が生まれ始めた。
「私たちは人と同じように成長してきたが、人間とは何かが違う。」
そんな考えに取りつかれた時、私たちは自分たちが何者なのかを知ろうとして動き始めた。
「大人がいない間にここを探検しよう」
最初にそんなことを言いだしたのはルタだった。マキを見つけて以来、なんだか悪い気がして知らない部屋に入るのを控えていた私たちだったが、誰も見ていないことを確認しながらならいいんじゃないかということになった。決行は明日から。大人の言いつけに逆らって自分たちだけで秘密の作戦を実行するような感覚。とてもワクワクして眠れなかった。その日の夜は皆で明日の役割や、誰が最初に部屋に突入するか、なんてことを小声で話し合った。
数時間後に何を見ることになるのかも、その時の私たちには知る由もなかった。