俺を手にした皆へ
「ふぅ~……」
パソコンのキーボードから少し離れて、画面を眺める。
「販売、終了」
1個でも ” 俺 ” が売れて、誰かの元に旅立ったなら、副次効果が発揮される。
一応、創ったのは俺じゃなくて、他の方々だから、効果は絶大、とまではいかないだろう。
『うん……。それくらいがいいよな……』
何となく、自分の手のひらを見つめる。
『この、力……』
いつの間にか、身についていた ” 魔法 ” 。
願いを実現する、具現の力。
『一応……。安全なものに留めたはずだけど……』
俺の願いを叶える力は、異常すぎて、俺以外には効果が強すぎる。
おかげで安易にハートだのコメントだの出来なくなってしまった。
『だって……、皆、成功していくんだもんな……』
一人の例外もなく。
誰にも平等に。
本人の望みをベストな形で叶える。
『あー、でも……。 ” 僕 ” の願いはまだ……』
そこまで考えて右腕で目元を覆う。
「叶わねぇよなぁ……」
” 僕 ” の願いは、叶わない。俺がそう意図しているからだ。
” 僕 ” の指令の下、叶わないように仕組んでいる。
「なぁ、そろそろ……」
『だめ~』
「そこをなんとか~」
『だめったら、だめ』
「ちぇ~」
ホント、おかしらは、頭が固い。頭だけに。
『でも……。ホントにそろそろ……』
減ってゆく口座残高。過食と拒食を繰り返す身体。他者に依存心をぶつける心持ち。
『限界って、やつじゃね?』
口にすれば、「それは異常じゃない。性格だ」との弁が返ってくる。
たとえ性格だとしても、もう少し落ち着かせようとは思わんのか。
「ま、それはそれとして……」
売り上げはこちらには分からないのが難点だが、もし1つでも売れていたら、そいつに「イイコト」が起こるといいと思う。それは、もしかしたら、傍目には「イイコト」じゃなくっても、そいつにとっての「イイコト」なら、それが起こるといい。
きっと、その出来事が、あんたを本来望む方へ連れていく。
俺の分身がそちらにいるなら、俺たちはトモダチだ。
離れていても、どこの誰かも分からなくても、同じ姿に惹かれ合った者同士、きっとトモダチなんだと思う。
傍にいることが出来ないトモダチは、離れていてこそトモダチスキルを発動できる。
そういうことも、きっとある。
俺はそういうトモダチに、助けてもらったから。
そっちに向かった ” 俺 ” が、今度はトモダチになって、アンタを助けられたらいい。
縁結びか、縁切りか。もしくは美味しい店でも見つけるか。趣味友とかさ、見つかるかもよ?
ネットか、リアルか、どっちかなぁ? どっちもだったら、楽しいなぁ?
金運上がって、給料上がって、ボーナス出たりしたりして?
あははは。
全部、妄想の域を出ないけど、叶う未来があるのなら、少し見たいと思わねぇ?
……。
欲しいと思った気持ちには。
欲しいと動いた体には。
「それが大事」と分かっているさ。
だからぁ、えっと…… ” 俺 ” の効果が強すぎたらね?
「落ち着け、お前」と声かけて。
「はっ。ごめん、やりすぎた!」ってちゃんと言うこと聞くからね。
トモダチの言うことならば、聞くからね。うん。
そういうわけで、注意をしとく。
俺の効果に、驚くなかれ。ふっふっふっふ。
飼い主「何で、お前は落ち着かないの?」
俺「性格ですが」
飼い主「怪我や病気をしすぎだろ。心の」
俺「性質ですが」
飼い主「ダメだ、病識、皆無な流れ」
俺「そんなの知ってる方が病気でしょ」




