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時空を越えて  作者: 上田
3/3



翌日。



朝である。





「おっはよー!」



カーテンの隙間から射し込む朝日と、いやでも起きてしまう河上さんの声で私は目覚めた。

起きてすぐに机へ向かうが、参考書やノートが散らかっていないことに気づく。そういえば、昨日は早く寝たのであった。

思えば今日はなんだか気持ちよく起きれた気がする。



「おはよ、河上さん」



さて、と私は朝ご飯の支度を始めた。

ここ最近は河上さんの希望もあって、米と味噌汁。私もお米が好きだから、それはそれでいい。

手際よく作り、テーブルへ並べた。






そういえば、私は今日は学校だった。

今までは冬休みだったから、気にはしなかったが、学校に行っている間、河上さんはどうすればいいんだろう。

高校に連れていくわけにもいかないのだ。



「どうした? 小春」



私の様子を伺ってか、河上さんが話しかけてきた。



「河上さん、私、今日から学校なの」



「学校……あぁ、寺子屋だね。それがどうしたの?」



「私が居ない間、河上さん……大丈夫?」




心配する私とは逆に、河上さんは任せろ、というような表情だった。



「安心して! じっと待ってるよ」



「よかった。じゃあ、学校行ってくるね」





河上さんの言葉を信じ、私は安心して学校へ向かった。















しかし、やはりというか、問題は起こった。




それは下校してきたときのこと。

ぞろぞろと下校する生徒に私も混じり、家について、部屋に入った時だ。







「……何? これ」









目の前には信じたくない光景があった。



壁に、でかでかと書かれた[誠]という字。





「どう? これいいでしょ、小春」




どう、と言われても……。

河上さんはすごい輝いた笑顔でこっちを見ているけど、私はどんな反応をすればいいのだろう。

これ、絶対に大家さんに怒られると思う。ここは、やはり





「河上さん、何……これ?」




訊くのが一番だとおもう。




「僕の好きな言葉! 土方さんが言ってた言葉だよ」



「土方さん……?」



「新選組の土方歳三。僕、土方さんの部隊に所属しててさ、土方さん、いつも[誠]って言っててね、それで……」





ぺらぺら語り出す河上さんを無視して、私は壁に書かれた[誠]を見た。




たしかに、新選組の土方歳三は[誠]の旗を掲げてたというけれど……。

あらためて、河上さんは幕末の人なんだ、と思えた。

けれど――――――――――――





「それをどうしてここに書くのよ!!」


「小春にも好きになってもらいたかったから」





即答された。



河上さんはまったく壁に書いたことを気にしてないではないか。とてもニコニコしながら、私を見ていた。

もうここまでてなると、だんだん呆れてきてしまう。





「どうして、壁……ッ!?」



「一番見やすいから」



「…………ッ!」



「………………もしかして、ダメだった?」






ようやく、河上さんは自分のしたことの重大さがわかったみたい。

でも、私はもう問いただす気分ではなかった。もう諦めよう。



「……気にしてないよ。けど、もうやめてね」



「ごめん、小春」




しゅん、と河上さんは縮こまる。

そんな姿をされると、小動物にしか見えない……。いやでも許さなきゃいけないではないか。






「大丈夫だよ」





もう、私が折れるしかない。













どうでしたでしょうか


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