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血液バブルの崩壊

翌朝、

応接室で朝食の血を飲んでいると、

喜羅羅が慌てて飛び込んできた。


「たいへん。血液オークションがニュースになってるよ。バブルだって」

と喜羅羅は言った。


俺はいつもはあまりチェックしない血液オークションサイトをチェックする。

いつも以上に売りが殺到し、それを買い集めている奴がいる。


始祖様も驚いたのか。

俺の意識に入り込んできた。


ドボルザークも応接室に飛び込んできた。

「バブルだ。バブルが起きて……。マズい状態だ」

とドボルザークは真っ青な顔をしていた。


「どういうことですか?」

と俺は尋ねた。


「始祖様の発言で、子孫たちが贈答用やパーティ用に保管していた血液を一斉に売り出したようです」

とドボルザークの声は震えていた。


「買っている連中がいるのなら、子孫たちに問題はないのでは?」

と俺の声を介し始祖様は言った。


「子孫たちに問題はないですが、この高級血液市場は主に子孫たちのためのものでした。そこに投機筋が入り込み、市場を荒らしていたのです。ただ今回、投機筋が買い集めても、最終的に実需がないため、ここで買い漁っている投機筋は破産します。

しかも、誰が言ったのか、このオークション市場への新規参入者が増えているのです」

とドボルザークは怯えていた。


俺は思った。

チューリップバブルの時と似ていると……。


「こうなったら、打つ手はありませんね」

と俺は言った。


ドボルザークは肩を落としている。


「ねぇ。打つ手がないってどういうこと?教えてあげたらいいんじゃないの」

と喜羅羅は言った。


「今回のように過熱気味の市場に冷や水をかけようと当局が規制した例はいくらでもあるけど、ソフトランディングできたケースはほとんどないんだ。

ヘタをすれば一言でバブルは崩壊し沈む。

投機筋の損失が膨らまないように祈るしかないだろう」

と俺は言った。


「本当に人間って奴はどこまでも強欲なんだ。

血なんて買うもんじゃないだろう」

と天使は笑った。


ドボルザークは唇を噛んでいる。


「もしかして、今まで血液が異常に高くなっていたのも、この投機筋が原因なの?」

とマモルちゃんは言った。


「ドボルザーク、どうなんだ。血液市場の高値の原因は、今買っている連中か?」

と俺の声を介し始祖様は言った。


「そうですね。少なくとも投機筋の流入で価格は五倍程度には上がりました」

とドボルザークは言った。


しかし、ドボルザークの話を俺以外も理解できている。

もしかすると、始祖様がいると、言葉が通じなくても一族は会話ができるのか?


「始祖様。もしかして始祖様がいると、言葉が通じなくても一族は会話できるのですか?」

と俺は尋ねた。


「そのようだな」

と始祖様は言った。


「五倍にも値上がりしてたのか。一族の者からすれば、仇のような存在だな。

面白いじゃないか。

黙って観察しておこう」

と先ほど起きてきた羅刹は少し眠そうに笑った。


「う~ん。その気持ちもわかるけど、なんか批判受けそうじゃない?」

と喜羅羅は口をゆがめた。


「責任問題に発展するかもな」

と天使は渋い顔をしている。


ドボルザークは部下を呼ぶ。


「誰か、オークション市場を管理する者を外部から探してこい。地位はあるが、金に困っており、金さえ払えば責任を引き受けるような奴だ」

とドボルザークが言った。


どうやら、ドボルザークはスケープゴートを探し始めたようだ。


「直系はさすがですね。もう逃げ道を用意していらっしゃる」

と羅刹は苦笑いをした。


「当たり前だ。今回のことに、私はまったく責任はない。投機筋の連中が金儲けに使って、挙句の果てに破産に向かって突き進んでいるだけだ」

とドボルザークが口調を荒げた。


……

その頃、

とある片田舎にある豪邸では、

パーティが行われていた。

そのパーティの主の名はX-giTaNO。


仮想通貨を皮切りに、

バブルのニオイのする財産を投じ、

勝ち続けてきた男の住まいだ。

周りは見渡す限り山。

見える範囲の土地は全て彼のモノだった。

道路は一本だけ。

それも彼が自費で作った私道だった。


パーティにはモデル、芸能人の卵、怪しい筋の人々。

そして、炎上商法を繰り広げるインフルエンサーの顔があった。


「しかし今回の血液市場は美味しいところを見つけましたね」

X-giTaNOに媚びるように話しかける男がいた。


「まぁ崩壊するだろうがな。実需はあるだろうから、どこまで稼げるか。見ものだな」

X-giTaNOは笑った。


テーブルの上には白い粉が飛び散り、

あちこちに高級ワインの瓶が転がっていた。

爆音でハウスミュージックが流れ、

プールに飛び込む男や女。


皆、顔は笑っているが、目は魂が抜かれたように虚ろだった。


……

高次の中で私はひたすら考えていた。

私はバブルの知識はなかったが、

高次の知識を借り、自分なりに考えることはできた。


バブルとは、

価値を理解できない者が、

金を稼ぐためだけに、

モノを売り買いした結果……。

起こる現象だ。


そしてバブルが起こること自体が問題なのではなく、

そのバブルが崩壊した時に、

その商品の値が崩れ、

損をする連中が出ることが問題なのだ。


しかし、

どんな瞬間にも損をする連中はいる。

それは当たり前のことなのに、

なぜこうもバブルとバブル崩壊に注視するのだろうか。

それに自分の興味のないものを買うこと自体、

理解できない。


儲かると聞いたから買った。


なぜそんな理由でモノを買う。


私には理解できなかったし、

理解できなくて良かったと安心した。


私はなにか行動に移すべきなのだろうか。

ドボルザークに手を打たせるべきか。

それとも、

子孫たちに何かメッセージを伝えるべきか。

私は悩んだ。


そしてふと思い出した。

黒と赤で、

私はどれだけ困った。


そうだ。

何も伝えない。

それが一番だ。


そう思った。



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