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RED f HOOD  作者: 恋する♡茶柱
1/1

出会い

ズダァァァァァァン…………






森の中に銃声が響き渡った。



「命中したぞ!!」

「何処に逃げた!?」

「早く来い!こっちだ!!」


村人たちと猟師の叫び声。

そう遠くない。

きっとすぐにここまで来るだろう。



不幸にも、銃弾は足を貫通していた。

このままでは死ぬことも出来ない。

逃げることもできない。

捕まって嬲り殺しにされるだろう。


「はぁあぁ…ぁぁ……」


彼は大きなため息ともうめき声とも取れる吐息を(こぼ)した。

絶望よりも、諦めの方が大きかった。


「これも自然の摂理…か…。」


自然の摂理。

それは彼が日頃から常々言っていた言葉だった。

弱いものは強いものに喰われる。

そして強いものをさらに強いものが喰う。

それが世界の真理だ。彼もそうしてきた。





彼は狼だった。


森に住み、森に入った人間を襲い、食べていた。

そのせいで、人喰い狼と呼ばれ怖がられていた。

そして何より、憎まれていた。


そして今、とうとう人間たちの報復に会い、瀕死の傷を抱えて倒れているのだ。


「良い一生ってわけじゃなかったが…まぁ……来世に期待だなぁ……」



希望はなかった。

全てを諦め、遠くを見据えた。

一片の希望もなかった。

奇跡でも起きない限りは。


だが、奇跡はいつ起こるかわからないから奇跡なのである。まさに奇跡だった。




ガサッ



「とうとう来たか…」


草をかき分け人間がやって来た。

狼はゆっくり音のした方を向いた。



確かに人間だった。

だが、そこにいたのは、屈強な村の男たちでもなく、はたまた猟銃をもったしかめっ面の猟師でもなかった。





少年だった。


緑の尖った帽子を深くかぶり、少し大きめのズボンをベルトで留め、ブカブカの茶色いブーツを履いた少年だった。



狼はいささか驚いたが、傷の痛みと出血のせいで、もうそんなことはどうでもよくなった。


どうせもうじき死ぬ。

どうだっていいか。


そう思った。

だが、少年の方は違った。


傷を負った狼に興味を示した少年は、じーっと狼のことを見つめた。

少しの間目をそらしていた狼も、たまらず口を開いた。


「坊主…何か用か?…あいにくお菓子なら…持ってねーぞ……」


少年は少しあたふたしたが、それでも、勇気を持って言葉を返した。


「け、ケガ…してる…」


「あぁ……今から死ぬとこだ……」


「あの…こ、これ…」


少年は持っていた籠の中からピンク色の花をつけた鮮やかな植物を取り出した。


「ケガの…その…薬草で…」


狼はまた驚いた。

今しがた出会ったばかりの少年に、ケガの薬草を渡されたのだ。

狼は理解できなかった。

渡された薬草と少年の顔を何度も見比べた。


「なぜだ…?なぜ……」


その時だった。




ガサガササッ



今度こそ間違いなく猟師たちがやってきた。


「隠れてっ!!」


少年に言われ、狼は草むらに倒れこんだ。

なぜかはわからないが、何となくそうしなければいけない気がした。

それに、背の高い草がちょうど狼の体を隠してくれた。



「おぉ坊主!でっけぇ狼がこっちに来てねぇか!?」


村の男たちが少年に聞く。


少年は森の奥を指差して答えた。


「向こうに…足を引きずりながら向こうに逃げて行きました…」


「そうか!!よし、逃がさんぞ!!

行くぞ!!急げ!!」


猟師たちは森の奥に走っていった。


少年は狼にささやいた。


「葉っぱを割いて、傷口につけて下さい…アロエみたいに……きっと良くなります…」


そう言い残して少年は村の方に走り去って行った。


狼は、少年を呼び止めることもできずに、少年の後ろ姿をただ呆然と見つめていた。







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