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1 陰鬱な日々

 私は生まれてからずっと動揺すると怪力になってしまう体質だ。

 飛んできた虫に驚いてシャーペンをへし折ったり、茂みから猫が飛び出してきて鞄のひもを引きちぎったり。

 それはもう散々である。


 そして、この力は物だけではなく、人をも壊しかねない。私はそれが恐ろしい。ずっと恐ろしい。

 だから誰とも関わらない。周りも私に関わろうとしない。それでいいんだ。そう言い訳を心の中で零しながら、学校からの帰り道を歩く。



「ああ、帰ってきたのか真琴。おかえり。」

「ただいま……」


 私は兄と祖父の三人暮らしだ。父と母の事は知らない。亡くなったのか、捨てられたのか。兄も祖父もその事を話そうとはしないし、私も聞く気はないので知る由はない。

 

「真琴。また今日も一人で読書か。」

「……別に、いいでしょ。好きなんだから。」

「と言ってもなぁ。そんなんじゃいつまでも友達なんかできないぞ。」

「……!放っておいて、友達なんていらない。」


 それが嘘なのは、私も兄もわかっている。本当は友達がほしい。普通の高校生みたいに友達と帰り道に買い食いなんかしてみたい。けれど、私は怪力だからそれは出来ない。きっとまた、友達を傷付けて、皆私のことを嫌いになる。だったらいっそ、最初から友達なんて作らない方がましなんだ。


「真琴……。」


 兄のしかめっ面を見るのは何回目だろうか。私が小さな頃に友達を傷付けて帰ったあの日から、よく見るようになった。その顔を見ると心がギシギシと軋む。


「……私、部屋戻るから。」


 兄から目を背けるのも、もう慣れてしまった。

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