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過去からやってきた河上さんが私の部屋に居候して3日が経つ。
この3日間、私は勉強ができていない。
原因は言うまでもない。河上さんだ。
「小春、ここに敵軍は来ないんだよね?」
「えぇ」
「小春、刀の手入れしていい?」
「えぇ」
河上さんが毎晩話しかけてくるから、勉強がはかどらない。
私はいつも勉強をしてから寝ているから、生活のリズムが狂ってしまいそうだ。
そして、その日の夜も。
「小春」
「今日は、何?」
少し口調を強めて言った。だんだん、苛ついてきているのだ。
河上さんはそんな私の様子に若干驚きながらも言った。
「毎晩、何してるの?」
「……え?」
てっきり、いつもみたいに自分のことを聞いてくるのだと思っていたから、私のことを聞かれ、驚いた。
「毎晩、遅くまでやってるからさ。気になって」
「べ、勉強だけど……何?」
「勉強……?」
少しきょとんとした表情を河上さんは浮かべた。
もしかしたら…………
「河上さんだと学問って言うのかな」
「あぁ、学問か!えらいね、小春は」
勉強をするのは当たり前だと思うんだが……。
でも、と河上さんは話を続けた。
「やりすぎはよくない。もう遅いし、程々にしなよ?」
いつも僕が寝た後もやってるでしょ、と。
これは、聞かないと後がうるさくなりそうな気がした。
しかたない、と私は参考書とノートを片づけて、寝ることにした。
久しぶりに早く寝る。もうずいぶんと遅くに寝ていたから、少し違和感があった。
そして、もう一つの違和感。
……河上さんだ。
今までは寝た後だったから、対して気にはしなかったが、今思えば隣で男の人が寝ているのだ。
(無駄に意識してしまう……)
気を紛らわすために何度も寝返りをうった。
河上さんは布団ではなくて、ソファーで眠っている。
何故か、ソファーに興味をひかれ、今ではお気に入りの場所になっているのだ。
平常心、と私は自分に言い聞かせた。
きっと河上さんはもう寝てるだろう――――――――――――
「小春」
「ひゃっ!?」
と思っていたから驚いた。
「眠れないの?」
「ううん、平気」
目をそらしながら言った。顔も半分布団にうずめている。
河上さんの顔が直視できなかった。
「そう? なら早く寝なきゃ、体に悪いよ」
「わかった。ありがと、う」
何もなかった。
別に変なことを期待していた訳ではない。逆に、何もなかったことに安心した。
河上さんは、そういう人ではないと。
そう思ったら、急に体の力が緩み、そのまま私はぐっすりと眠っていた。
どうでしたか?
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