表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一章 episode 01


私はある町の研究所の中で生まれた。名前は「ルミ」。

そして私には兄弟がいた。生まれた順番は、私が最初でその後に「サーニー」「ケイ」「ルタ」「ハール」「ソルム」「マキ」。

私たちは、研究所に住む大人たちと一緒にご飯を食べたり、文字や計算の勉強を教えてもらったり、一緒に遊んだりしながら楽しく毎日を過ごしていた。


ただ、私たちの周りには不思議なことがいくつかあった。

まず、兄弟が生まれるたびに大人たちが減っていったこと。マキが生まれた時には大人は1人もいなくなってしまい、私たち兄弟だけが残された。

2つ目は、大人たちが私たちに「大きくなるまで勝手に他の部屋に入ってはいけない」と何度も言い聞かせたこと。私たちが行くことができたのは、自分たちの部屋とキッチンと食堂、それから研究所にある小さな庭だけだった。人の気配が私たち兄弟のものだけになってすぐ、大人たちを探して勝手に1つの部屋を覗いてしまったことがあるが、その時にマキを見つけて部屋に連れていき、皆で名前を考えて、大人たちから教えてもらった勉強を同じように教えたんだった。

そしてなにより、私たち兄弟の中には大人にはない体質を持っている者がいること。ルタは紙を指でなぞるだけで鉛筆を使った時と同じように字を書けたし、サーニーが料理を教えてもらっている時にはコンロの火が急に大きくなって危うく火事になりかけたことがあった。

私たちの中には次第に違和感が生まれ始めた。

「私たちは人と同じように成長してきたが、人間とは何かが違う。」

そんな考えに取りつかれた時、私たちは自分たちが何者なのかを知ろうとして動き始めた。



「大人がいない間にここを探検しよう」

最初にそんなことを言いだしたのはルタだった。マキを見つけて以来、なんだか悪い気がして知らない部屋に入るのを控えていた私たちだったが、誰も見ていないことを確認しながらならいいんじゃないかということになった。決行は明日から。大人の言いつけに逆らって自分たちだけで秘密の作戦を実行するような感覚。とてもワクワクして眠れなかった。その日の夜は皆で明日の役割や、誰が最初に部屋に突入するか、なんてことを小声で話し合った。




数時間後に何を見ることになるのかも、その時の私たちには知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ