☆地獄の日々・初日の夜(前編)★
イチゴがリムジンに乗ると、後から少年が乗った。そして、ドアを運転手が閉める。
少年はかなりのお金持ちらしい。そして車が進み出してから話しが始まった。
『で、お前はどこの家を捜してるんだ?』
ようやく、目的地を聞いた。
『捜している家は「林」って言う名字の家なんだけど……知ってる?』
さわやかな笑顔が絶えない少年。
『どっかで聞いた事ある名前だなぁ~』
思い出そうと、必死に頭の中を回転させるイチゴ。
『聞いたことあるの?じゃ、大丈夫そうだね。』
少年。
『聞いたことはあるんだが…………思い出せないなぁ……。』
イチゴ。
『そこには俺と同い年の14歳の男の子がいるんだけど。』
少年。
『あ、なら、俺様が住んでやっている家にも14のバカがいるから、そのバカに聞けば分かるかもしんねぇ。だから、寄り道にはなるがよってくんねぇか。』
イチゴは自分が住んでいる家も『林』だと言うことに気づかずに大悟の家を案内しようとした。が……。
『大事なことを思い出した。今帰ると、あのクソ猫がいるんだった……。でも、鯛は食いタイ……ん、今、そんな寒いギャグを言ってる場合じゃない……。』
ノラの存在を思い出し、鯛のことも頭から離れず、家を案内するか悩み、またしても、思考回路がおかしくなりつつあるイチゴ。
『バカって、その人は君の飼い主なんだろう。そんなこと言ったらバチがあたるよ。』
少年が言ってる言葉すらイチゴの耳には入らず、かなり悩んでいるイチゴ。
『どうしたの?聞こえてる?』
少年がイチゴの頭をなでた。
『あ!!』
我に返るイチゴ。
『ん!もしかして林クン家が分かった?分かったなら教えて欲しいんだけど……』
少年は嬉しそうにイチゴに言う。
『いや、まだ分からないが、魚屋が近くにあるから先に魚屋へ行ってくれ。』
イチゴは考えた。
このまま、家に案内し大悟に聞くと、大悟自身で案内をし、せっかく買ってもらえるはずの鯛を買ってもらえない可能性がでてくると。
さらに、帰りたくない家に案内するのだから先に買わそうと。
そのあとで、大悟が知らなくても、責任を大悟になすりつけようと。
『イイけど、鯛、3匹だけでイイの?』
少年が笑顔で答える。
『!?!?!?!?』
イチゴは再び言葉を失った。
『どうしたの?』
少年。
『もっと買ってくれるのか?』
目をキラキラさせながらイチゴ。
『別にかまわないよ。じゃ、まず近くの魚屋さんを教えて。運転手さんに教えるから。』
少年。
『よし。任せろ。』
テンションがあがり、ルンルン気分になりそうなのを必死に堪えるイチゴ。
そして、車は進み出し、イチゴは見知らぬ少年と魚屋へ向かった。