コンプライアンス
ゴキブリは死にかける
パワーハラスメントってなんだか知ってる?
ええ、パワハラですよね。
パワハラの定義は言えますか?
他人を怒ったり、蔑んだりすることですかね。
それもありますけど、実は大きく要素が三つあるんですよ。
・優越的な関係を背景とした言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の就業環境が害されるもの
「じゃあさ、あなたが部下に怒鳴っても、その部下の就業環境が害されなければ何をしても良いってこと?一体誰が就業環境を害されたことを証明するのですか?」
「そこが難しいところですよね」
「ウチの会社でパワハラがあったときに、人事が罰を与えているみたいなんですけど、それって正しいの?」
「基本的に人事は会社サイドの組織なので、それは可能ですが社会通念に照らし合わせる必要はありますね」
「噂では人事が厳しく指導したことで気を病んで退職する人も増えてるみたいですよ。逆にそれはパワハラにならないんですか?」
「パワハラになるかどうかは先述の三つの要素を満たすことが必要条件でして、もし気になることがあれば労働局員か社労士に聞いてみると良いですよ」
「あのー」
ここまで会話しましたけど、結局曖昧な受け答えしかしないのは何ででしょうか。
パワハラと認定する権利は企業にはありません。例えば労災申請がなされて、労働局の調査が入ったあとに認定されれば、パワハラの疑いが強まると考えられます。
なんか、定義ははっきりしているのに、パワハラという言葉だけがひとり歩きしているとしか思えないんですけど。
「そんな風に具体的に見せかけて抽象的だから、企業の裁量で辞めさせたい社員がパワハラで消滅するように仕組むとか、パワハラになりそうな環境を整えるとかできちゃうじゃないですか」
「まあそういった場合はパワハラの疑いをかけられた人に原因がありますからね」
「原因を作ったのはその人かも知れないけど、そのきっかけを作ったのは別にいるんじゃないのかなってことです。自発的にパワハラの行動をする人ってよほどでない限りいないと思うけど」
「組織的にその人を追いやってるとあなたは言いたいの?」
会社という枠組みは、グレーな範囲が多すぎる。
ハラスメント対策してる、と推進するチームが権力を濫用して解雇勧奨するとかザラだ。
まるで蠱毒だ。
壺に強力な毒蟲を入れて互いに闘わせる。
生き残ったものが最強の毒蟲になると言うわけだ。
難しい仕事が多い組織に配置転換してみたり、そのなかで攻撃的な社員を集めてみたり、優越的な立場にあるものたちが秘密裏に印象操作をしたりと、やりたい放題な状況が作り出されてしまう。
組織のなかで争いを引き起こさせ、会社の理念や発展に効果的でない人材から優先的に弾圧していく。
毒を以て毒を制す。
誰にも頼れない孤独な者たちの群れが互いに殺し合うのを腕を組んで人事は見守っている。
遥か遠方から、防護服を身にまとって、最後の一匹が出てきたら殺虫剤を容赦なく噴霧する。
その殺虫剤って法規制取れてますか?
国が使用許可出してますか?
そんなこと人事には関係ない。
「だって会社のルールではオッケーだからね」
会社のルールって大切だ。
従業員は一人じゃない。
人事は全社員を守らなくてはならない。
だから少し手荒な真似をしても、会社に潜むゴキブリは抹殺しなくてはならない。
「おい、あっちにゴキブリが行ったぞ!」
「こっちにも出た!角に集めよう」
「よし、このまま一網打尽にしてやろう」
国の法律では違反とされる殺虫剤をここぞとばかりにばら撒いて、防護服を被っているから容易に特定ができやしない。
ゴキブリって汚いから。
ゴキブリって厄介だから。
ゴキブリって役に立たないから。
そんな穿った考えで、勢いに任せて殺すんだ。
優しく紙に包んで外に放り投げてやる。
なんてことは思いつかないみたいだ。
「たかがゴキブリ、お前に何ができる」
「ゴキブリの代わりなんていくらでもいる」
「ゴキブリなんだから汚い会社に移れば?」
「お前はゴキブリ、とにかく悪い!」
「お前が悪い、お前が悪い、お前が悪い!」
オマエガワルイ。
オ、マ、エ、ガ、ワ、ル、イ
ぱっと見ゴキブリが元気かなんて人間様には分からねえ。
ゴキブリが病気かなんて、記憶障害かなんて、触覚が千切れてたって、人間様にはわからねえんだ。
ゴキブリだって頑張って生きてんのに、それでも家のなかで見つけたら殺すだろう。
そのくらい自然なんだわ。
使用者が気に食わない労働者を抹殺するのって。
「待ってください、それはいつのなんの話ですか?」
「あなたじゃないから知らないよ」
「知らないでは困ります」
「とにかくみんなあなたのこと悪いって言ってるんだ。辞めるとか考えないのか?」
「そのときの指示が間違っていたとは思わないんでしょうか」
「あなたはそう思うってことでしょう?」
いくらみんなを守るためだとしても、根拠がないままにゴキブリを駆除しようとするのは流石に無理があると思うんだよね。
どうせゴキブリだから適当に殺そう。
それでもいいんだけど。
もしもそれが国に知られたら、そっちの方がダメージデカいと思うんだ。
「国指定外の殺虫剤使ったって本当ですか?」
「指定のものを使いました」
「でもあなたが指定外の殺虫剤を使用している録画データがありますよ」
「それはパッケージを変えただけです」
「パッケージを変えるだけでも問題になる可能性がありますよ」
「そもそもその録画データは違法じゃないんですか?」
「ゴキブリが自分の身を守るためなら妥当性は認められます」
「でもゴキブリはまだ元気に生きている」
「ゴキブリは病院に行って診断書を貰ってますよ」
「でも会社起因じゃないでしょう。ゴキブリの仕事の成果も毎年下がってるし、すべてゴキブリ本体の責任ですよ」
こうしてゴキブリを抹殺しようと躍起になる会社と、なんとかアイデンティティを保とうとするゴキブリの攻防は、国のなかでどれほど潜在的に眠っているのだろうか。
ゴキブリにならないための秘策は人事に好かれること!
ゴキブリと同じパフォーマンスでも問題なし!
パワハラを都合良く使いこなしたつもりでいる人事と、殺されると本気で毎日悩むゴキブリとのバトルはいつ終わるのか。
この国が続く限り、きっとゴキブリは無限に生産されることだろう。
(了)
あっせんはほとんど決裂するので役に立たない。すぐ終わるとかガイドラインに書いてあるけどトータル日数は長い。しかも企業来ないし。労働審判すっ飛ばして民事でやるしかない。あっせんに税金使うのは無駄な気がする。司法の就職先の受け皿?




