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世界を変える野良

始祖様の話が一段落付き、

各家の代表者は部屋に戻っていった。

血の味については、

メッセージで共有され、

全世界の一族が知ることとなった。


始祖様は疲れたのだろうか、

ぐっすりと眠られているようだ。


応接室には、

俺と兄貴と喜羅羅と天使、そしてマモルちゃんが残った。


「しかし満月プリンさんが、始祖様の降臨先だとは思ってもいませんでした」

とマモルちゃんは言った。


「俺もマモルちゃんが、同族だとは思ってもいなかった」

と俺は答えた。


「なぁこの子は何者なの?」

と羅刹は言った。


「この子はな。地下アイドルグループ『いちご味のクリームソーダ』のマモルちゃんだ」

と俺は言った。


「うん?なんか違和感があるんだけど、マモルちゃんってオスだよね」

と喜羅羅はじっと見ている。


「はい。男の子です」

とマモルちゃんはニコっと笑った。


「うわマジで。まったくわからなかった」

と羅刹は言った。


「俺もわからなかった」

と天使は口を開いている。


「よく言われます」

とマモルちゃんは恥ずかしそうにしている。


「もうその辺にしとけよ」

と俺は言った。


「わかった。別に趣味嗜好なんか、人それぞれだしな」

と羅刹は言った。


喜羅羅も天使もうなづいている。


「マモルちゃん、一つ聞いていい?普通に食事を食べてる投稿してるよね。

あれ食べてるの?」

と俺は尋ねた。


「えっ食事できるの?」

と羅刹は言った。


「うんとね。食べ方によっては食べられるよ。たぶん私たちの種族って胃腸が弱いのかなって」

とマモルちゃんは答えた。


「どんな食べ方?」

と俺は尋ねた。


「俺も聞きたい」

と羅刹は言った。


喜羅羅と天使も手を上げる。


「うんとね。食べ物をドロドロになるまで噛むことかな。噛み方が足りないと下痢か便秘になっちゃう。だいたい一口100回くらいは噛むかな」

とマモルちゃんは答えた。


「血とかは、今回の献上品レベルのを飲んでるの?」

と俺は尋ねた。


「まさか。あの血でも年に1回飲めるかどうかだよ」

とマモルちゃんは答えた。


「でも、それじゃあ吸血衝動にかられない?眷属とかいるの?」

と俺は尋ねた。


「アイドルグループならいるだろ。俺も熱狂的なファンは皆眷属だし」

と羅刹は言った。


「へへっ。眷属はゼロなんだ。吸血衝動はねぇ。牛乳を鉄剤と一緒に摂ることで抑えているの」

とマモルちゃんは答えた。


「牛乳と鉄剤で?」

と俺は言った。


「牛乳と鉄剤か……なんか、血液と牛乳って成分が似てるって聞いたことある。鉄剤混ぜるなら、有りかもしれない」

と喜羅羅はうなづいている。


「あとで牛乳買ってみようかな」

と天使は言った。


「私、クーラーボックスに入れて牛乳持ってきてるよ。飲んでみる?」

とマモルちゃんは言った。


「マモルちゃんがくれるものなら、飲んでみる」

と俺は言った。


マモルちゃんは、200mlのパック牛乳と鉄剤を俺に手渡した。


戸惑う俺を見て、

「イキナリは怖いよね。見てて」

とマモルちゃんはそう言い、

鉄剤を口に含み、牛乳をチューっと飲んだ。


「ぷふぁー。美味しい」

とマモルちゃんは笑った。


一同の視線が俺に集中する。

血液以外のものを口にするのは、

水以外では初めてだ。

緊張する。

でも俺も男だ。

飲もう。

でもダメだ。

手が震えてストローが刺せない。


マモルちゃんは俺の手を抑え、

ストローを取って、刺した。


「はい。あーん」

とマモルちゃんは笑って、鉄剤を口に入れた。


「あーん」

と俺は口を開いて鉄剤を口にした。

口の細胞が話しかけてくる。

「こいつは血の塊だ」と。


「はい。あーん」

とマモルちゃんは笑って、ストローをくわえさせる。


マモルちゃんが手渡した、

細い透明の棒状のものが、俺の口の中に入り、本能のままに、

白い牛乳という液体は、口の中に流れ込む。


口の細胞が話しかけてくる。

「こいつは色は違うが血液だ」と。


人生で初めて、

水と血液以外のものを口にした。

その複雑な心境と、

少しの喜びにも似た感情が溢れ、

気が付けば、

涙がこぼれていた。


マモルちゃんは、

俺を抱きしめ、

「怖かったね、よく頑張りました」

と、頭をなでてくれた。


俺は失踪した母親のことを思い出した。

俺の頭をよくこうやって撫でてくれたっけ。


そして俺の涙腺は崩壊した。


俺が牛乳を飲み干したことを確認し、

兄貴も、喜羅羅も、天使も鉄剤と牛乳の味を確認した。

皆うなづいている。


「どうでした?初めての牛乳の味は」

とマモルちゃんは尋ねた。


「ちょっとしょっぱい味がした。血液っぽい感じ」

と俺は言った。


「えっしょっぱかったか?」

と羅刹は首をかしげた。


「高次は泣いてたからでしょ。甘く感じたよ」

と喜羅羅は言った。


「味的には若い女の血っぽかったな」

と天使は答えた。


「私はだいたい1日1リットルくらいは飲んでるよ」

とマモルちゃんは言った。


俺は気を取り直して、もう一度飲む。

「うーん薄味の血って感じかな。血と比べたら、多少物足りない気もするけど、1リットルも飲めば吸血衝動は抑えられるかもね」

と俺はうなづいた。


「うん。悪くはない。眷属が貧血気味の時は、良いかもしれんな」

と羅刹もうなづいている。


「そうね。私も眷属に会うのが面倒な時は、牛乳にしようかな」

と喜羅羅は言った。


「そうだな。最近眷属達が貧血気味だから、この牛乳と味が大して変わらないかもしれないな。たまには牛乳でもいいか。この鉄剤は、特別な奴?」

と天使は尋ねた。


「何種類か試したけど、たいして効果に違いがなかったから、安いのでいいんじゃないかな?私も最安値のサプリだし」

とマモルちゃんは言った。


「でもさ。これ鉄を粉末にして着色料と混ぜて、血の味に調整したら、十分いけるかもな」

と俺は言った。


「あぁそれ一族に売れそう。血液高いし、普通に売れるだろ」

と羅刹はうなづいている。


「そうね。ドボルザークさんところの血って安いやつでも割とするからね」

と喜羅羅は言った。


「まぁマモルちゃんみたいに、眷属持たない一族の連中もいるみたいだし」

と天使もうなづいている。


「うちの親戚とか家族は、だいたい牛乳と鉄剤ですよ。血液は正月にちょっと高めの牛肉を買う感覚でしか買いませんから」

とマモルちゃんは笑った。


俺は驚いた。

マモルちゃんは、野良だと聞いた。

野良にとっての血液は、高めの牛肉感覚なんだと。


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