1
新連載です
一度でいいから、こんなお話を書いてみたかった!!
読んでいただければうれしいです^^
朝。
私は普段より早く目が覚めた。
早く目は覚めたけれど、いつもやることにかわりはないから私は机に手を伸ばす。
昨日も遅くまで勉強をしていた。
そのため、机の上にはノートや参考書が散らかっている。
それを片づけることが普通になっているのだ。
私が参考書を手にした時。
カタカタ――――――――――――――
いったいどこから?
突然聞こえてきた音に私はあたりを見回す。
しかし、音がどこからでているのかはわからないわけで、私はまた片づける作業にはいった。
カタカタ――――――――――――――
まただ。音は鳴りやんでいない。
私はもう一度、あたりを見回して気づく。
私の真後ろにあるクローゼットがカタカタと小刻みに音をたてていたのだ。
「え……?」
気になって、私はクローゼットに手をのばした。
勝手に音をたてているクローゼットに多少怯えながらも、額に流れる冷や汗をぬぐう。
そしてクローゼットを開けようとしたら――――――――――――
「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
突然[何か]が、クローゼットからでてきたのだ。
そのまま私は床へ倒されることになってしまった。
「い……ッ!」
頭をうち、視界が一瞬眩んだ。
徐々に視界がもとに戻ってきた私は[何か]を理解することができた。
「痛た……。ん、ここは何処だ?」
顔をしかめて腰をさすっている目の前の[何か]は、男だった。
ボサボサの頭をポニーテールを思わせるかのようにくくりあげていて、服は軍服。
みるからに、おかしな男だ。
「…………ッ!」
けれど一番私が驚いたのは、刀。
この男、刀を差していたのだ。
「そこの子、ここはいったい何処かわかる?」
私に気づいた男は話しかけてきた。
ここは私の部屋だ!と言いたかったが、それどころではない。
私は男の刀にしか目がいかなくて、口をパクパクするばかりだった。
私の視線の先に気づいたのか、男は刀を床に置き、
「危害をくわえるつもりはない。ただ、ここが何処なのか教えてもらいたいな」
と言った。
「…………私の部屋よ」
「………………へぁッ!?」
間抜けな声をあげ、男はみるみるうちに顔を紅潮させる。
そしておどおどしながら、
「無断で女子の部屋に入ってしまったなんて…………切腹だぁぁぁッ!!」
服を脱ぎ始めた。
「ひゃぁっ!!」
いきなり脱がれるものだから、私はあわてて両手で顔を覆う。
……けれど、やっぱり気になってしまうものだ。
ちゃっかり、指の隙間から様子を見ていた私である。
男は懐から小刀をとりだしてそれを腹に――――――――切腹!?
「いけませぇぇぇぇぇんッ!!」
腹寸前のところで止めることができた。
こんなところで切腹されても困ってしまう。
私は男の腕をつかみ、なんとか小刀を鞘に収めさせることができた。
「なにするんだよ」
何故止めたのか、と言わんばかりの目で睨まれたが、そんなことはしらない。
「それはこっちの台詞よ!いきなりそんなことされても困るわ」
「そ、それは……ごめん。けど、無断で入っちゃったし、責任を……」
「私、気にしてませんよ」
しれっと言った私に男は驚いたような顔をした。
「え?」
実際、部屋に入られたことはあまり気にしていない。入られたというか、いきなり出てきたのだから。
気になるのは他にある。
「あなたは、いったい誰なの?」
そう、この男のことだ。
いきなりクローゼットから出てきて、軍服というおかしな出で立ち。さらには刀を差していて、とても普通とは思えない。
「僕?僕は、河上千尋。旧幕府軍として、戦っているんだ。君は……蝦夷の人かい?」
蝦夷?旧幕府軍?戦い?
なにを、言っているんだろう。この言葉から浮かんでくるのは――――――――
――――――――――戊辰戦争。
幕末におこった、新政府軍と旧幕府軍の戦いだ。しかし、そんな時代、とっくに過ぎているはず。
目の前の男――――河上千尋は何を言っているんだろう。
「私は、西藤小春。……東京都民よ」
「東京?聞いたことないな……異国の人かい?」
彼は、本気で言っているみたい。
「日本だけど……」
「え、日本!?僕もだけど、そんな藩は聞いたことないな」
もしかしたら、本当に河上は幕末の人なのかもしれない。
たしかに、髪型や服装、そして刀をみれば納得できるかもしれない。
だけど、もしそうなら、河上はどうやってここに来たのだろうか。
「あの、河上さん?どうやってここに来たんですか」
クローゼットから出てきたのだ。方法が気になって仕方がない。
「それがさ……」
そう言って河上は話し出した。
河上によると、こうらしい。
時は明治元年。
新政府軍に追いつめられた旧幕府は蝦夷へと向かっていた。彼も蝦夷へ向かう船に乗っていたらしい。
無事、蝦夷地に着き、隊士と共に部屋に向かっていたことろ、カタカタと不思議な音が聞こえてきたようだ。
音はどうやら戸棚からしていて、気になった河上が戸棚を開けた瞬間――――――――――――
「ここに居たというわけだ」
「…………………………えッ!?」
今の話が本当ならば、河上はタイムスリップしたのではないか。
未来からならぬ、過去からのタイムスリップ……。ドラ○もんも驚くだろう。
「ねぇ、僕はどんな状況なんだい?」
真剣に河上は聞いてきた。
そうか、河上はタイムスリップという言葉を知らないんだ。
私は、河上に状況を説明してあげた。
「つまり、僕は未来に来てしまったということかい?」
「そうそう」
「戻る方法はわからない、ということかい?」
「そうそう」
あれからクローゼットに何度も入ったのだが、戻ることができないのだ。
「しばらくここに居ていい、ということかい?」
「そうそう………………って違うわ!」
危うく話に乗せられてしまうところだった。
「そうか…………」
そんな、しゅんとされても困ってしまう。
なんだか、河上が小動物に見えてきてしまった。
こんなに体はがっちりしているのに、何故だろう。……………………。
「…………迷惑、かけないなら、いいよ」
「本当!?優しいね、小春は」
「迷惑、かけないならね」
「うん。お世話になりますっ」
なんだか、流れで言ってしまったが、言った以上は仕方がない。
でもよく考えると年頃の男女が一つ屋根の下って…………。これも今更考えたって仕方がないこと。
これから、大変になりそうな予感がする。
私はどっとため息をついた。
どうでしょうか?
ご感想、おまちしています^^