☆鏡太の苦悩★
実の部屋に着くなり、騒ぎが発生した。
『この部屋、汚い。こんな所に鏡太を入れたくない。』
美穂の言葉に実もイラっとしたのかスイッチが入った。
『あのな。強引に上がり込んできてそれはないだろう。』
『美穂、余計な事を言うな。実もムキにならない。』
とにかく問題を起こしたくない鏡太は必死に二人をなだめる。
『鏡太は、私がこんな汚い部屋に入って平気なの?』
『嫌なら帰ってもいいんだぜ。』
『私が帰るなら鏡太も一緒に帰る。鏡太一人を置いて私は帰らないわよ。』
実の強気の発言に美穂も強気の発言をする。
『鏡太はオレと約束したんだ。このパズルを完成するまで手伝うって。』
『なら、部屋をキレイにして。』
『十分キレイだ。昨日も掃除したんだから。』
実と美穂のマシンガントークは続き、鏡太の手に負えなくなった。
そんな時、鏡太が倒れた。
『鏡太。』
『鏡太。』
鏡太が倒れた事に気づき二人は鏡太に寄り添った。
『どうした?』
と、鏡太の顔色を見ると、呼吸が小刻みに早く、乱れていた。そして実が鏡太の額に手を当てる。
『熱い。相当な熱が出てる。』
と、美穂に実が言うと、美穂はケータイでどこかに連絡をしていた。
すると、すぐに美穂の執事が駆けつけてきた。
そして、鏡太を抱きかかえるとそのまま車で病院へと直行した。
その光景に実はただボー然と見ていた。
しばらくして、我に還った実は大悟に電話をした。しかし、大悟は電話に出なかった。
大悟は絵を描くことに夢中で電話に気がつかなかった。
学校なので当然マナーモードにしているので余計に気がつかなかった。
そして鏡太は病院で診察をしてもらい、熱冷ましの薬を飲んで病院のベッドで寝ていた。
原因は日頃の疲労蓄積と昨日の寝不足からのものだった。
美穂はすぐに大悟の家に電話をした。美穂は鏡太の母親が帰ってきていることをまだ知らない。
『もしもし。』
優子が電話に出た。
『もしもし。林大悟クンのご自宅で間違いないでしょうか?』
『はい。でも、大悟はまだ帰ってないわよ。どちら様ですか?』
『申し遅れました。わたくし、林クンと同じクラスの松田美穂と申します。』
『あら、ひょっとして、キョーちゃんの彼女の美穂ちゃん?』
鏡太と美穂の関係は鏡太自身は隠していたが、幸子にはバレており、そこから優子にも知られていた。
『まぁ、林クンのお母様もご存知でしたか。』
嬉しそうに話す美穂。
『でも鏡太クンとウチの大悟にはナイショにしといてね。本人達は隠しているから。』
『はい。』
『で、今日はどうしたのかしら?大悟はまだ帰ってきてないわよ。鏡太クンも家に帰っていないと思うし………。』
優子のその言葉に美穂は疑問を感じた。
『え、どう言うことでしょうか?鏡太は林クンのお宅でお世話になっているじゃないでしょうか?』
『あ、まだ聞いてないの?昨日、鏡太クンのお母さんが帰って来たから自分の家に帰ったのよ。でも、そのお母さんは今、ウチにいるけどね。』
幸子が大悟の家にいることを伝える。
『そうなんですか……。実は鏡太が倒れて今、病院のベッドで寝てるんです。』
美穂が鏡太の事を伝えた。