☆焦る大悟★
鏡太の事を聞いた優子は固まった。
『ユウちゃん。どうかしたの?』
幸子が優子に尋ねる。
その言葉で、優子は我に還り、幸子に鏡太のことを伝えた。
鏡太の事を聞いた幸子は電話を変わり、美穂に詳しい状況を聞いた。
美穂から詳しい状況を聞くと、先ほどまで険しい表情だった幸子の顔は和らいだ。
そして、優子に鏡太のことを伝えると、優子の表情も和らいだ。
目を冷ましたら鏡太の家まで美穂が送る事を約束して、電話は切られた。
その頃、大悟はイチゴの言いかけた言葉が気になりながら下校していた。
しかし、いくら考えても分かるはずもなく、黙々と歩いていると、名前を呼ばれた。
『大悟。大悟。』
声の主の方を見ると、実が大きく右手を振り走って来た。
『どうしたの。実。』
『ハァ、ハァ……落ち着いて……ハァ…聞けよ。』
かなり息があがっている。
大悟に数回電話とメールをしたが、返事がないので、大悟が帰宅するのに使う道を自分の家から一番近い場所から大悟の家へと走って探していた。
『…うん。』
『鏡太が倒れた……。』
その言葉を聞いて、大悟の頭の中が真っ白になった。
大悟の目の焦点が合っていない事に気づいた実は、大悟の身体を揺すった。
『大丈夫か?大悟。しっかりしろ。』
必死に声をかけるが、反応がない。
『今、鏡太のヤツは松田が病院に連れて行ってるから、多分、大丈夫だ。』
美穂から鏡太の容態を聞いていない実は、詳しく説明できないので、自分の家での症状しか説明できないでいた。
しかし、大悟に実の言葉は入って来なかった。
そして、大悟は実を押し退け突然走り出した。走りながらケータイを取り出し、優子に電話をした。
『もしもし。母さん。鏡太が倒れたって………。』
『その事なら心配ないわよ。美穂ちゃんが病院に連れて行ってくれて今は病院のベッドで寝てるって。』
優子はいつものテンションで話した。
『え、でも凄い熱って……。』
『今は下剤で落ち着いているらしいわよ。とりあえず帰ってきないさい。』
大悟がかなり興奮しているのでこれ以上話しても通じないを思い優子は指示した。そして電話を切った。
『もしもし、もしもし。』
電話を切られているので当然返事はなかった。
『どうしたらいいんだろう?母さんの言う通り家に帰ろうか……。本当に鏡太は大丈夫なんだろうか……。』
大悟は混乱したまま走り続けていた。