☆幽界★
『ん、ん~……。』
目を覚ます鏡太。
『ここは……。』
辺りを見渡す。台車の上に乗せられたまま、あまり身動きができない。
『やっと起きたわね。』
その声を聞き、鏡太は震撼した。
『よお……。』
ビクビクしながら声の主を見た。
そこには、これぞ美少女と言わんばかりの少女の姿があった。
『元気そうね。』
少女。
『おかげさまで。ここに連れて来られるまでは元気だったよ。』
鏡太が言った瞬間、少女の顔色が変わる。
『どういう意味かしら。』
『なんでもないです。』
鏡太は即答した。
『そんなことより、早く縛っているロープ、解いてくれよ。』
鏡太が言うと、少女が頷き、少女の横にいた男がロープを解き始めた。
『申し訳ございません。乱暴なことをして。』
男が解きながら謝る。
『いや、気にしないで。もとわと言えば、俺も悪かったし。』
手足が自由になり、ケータイを探した。
『あれ、ケータイがない。』
ケータイがないことに気づき、鏡太の顔が青ざめていく。
『探し物はコレかしら。』
少女は鏡太のケータイを見せた。
『美穂、お前……………中、見た?』
鏡太は冷や汗が全身から吹き出ている錯覚を感じた。
美穂というのは、鏡太の彼女の松田美穂で、マツダ財閥のお嬢様である。
鏡太を眠らせたりしていた男は彼女のSPで、鏡太とも面識があった。
『まだ見てないわよ。見られて困るようなものでもあるのかしら。』
美穂の顔色が変わる。
『ん~山ほどあるかな……。』
焦る鏡太。
『殺す。』
キレイな美少女の姿がなくなった。
『待て待て。一応、社長だぞ。会社の秘密事項とかがあるんだよ。勘違いするなって。』
その言葉を聞き、普段の美穂の顔に戻り、鏡太に抱きついた。
『じゃ、返してもらうな。』
美穂からケータイを奪った。
そして、メールをうち始めた。
『帰るの遅くなるわ(-.-;)』
と、だけ書いた。
美穂に強引に連れてこられたことわ書かずに。
ピロピロピ~。
ケータイが鳴る。
『幽界されたんじゃないの』
大悟からの変換ミスメールを読んでいると。
『誰にメール送ってるの?』
美穂が鏡太を睨みながら言う。
『大悟だよ。無断でアイツん家から連れてこられたんだから心配してると思って。』
と、言いながら、変換ミスに気がつかないまま、まじめに返信をうつ。
『別にまだ死んでないけど、生死は彷徨ってる(^-^;)』
と。そして。
『アイツ、意外と勘が鋭いな。』
美穂のところにいることを知っていると勘違いし始める鏡太。
『なんて送ってるの?』
美穂が聞く。
『たいしたことじゃないよ。気にしなくても大丈夫。』
美穂といる=地獄と、とれるメールを書いているので、見せられない鏡太。
ピロピロピ~。
そしてすぐにケータイが鳴る。
『生死って、大丈夫なの?』
『大悟のヤツ、こんなにもオレのこと心配してくれてんだ。』
と、メールの内容に若干感動している鏡太。
そして、すぐさま返信を出した。
『大丈夫っちゃ大丈夫かな(o^-')b!』
と。
噛み合っているようで噛み合っていないメールのやりとりは終わった。