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無へ向かう電車

作者: ラベンダー
掲載日:2026/02/25

電車通勤。それは鬼畜だ。


人の呼吸がうるさい。

人の体温が不快だ。

人の匂いも好きになれない。


回避する方法はない。

だから今日も、電車に乗る。


立つ。


座っている人の中に、足を組んでいる人がいる。

その前は避ける。


足を組む人は、自分を「偉い」と勘違いしていそうで怖い。

それは家の中だけにしてほしい。


駅に着くたび、人は増えていく。


スマホをしまう。

片手でカバンを持ち、もう片方でつり革を握る。

目を閉じる。

「無」に入る。


気づけば、降車駅だ。終点。

皆が一斉に立ち上がる。


ドアが開く。

人は押し合いながら外へ流れ出る。

その流れに押され、降りる。


問題は階段だ。

いつも位置を把握できない。


目の前に階段があれば、どれだけ楽か。

(まだ次の電車に乗らなければならない。)


今日も、思っていた場所に階段はない。

もしかすると日替わりで移動しているのかもしれない。

――ただ、覚えられないだけだ。


次の電車は十分後に発車する。

十分もある。余裕だ。


その余裕こそが、階段を覚えられない理由かもしれない。


再び、電車の中。


私は座らない派だ。

隣に「ヤバい人」が座る可能性を排除するため。


逃げることはできる。

だが、「逃げた」と思われるのが嫌だ。

だから最初から座らない。


……「ヤバい人」と言うのは大げさかもしれない。

繊細なだけだ。


クシャクシャ音を立てて食べる人。

それが服に飛んできそうで落ち着かない。


ブツブツと独り言を言う人。

内容次第では恐怖すら感じる。


「ありがとう」を百回唱える人なら、まだいい。

だが、「死ね」や「クソ」と呟く声は、やはり怖い。


そんなこんなで駅に着く。

ここからは徒歩だ。


帰り。


仕事が終わり、また電車に乗る。


乗りたい。

だが、来た電車には乗れなかった。

人が多すぎる。


早く帰りたい。


次の電車に、ようやく乗る。


疲れているので、スマホはいじらない。

スマホは疲れる。


目を閉じる。

また「無」に入る。


気がつけば、家だ。


風呂。

食べる。

寝る。


次の日。


また電車に乗る。


それを、繰り返す。






















一週間後、

私の人生は終点に着いた。

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