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2.何よ、これっ!

今回はちょっと短め

「……っさむっ」


 肌寒さを感じ、目を開けた。

 ここどこだろ?


 自分の部屋でもなければ、マンション近くの通りでもない。だいたいにして、街の灯りってものが一切ないのだ。

 加えて音。車のクラクションやら喧騒が聞こえないってのはこれほどまでに不安になるものか。


 あまりの暗さに目が慣れず、慌ててそこら辺にスマホがないか、手でバシバシ叩きながら探してみる。


「イヤだ……真っ暗過ぎて見つかんないじゃん。しかも静か過ぎ。とりあえず狭い壁とかないのが救いかな。しっかし……」


 田舎に帰るとこんな風景に心安らぐのだろうが、今はここがどこかもわからない。ただただ不安を掻き立てる気持ちにしかならないのだ。

 明かりは月の光だけ、聞こえるのは虫の声だけ。


「マジか? 私って拉致られた? でもそこら辺に捨てるって酷くね? 拉致とか誘拐のイメージってば、パイプ椅子に括り付けられて、裸電球の部屋で尋問って感じじゃないの?」


 ほら、ドラマとかだとさ『女の身柄は預かった。返して欲しければ身代金を払いやがれっ』とか言っちゃって……て言っても、実家はしがないサラリーマン家庭だしなぁ。

 しかも、犯人ぽい人、どこにも見当たらないし……


 もうっ、そういうターゲットとかに当たらなくていいから。むしろ年末ジャンボとかに当たりたいわ。

 まあ、私を拉致っても何のメリットもないって判断したってことよね、正解だわ。


 とりあえず、どっか匿ってくれそうな家探して警察に電話だな。大丈夫、すぐに救出されるハズだ。


 ん? 何でこんなに目線が低いんだ?

 立ってる? ……てか、立てない……

 四つん這いにならなきゃダメみたいなんだけど。


 何気に手元に目線を向けてみた。


 は? 何これ? 手が手じゃないっ!

 黒っ! 何かの獣じゃん、これ。嫌だっ!

 誰よ、勝手にコスプレなんかしてくれちゃって。


 私ってば、コスプレマニアに誘拐されちゃったの?

 言っとくけどケモノコスだったら、もうちょっと若い子の方が似合うと思うんだけど……

 よりによって結婚に焦ってます系の女なんかを飾らせて、何が楽しいのやら。

 あ、いや、年増女マニアか? 今やいろんなマニアがいるって話聞くけどさ。


 と、いろいろ考えを巡らせて、ハッと気がついた。


「もしかしてドッキリ付き合コン? いやいや、そんな話、私の周りにはなかったもん。第一合コンなんか誘ってくれる人、会社にもいないって」


 口に出してみて、改めて虚しくなった。

 大きな会社なら、せめてもの人数合わせとかで声がかかりそうだったんだけど。

 ウチの会社の女性はみんなキャリア志向だし、結婚して幸せのお裾分けなんて人もいない。

 バブル世代だっけ? そのくらい前なら、近所や会社の世話焼きオバチャンが「この人どう?」とかいう話を持ってきたって聞くけど……


「あーあ、つくづく私って、男運ないんだぁ。呪われてんのかしら」


 ガックリと肩を落として、ズーンと落ち込むが、現状を思い出して立ち返る。


「落ち込んでるヒマなんてないわ。拘束もされてないんだったら、ウチ帰って、このコス脱がなきゃ」


 首をフルフルと振り、両手で自分の頬をパチンと叩く。


 ……ん? ほっぺの感覚が違う?

 ケモノ手のコスもあるが、何か顔がモシャッとしてフサフサしてる。コスプレだったら顔は化粧して終わりだよね。

 なんだろ、この違和感とちょっとした不安は……


 焦って周りをみても鏡なんて落ちてない。どっか水があるところは?


 歩き方もおぼつかないので、ハイハイしながら水場を探した。ようやく水たまりっぽいとこを見つけて、ゆっくりと覗きこむ。


 ああ、ヤだ。スッピンだし、似合ってなかったらキモい。

 一度目を閉じて、ゆっくりと薄眼で確認。そしてじっくりと確認したら……あれれ? 黒ネコがいるだけなんだけど。私はどこにいる?


 後ろを振り向いても誰もいない。


 右手を上げて今度は左手上げてそのままキープ。さらに今度は左手下ろすと見せかけて、実は下ろさないっ!

 その動作をしてるのは、やはりネコ。


 結論、私が黒ネコです。決定……


「ギャーーーーーーーーーーーーっ」


 人生で初めてってくらいの声で絶叫して、再び意識を手放した。

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