☆傷★
家の前に着くと、傷の痛みは大分和らいだ。
『ただいま。』
元気がないまま言う。
『お帰りなさい。地震、大丈夫だった?』
奥から優子の声がする。
『大丈夫だったよ。』
と、言ってから、大悟はそのまま二階の自分の部屋へ行った。
『遅かったな。』
イチゴが毛づくろいをしながら言う。
『顔が痛いんだよ。』
少しイラっとしながら言う。
『お前が悪い。魚、ちゃんと買ってこいよ。』
その言葉を言うと自分のベッドに行き夕寝を始めた。
『猫は気楽でいいよなぁ〜……。』
と、心の中で思いながら一階へと降りて行った。
リビングに着くと、優子が晩ご飯の支度をしていた。
そして、大悟の顔を見て、驚く。
『どうしたの?その顔。また、イチゴちゃんにひっかかれたの?』
大悟のひっかかれ傷=(イコール)イチゴの仕業。みたいになっている。
『そう。すぐにひっかくんだよ……。』
大悟がため息をつきながら答える。
『ダイちゃん、嫌われているのかしら?母さんも悟さんもイチゴちゃんにひっかかれたことないわよ。』
大悟の心配する優子。
『知らなかった……。』
心の中でつぶやく。イチゴが家に来て一年と少し経つのに自分しかひっかかれたことがないことに………。
『そうなんだ。それにしてもイチゴがこの家に来て一年以上経つけど、いつからかなぁ〜?生意気になりはじめたの………。』
『どうしたの?急に。』
大悟の質問に優子は何だか大悟とイチゴが兄弟のように思えた。
『え、えっと……。最初からあんな生意気だったかなぁ〜て、思って。』
自分にしかイチゴの声が理解できないのにとんでもない質問をしていることに気付く大悟。
『そうねぇ〜。去年の秋ぐらいじゃない。イチゴちゃんに付けられるダイちゃんの傷が多くなったの。』
なぜか嬉しそうに答える優子。
そして、その事に気付く大悟。
『母さん。おもしろがってない。』
ムっとした大悟の顔を見てニコっとする優子。
『そんなことないわよ。それより、キョーちゃんは?』
おもしろがっていたことが大悟にバレたので話題を変える優子。
『鏡太なら、帰りが遅くなるみたいだよ。』
話題を変えられたので、ソファに座りテレビの電源を入れた。
『去年の秋かぁ〜……。』
優子の言葉にあることを思い出した。
『ただいま。』
タイミングよく鏡太が帰ってきた。
大悟は玄関に鏡太を迎えに行った。
『早かったね。』
『当然だろう。晩ご飯を食わされることになるからね。』
ニコっと答える。
『でも、ちょうど良かった。聞きたいことができたんだ。』
普段とは違う感じで話すので鏡太は何かを悟った。
『ご飯の後で、大悟の部屋でね。』
鏡太はさっそうとリビングに向かった。
大悟もその後についていった。