吸血鬼の一族 日本に集まる
始祖様の突然の登場から、
1日が過ぎ、俺は悩んでいた。
ただ仕事は大事だ。
俺は真っ暗に締め切った部屋で、
日課のトレードを行う。
15時が過ぎ、
今日一日の総括を行い、明日への準備を行う。
今日の利益は464万9千円か……。
俺は証券会社のデータを眺める。
よし……、
トレードは終わったことだし、
次は推しの地下アイドルグループ
『いちご味のクリームソーダ』のマモルちゃんの応援だ。
彼女のSNSをチェックする。
今日も彼女はカワイイ。
マモルちゃんは、男性だけども女装して女の子として活動している。
だから彼というと怒り出す。
ちゃんと彼女と言わないとダメだ。
俺はさっそく彼女のSNSの投稿にいいねを押す。
今日の投稿は……。
飯テロか……。
俺は基本食事は血液だけなので、飯テロをされても刺さらない。
でも、いいねは押す。
なになに?
これはしょうが焼きと焼き鳥のレバーの画像か……。
「仲良しの定食屋さんにきたよ。
今日はね、しょうが焼きと焼き鳥のレバー。
女の子だから、鉄分補給は重要だよね。
ちなみに、しょうが焼きと焼き鳥のレバーを同時に食べると牛肉みたいな味になるよ」
と投稿があった。
ほかの同士からの書き込みが20件ほどあった。
「マモルちゃん。かわいす。しょうが焼きと焼き鳥のレバー試したよ。
まじで牛肉味でビックリした。マモルちゃん。天才すぎ」
「マモルちゃん。マジ天使。しょうが焼きとレバーはマジで牛肉味で驚いた。俺は赤身肉が好きなので、こういうワイルド感好きよ」
……。
食事をとったことがないので、牛肉味もしょうが焼きの味もよくわからないし、どうでも良すぎるが、ご飯のことで彼女と話せることが羨ましかった。
30分ほど彼女のSNSを確認し、画像を保存し、言動をメモ帳に保存していると、天使がやってきた。
真っ黒な部屋で、全身黒い服を着た天使がやってくると、生首だけが寄ってくるようで気持ち悪い。
まぁ自分も黒いスウェット上下だから、人のこと言えないが。
「兄貴。始祖様のこと考えた?」
と天使は尋ねた。
「まぁ連絡はするが、どう言うかだな」
と俺は答えた。
喜羅羅も眠そうな顔をしてやってきた。
黒いシルクのガウンを素肌にはおり、下には何も着ていない。
「ふぅわぁ。まだ決めてなかったの?」
と喜羅羅はけだるげに言った。
「どうせ、何書いても紛糾しそうだから、怒羅鬼高次に始祖様が降臨されました。以上報告まで……、だけでいいんじゃね」
と俺は答えた。
「そだね。わかった。じゃあ姉ちゃんがメッセージ送っておくわ」
と喜羅羅は言い、すばやくメッセージを送った。
「いや、さすがにそれだけじゃあマズいだろ。ちょっとは説明しなくては」
と天使は言った。
「……もう遅い」
と俺は言った。
3人のスマホに、異常な量の通知が届く。
「えぇマジで、とんでもない量のメッセージが来てるんだけど」
と喜羅羅はウケている。
「すげーな。俺もだ。笑う」
と天使は腹を抱えて笑っている。
俺は嫌な予感しかしなかった。
俺は慎重に考えて、
メッセージを送った。
(今は始祖様の登場が安定しておらず、状況が読めないので、様子見ということにしませんか?)
俺がこのメッセージを送ってから、ぱたっと通知は鳴りやんだ。
「良かった。とりあえず落ち着いた」
と俺はソファーに横たわった。
「……よかったね。でもこれで済むのかな?」
と喜羅羅は呟いた。
「済むわけねぇだろ」
と天使は苦笑いをした。
二人はアホだが、勘だけは鋭かった。
そのことがやけに気にかかった。
俺は無事でいられるのだろうか。
……
今までノーマークだった日本在住の子孫、怒羅鬼高次に始祖様が降臨したという話は、全世界の吸血鬼ネットワークを震撼させた。
各家の代表者たちは、早速日本への旅券を手配した。
しかし、昼間に活動できない彼らの移動手段は限られる。
彼らは旅客機に各家の代表者を入れた完全に紫外線を防ぐことのできる酸素ボンベ付きの棺桶を搬入し、人間の同行者数名をつけることで、搬入させることに成功した。
ただ通常のルートとは異なる移動のため、政府機関への根回しは厳重に行われた。
1週間後、怒羅鬼家に続々と各家の代表が姿を見せた。
……
「兄貴。めっちゃ人来てるけど、うち狭いし、収容しきれないよ」
と天使は客の収容の心配をしている。
怒羅鬼家の屋敷は、
親父が外観が中世の城を思わせるデザインだと言って、
廃業したラブホテルを買い取って改装したものだ。
元は真っ白なお城風の建物だったが、今は外壁は黒と赤に塗装され、おどろおどろしい雰囲気になっている。
元がホテルなので、宿泊設備は充実しているが、まぁ色々と問題はある。
客人には、部屋の鍵を渡して中に入ってもらっている。
「しかし吸血鬼の名家の代表者が集ってラブホに泊まってるとかウケるよね」
と喜羅羅はゲラゲラ笑っている。
実際シュールすぎるが、俺的には笑えない。
「姉ちゃん。さすがに、今回のはウケないわ。だって普通にやばくない?」
と天使は言った。
たしかに、なんかよくわからないけど、ピンチな気がする。
応接室につないである客室からの電話が鳴る。
「はい、受付です」
と俺は言った。
「Do you speak English」
と男は言った。
なんだ。何言っているかわからない。
俺は電話を切る。
「どうしたの?」
と喜羅羅は言った。
「言葉がわからなかったから切った」
と俺は答えた。
「だよね」
と喜羅羅は眉間に皺を寄せる。
「まぁいいんじゃね。日本に来るのに通訳も連れてこなかったのがバカなんだし」
と天使は笑った。
「まぁそうか。こっちは誘ってもないしな。一方的に来ただけだしな」
と俺は言った。
(どんどんどんどん)
応接室をノックする音が聞こえる。
あぁ面倒くさい、ついにこっちまで来たか。




