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エピローグ

 それから数日後の学校の昼休み時間のことです――

 空が青く気持ちの良い天気であった為、私と鈴音と美夏ちゃんの三人は屋上で昼食を食べようという話になり、ジャンケン勝負で負けた鈴音が一人で購買部へパンを買いに行くことになりました。

あの恐怖体験の後も私と美夏ちゃんは鈴音の家に泊まりましたが、結局怖い思いをしたのはあの時の一回だけで、それ以降は何もありませんでした。

 私は都市伝説である『交差点のアヤコさん』についてずっと気になっている事があり、それを彼女に聞いてみました。

「ねぇ美夏ちゃん、『交差点のアヤコさん』について聞きたい事があるんだけど良いかな?」

「えっ、なんですか桜井先輩? 私で知っている事なら何でも話しますよ!」

 彼女の目は輝いていた。あの恐怖体験の後でも、この手の話は相変わらず大好きなようである。

「幽霊がアヤコさんと言われる理由……あれ以降、少し考えてみたんだけど、この話は単なる都市伝説じゃないような気がして……まぁ、私達が見たのもアヤコさんかどうか疑わしいけどね」

「ああ、そう言えば以前の話が途中のままでしたね……この都市伝説には元になるもう一つの話があるんですよ」

「もう一つの話!?」

「はい。これはアヤコさんという名の少女の話――彼女はとても内気な性格で仲の良い友達もおらず、いつも一人で遊んでいるような子供でした……」

 彼女の話によると、アヤコさんという子は内気で大人しい少女でした。

けれど、そんな彼女の性格を嫌う同級生がクラスメイト数名と伴にアヤコさんを苛めます。それが悲しくてアヤコさんは学校を飛び出してしまいました。

 そして運が悪い事に、ある交差点で彼女は交通事故に会って命を落としてしまうのです。

 しかし、話はこれで終わりではありません。その後も彼女の姿を見たという目撃情報が続くのです。

なぜか、場所は人通りの多い交差点――横断歩道の反対側、人ごみに見え隠れするアヤコさんの姿。それをクラスメイトの数人が目撃をしているのです。

 でも、アヤコさんは何かをするという訳ではなく、ただ悲しそうな顔でジッとこちらを見詰めて佇んでいるだけという話です。

 そして、この話は一気に広がって今に至ります。

「今の都市伝説のアヤコさんは、この話から派生したものだと言われていますね」

「フーン、そうなんだ……だから交差点のアヤコさんか――でも、そうすると私、彼女に対して酷いことを言っちゃったのかな?」

「えっ!? どうしてですか?」

 彼女は私を見詰めて不思議そうに聞いた。

「もしも……もしもよ、私達の前に現れたのがアヤコさんの霊だとしたら、彼女は友達が欲しくて現れただけなのかな……と思ったりしてね」

「なぜ、そう思えるんです?」

「何となくよ! 確証は無いけど、ただ何となくそう思えるの……」

「そうですね……桜井先輩がそう思えるのなら、たぶんそれで正解だと思います」

 私と美夏ちゃんはお互いを見詰めてフフフと笑いあった。

「わー、何ですか!? 二人で何をそんなに楽しそうに話しているんですか? ズルイ! 私も会話に混ぜてくださいよぉー!!」

 鈴音の声です――私達が振り向くと購買部で購入したパンの詰まった袋を両手で抱える彼女の姿がそこにありました。

「鈴音、お使いご苦労さま!」

「明日奈おねぇさま! 何の話をしていたんですか? ずいぶんと楽しそうでしたよ!」

 彼女は私達の会話が気になるらしく、しつこく食い下がってきた。

それを見た美夏ちゃんが意地悪っぽくニタァと笑い言葉を続ける――

「へぇー、鈴音がこの手の話に興味を示すなんて珍しいじゃん、では昼食を取りながら怪談の続きでもしますかな……」

「わぁぁぁい……えっ……怪談……? エェェェェ!! なんで怪談なのよーー!!」


 この学校で生徒が行方不明となった事件も、結局のところ只の家出であったということで無事解決しました。

 この人騒がせな騒動の実情が校内に知れ渡ると、オカルトブームが去ったという感じで誰も都市伝説を口にすることはなくなります。

 けれど、今回の出来事は何でもない日常の中に潜む怪異な現象は実際にあるのだと考えさせられる一件でもありました。

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