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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!《前編》  作者: 雲乃琳雨


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3/10

3、修道院生活の始まり

 ピニオンがいなくなると早速エレオノーラは、ワンスにピニオンの部屋を開けさせて中に入った。


「何もないじゃない。ちょうどいいわ。この部屋は私が使うわ」

「お嬢様、部屋の権限はすべてご主人様が管理されています。今そのようなことを進言すれば、印象が悪くなりますよ」


 ワンスは声を潜めて、エレオノーラに言った。


「せめて、3か月は過ぎないと。それより、今のお部屋を充実させてはどうでしょうか」

「そ、そうね」(危ないわ。お母様だっていまだに自由にできないのに、早々にぼろを出すところだった。今まではあの子が人目を引いたから、気にしなくて良かったけど、これからは私たちだけになるから気を付けないと……)


 エレオノーラは厳しい目をした。ワンスは目を細めてじっとエレオノーラを観察していた。


(部屋を開けろと言った時は驚いたけど、エレオノーラ様は今までと全然違うわ。猫を被っていたのね……)



 屋敷の中を歩きながらソルビエは、夫のスタンリーに言った。


「ねえ旦那様、そろそろ私にも屋敷の仕事をさせてくださいな。子爵夫人として!」

「君はそんなことをしなくていい。君と娘には、社交マナーの先生を付けよう。そろそろ、お茶会に行ってもいい頃だろう」

「え、そうなの? おほほほ、優しいのね」(お茶会に平民が行ったら、いいターゲットにされるだけだわ)


 ソルビエは冷や汗をかいて部屋に戻った。


(そんなことじゃないのよ。もっと好きなものを買ったり、旅行をしたり、自由にお金が使いたいの! 贅沢がしたいのよ。本当に、ケチな人ね)


 ソルビエは出かける用意をすると馬車に乗って屋敷を出た。それを窓からエレオノーラが見ていた。


「お母様、また恋人のところに行くのね。お父様に見つからないといいけど」


 エレオノーラはため息をついた。

 ソルビエは、モントルにある恋人のジャンの家に行った。


「おお~、ソル来たか。金はどうだった?」

「ダメダメ。あの人、私には全然使わせてくれないの。少額でも申請しないとダメだし、貴族の買い物はほとんどツケ払いなのよ」


 ソルビエは目をつむってお手上げのポーズをした。


「なんだよ。当てが外れたな」

(本当にそうよ。せっかく貴族の奥様になったのに、これじゃあ計画が台無しだわ)


 私は自分が裕福な家に嫁ぐことができないから、子供を使うことを思いついたの。顔のいい男と付き合って、エレを身ごもった。男に子供ができたと告げるとあっさりいなくなった。それは、私にとっては都合が良かった。生まれた子供は、二人の髪と目の色と違った。エレの美しい容姿を見て奇跡だと思ったわ。


(あの子は外見は天使だけど、中身は私と変わらないのよね)


 私は貴族の情報を仕入れるために、モントルの劇場近くのレストランで給仕をしていた。エレが15歳になると、同じように劇場の近くの花屋で働かせた。エレの可憐さに花屋は売り上げも伸びて、店主も大喜びだった。ある日、エレが言った。


『私、マクレガー子爵の亡くなった奥さんにそっくりなんですって』

『何だって!』


 これを使う手はないと思った。スタンリーのことを調べて、劇場に来た時にエレに花を持って売りに行くように言っておいた。エレの話では、あいつはエレを見て驚いたそうよ。


『お母さん、あのおじさん私のことを聞いてきたわよ。だからお母さんのことを話した』

『よくやったわ。エレ』


 私はエレを軽く抱きしめた。スタンリーはしばらくしてレストランに私を訪ねてきて、こう言った。


『君たち親子を支援したい。君には私の妻の役をしてほしい』と、


 願ってもいないことだった! 


『私にはエレオノーラと同じ年の娘がいる。エレオノーラにはあの子の姉妹になってほしい』

『もちろんです』


 私は了承した。


『では、手続きはこちらで済ませる』


 夢にまで見た生活が手に入った! そして継子のピンも追い出すことができた。でも、お金が自由に使えなければ意味がないわ。あの人は私とは本当の夫婦になるつもりはない。本当に愛妻家なのね。あの乱暴な継子と同じで、厄介だわ。ピンの奴、私のエレに傷をつけて。跡が残ったら使い物にならないじゃない!


「おい、どうしたんだ?」

「あ、別に」


 ジャンが黙っていたソルビエに声をかけた。ソルビエは何事もなかったように、目をつむってジャンに唇を寄せた。



 修道院までは3時間かかる。昼食を宿場町で済ませて、馬車は崖の端を登っていた。左手には森がある。

 ワンスは上手くやってるかしらね。


(もちろんですよ! お嬢様。エッヘン)


 なんかワンスの心の声が聞こえてきそうだわ。ワンスなら大丈夫だろう。

 修道院が見えてくる。神殿もあるので敷地は広い。切り立った崖の上にあり、細い橋のような道でこちら側と繋がっている。まるで空中に浮いているようだ。私は崖の高さにゾッとした。

 なんてところにあるの? 元は監獄だったのかしら? 絶対逃げ出せないわね。


 修道院に着くと馬車は帰って行った。神官に案内してもらう。


「ここは元は、古い砦だったんですよ」


 わぁ良かった、監獄か聞かなくて。印象悪くなるもんね。私は口を押さえた。こんな何にもないところに、昔の人は何で住んだんだろ。

 修道院の廊下は空気が澄んでいた。ここは気持ちがいいわ。来て良かった……。


「あれを見て! ピニオン・マクレガーよ! とうとう家を追い出されたのね」

「まあ、本当だわ」


 クスクスと行儀見習いに来ている令嬢二人が、こちらを見て笑っていた。一気に空気が悪くなったわ。私はムスッとした。知らない人だし。


「ここの森には魔獣が出ます。ハンターたちが怪我をしては、ここに治療に来ることが多いです。その治療も覚えてもらいますよ」

「はい」

「貴族の方は、個室が用意されます。こちらをお使いください」


 一室に案内された。中は木の壁と床のまま、机とベッド、クローゼットだけのこじんまりとした部屋だ。赤と白のチェックのカーテンがせめてもの華やかさね。

 今日からここが私の住処か。


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