夕陽/闇/瓶/柔らかい手
夕陽
夕陽がわたしの影を伸ばした
わたしの暗闇を現実に引きずり出して
どこまで長く伸びる
あんなに遠くまで川を渡って
野ウサギの穴を潜って
もう見えなくなった
闇
やっと闇が来た
あいかわらずまだ蒸しているが
それでも世界は目を瞑り
呼吸の音だけが満ちている
急ぐことはない
間もなくやって来る
遠く列車の響きを伴って
瓶
並ぶ酒瓶の
ラベルも様々に
琥珀の魅惑は飲み干され
ただ空虚に透き通るのみ
柔らかい手
幼い声はわたしの中へ響く
可愛らしさを通り越して
切なさを伴って
日常の連鎖の重量を知らぬ
柔らかい手は
掴めるものだけを掴む
それが生きているということ
お読み頂いてありがとうございます。