☆キライなもの★
『ただいま~』
と、悟が帰って来た。
『お帰りなさい。』
優子が玄関まで迎えに行く。
優子とは大悟の母親である。
『ただいま。』
悟は両手に抱えてある荷物を床に置いた。
『あら、なぁに?そのカゴ。』
優子は悟が床に置いたバスケットを指差して聞いた。
『あ~これかい?これは僕の友人から頼まれて預かったものなんだ。』
悟が嬉しそうに答えた。
『あら。そーなの。中には何が入っているの?』
優子が聞く。
『それは……』
悟がバスケットのフタを開けようと、手を伸ばした。
『オイ。』
イチゴがもの凄い険しい表情で大悟を呼ぶ。
『何?そんなに恐い顔をして。』
イチゴの顔を見ながら聞く。
『ものすごくイヤな感じがする。』
イチゴは少し身震いをしながら答える。
『どんな感じ?』
ただならぬイチゴの雰囲気を察知し、イチゴに近よった。
『猫の臭いがする。それも子猫の。』
イチゴの全身の毛が逆立はじめた。
『え、子猫?』
予想外の返答に、今にも噴出して笑うのを我慢しながら大悟が言うと。
『笑うな。』
キレ気味に言う。
『笑ってなんかないよ……クスクス……だって……クスクス……意味が分からないことをいきなり真剣に言いだすんだもん。』
笑いそうになると、手で口を押さえて大悟が言う。
『意味が分からないことなんか言ってねぇ。言っておくが、俺様は子猫が大キライなんだ。』
ムキになってイチゴが言うと。
『ダイちゃーん。イチゴを連れて降りてきて。』
優子が2階へと続く階段を数段上がり、大悟を呼んだ。
『何?今行く。』
大悟が答える。
『俺は行かないゾ。』
イチゴは、1階に行きたくないとわがままを言いだした。
『まぁ、そー言わずにさぁ~。ちょっとだけでも行って確かめよ。』
イチゴをなだめるように、誘う。
『ヤだね。死んでも絶対に行かねぇ。』
かなり、ムキになっているイチゴ。
『なら。』
大悟はイチゴに近づいた。そして、イヤがるイチゴを無理やり抱えて1階へと向かった。