☆日常茶飯事★
14歳の少年とネコとのほのぼのとした話です。
『イチゴ~どこに行くんだ~。止まれぇ~!』
と、全力疾走で追いかける大悟。
大悟というのは、林大悟。この物語りの主人公で、気が優しく、天然な一面を持つ、14歳の少年。
『誰が止まるか!!バーカ。』
と、心の中で思いながら口に大きなタイをまるごと1匹銜えて逃げる猫。
この猫の名前はイチゴ。もの凄く生意気な大悟が飼っているペット。
『ここらであのバカをまくか。』
と、イチゴは路上に停めてある車の上に飛び乗り、そこから1m70cmぐらいはありそうな塀の上にあがり、敷地内に飛び降りた。
『ハァ…ハァ…ハァ……』
息を整えながら大悟はイチゴが飛び越えた塀を見ていた。
『またイチゴのせいでお小遣いが……』
今にも涙がこぼれ落ちそうな顔をし、走って来た道をフラつきながらとぼとぼと家に向かって帰って行った。
『ただいま……』
靴を脱ぎながら大悟が言う。
『………』
返事がない。
『いないのかな…』
と、思いつつリビングを覗いた。
誰もいなかった。
が、リビングの中央に置かれてあるテーブルの上に手紙があった。
内容は
せっかくの晴れた日曜日なので悟さんとデートに行ってきます!
大ちゃんの大好きな母さんより
と、書かれてあった。
悟と言うのは大悟の父親である。
『またお前と二人だけか………』
テーブルの上で左前足で顔を洗いながらイチゴが言った。
『なんか不満?』
ムッとした感じで大悟が聞くと
『いや、別に……』
そう言うとイチゴはテーブルの上から降りた。
『それより、さっきの魚、2000円もしたんだけど。』
大悟が言うと。
『可愛い可愛いペットのためなら安い物だろぉ。』
2階へと続く階段を昇りながらイチゴが言う。
『どこが可愛いの?だいたい日本語が話せる猫なんか聞いたことないよ。』
と、イチゴの後を追うようなかたちで2階に向かいながら大悟が言う。
『べつに日本語なんか話してないわ。お前が勝手に俺の話す言葉を理解しているだけだろうが。』
そう言うとイチゴは大悟の部屋のベッドで昼寝を始めた。
『たしかに……イチゴの話す言葉はオレにしか分からない……でも他の猫が鳴いてもその言葉は分からない……』
そんな事を考えながらイチゴの横で大悟も昼寝を始めた。
こんなぐわいに、一人と一匹だけの会話が日常的に繰り広げられています。