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尊の罪

教室で倉田学を見つけた尊は話しかけようとするが、なぜか心臓の鼓動が早くなり躊躇してしまう。尊のいつも鷹揚としているような所が無くなり汗が止まらず、ぎこちない自分は自分ではないようだった。


それでも意を決して昼休みに声を掛けた。


「学、ちょっといいか?俺の話を聞いてくれないか?」


倉田学は尊と目を合わせると、いつものように顔が青ざめ足がガタガタと震えだした。酸欠の魚のように口をパクパクとさせると上手く話すことが出来ない様子だった。


教室は緊迫した雰囲気になり周りで見ていた生徒も息をのんだ。


「なんで俺を怖がるんだよ。どうして」


倉田学は失禁して崩れ落ちた。


「もう許してくれ尊。あと少しで卒業できる。お前と別れられるんだから」


「なにがあったんだ。俺全然覚えてないんだ。はっきり言ってくれ」


「もう嫌なんだよお前は」


立ち上がるとふらふらとおぼつかない足取りで教室を出て行ってしまった。


尊はそれ以上声を掛けることは出来なかった。


倉田学は教室に戻ってこなかった。次の日から学校に来なくなってしまった。



その出来事があってからクラスと尊の間にははっきりとした溝が出来るようになった。


何か一線を越えてしまったらしい。それは何だったのだろうか。


尊は学校に行っても上の空で何に対してもやる気を出すことが出来なくなり、学校をさぼりがちになった。家に居てもやることが無いので外出して気分転換でもしようかと思ったが、体が目立つので平日に町をぶらつくのは憚られた。スーツを着ていればサボっているサラリーマンに見えなくもないと思ったが、自分はスーツなんか持ってないと気づいて苦笑した。


色が変わりささくれだった畳の上に寝転んでいると無性にDに会いたくなってきた。そう思うと居てもたっても居られず、家を飛び出し電車に乗って研究棟に向かっていた。


面会の予約はしてないが短い時間ならDに会うこともできるかもしれない。


研究所入口の受付の人に頼んでみたが、予約無しでは研究所の中に入れることは出来ないと言われた。尊はしつこく無理を言って食い下がったが許可されなかった。


「それもそうだな。何で上手くいくと思ったんだろ俺」


肩を落とし、研究所を離れた。直ぐに家に帰る気にはとてもなれなかったので駅の近くの商業施設でアイスクリームとコーヒーを注文し休憩してから帰ることにした。


最初は味を感じなかったが何人前か食べ続けているうちに甘さを感じてきて少し元気が出た。


そろそろ帰ろうかと思った時に近くで怒鳴り声が聞こえてきた。顔を向けると、学校をさぼっていると思われる素行の悪そうな高校生3人がカップルに絡んでいた。


聞き耳を立てているとどうやらカップルが楽しそうにしているのが気に入らなかったらしい。


尊は揉め事に顔を突っ込む事は規則で禁じられているので、食べ残しを片づけてさっさと帰ろうと思っていた。


すると目を細めて尊の方をずっと睨んでいた高校生の一人が闊歩して近づいてきた。


だぶついた制服に金髪をつんつん立てて甘ったるい香水の匂いをまき散らしていた。


「おう、おめーはうちの先輩ぶっ殺した奴だろ」


「はあ?」


「そのデケー体ですぐにわかったぜ」


その高校生はバタフライナイフを取り出し、カチャカチャと振り回し始めた。


「あ、銃刀法違反」


尊は立ち上がり、警察を呼ぼうとスマホを取り出した。


その時ナイフが尊の腰に刺さっていた。


「許せねえ、俺を可愛がってくれた先輩をてめえは」


何度もナイフで刺してくるが切先が表皮で止まり多少チクチク感があるものの全くダメージはなかった。


「俺は先輩達に飲み物を買ってきたところだった。お前は紙をちぎるみたいに先輩達をぶっ殺していた」


顔を見るとその不良は青ざめて小刻みに震えているようだった。


「それが今もこびりついて離れねえ。絶対にお前を許さねえからな」


その時尊の脳裏に恐ろしい記憶がフラッシュバックした。


親友の倉田学は公園でカツアゲされていた。ナイフをちらつかせた高校生5人組に脅されていた。


尊はまだ体が変化したてで精神的な波があり気が立っていた。高校生は金を取るのに飽き足らず、学を足蹴にしていた。


尊はキレた。


金を勘定している高校生の腕を握り肩の付け根からもいだ。血が噴水のように上がった。


それを見た皆が半狂乱になった。


尊は容赦なかった。高校生を文字通りちぎっては投げ、ちぎっては投げ、公園はバラバラ死体が浸かる血の海になっていた。


「ああ」


尊はその記憶を心の奥底に封印していたのを思い出した。



金髪の高校生はいくらナイフを刺しても何ともなってない尊にどうしていいかわからず、舌打ちして仲間の元に去った。


尊はその場に崩れ落ち呆然自失していた。店員が心配して声を掛けてきたが何も答えることが出来なかった。


日が暮れ赤くなった窓を見ると思い出したように我に返り、ふらふらと家路についた。


(そうだった。俺が高校生5人を殺した。そのせいで倉田学は心に深い傷を負い、超人小学生は規制され研究所では実験動物として酷い扱いを受けるようになった。全て俺のせいだったんだ)

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