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倉田学

尊はDの事を考えるのはよそうと思った。もう学校にDが戻ってきても意味がない。


以前の面影は無くなり人間かどうかも怪しくなってきた。それに四年四組はクラス替えをしたからDの居場所はもうない。


尊はこのままでは自分の頭がどうにかなってしまいそうだった。それを表には出さないように日々苦労していた。


6年3組の教室に入り自分の席に座ると自分の将来について考え始めた。


来年は中学生だ。これからどのような学生生活を送ればいいのか。周りのみんなも少しは体が成長するから自分と違和感がなくなればいいなと思った。


尊はもともと陽気な性質だったが、この体になってからは周りに迷惑をかけるまいとより陽気に振る舞うように努めた。困っている人を助けることを優先し、行事があると自分が中心になって生徒を手伝い精力的に活動した。


全ては自分を含めた超人小学生の評価を下げたくないという思いだった。



この体になってからクラスで自分と一番仲がいいのは誰だろうかとふと思った。5年からクラス替えはないから人間関係は去年と変わっていない。


それなりにクラスでは人気もあり上手くいっていると思うが親友と呼べるような生徒はいない。体が変わった後は精神年齢が高くなってしまい同級生と本気て遊んだりふざけたりするのは難しいと感じていた。


教室を見回すと一人の男子が目に入る。倉田学。彼はいつも尊を見ると必要以上に怖がって逃げる。他の生徒よりも敏感で、尊が近くに居るだけで震え出す。


怖がらせないようにいろんなことを試してきたのだが、彼だけは頑張っても上手くいかないのだ。尊が気にしなければいいだけの事なのだが、自分の中の何かが納得できないような気がしている。


昔の事が関係しているのだろうか。実は尊は体が変化する前の記憶はぼんやりとしていてよく思い出すことが出来なかった。Dに聞くと昔の事もよく覚えていると言っていたので自分に特有の問題なのかもしれないと思った。


他の生徒にそれとなく当時の事を聞いてみても、はぐらかせているのか本当に何も知らないのかわからないが反応は良くない。


それがはっきり思い出せれば彼との関係も改善するかもしれない。授業が終わり家に帰ると尊はアルバムを開いてみた。昔の記録なので何か手掛かりになるだろう。今までも何度か試したが怖いという感情が出て来て直ぐに閉じてしまっていた。


怖いということ自体何かあるということの裏返しでそこに手掛かりがあるということに違いなかった。


思い切ってアルバムをぱらぱらとめくっていくと吐き気と動悸がしてくる。我慢してめくり続けるとあるページで手が留まった。


「そんな、まさか」


倉田学と尊のツーショットの写真が何枚かあった。肩を組んだりふざけあったりしてとても仲の良い、いや親友のようだった。


彼は、今とは全然違い元気の良い少年のように見える。自分も体が小さく別人のようだった。昔に撮った小さい頃の写真もあるので多分付き合いは長いのだろう。なぜ自分はそれを全く覚えていないのかわからない。底なし沼に落ちていくような不確かな感覚がしてきた。


アルバムが手から落ち、暫く呆然と畳を見つめていた。


「俺は誰なんだ」


自分の体に対して狭くなった部屋の中を尊は落ち着きなく歩き始めた。何週しても止めることができない。音がうるさいと下の階から母親が注意しにきたので咄嗟に倉田学と自分の事を聞いてみた。今更何を言っているんだと更に怒られたので尊は不貞腐れてその場に胡坐をかいて座った。


「倉田学、学。俺の親友」


声を大きく出して言ってみた。


「学」


そうだ、彼をそう呼んでいた。気軽に声を掛け、いつも遊んでいた気がする。


その時はっきりとそう思ったが、少しするとまたそうではないような気がしてきた。


明日学校で学に直接聞いてみよう。彼は怯えるだろうが小学校を卒業する前に決着をつけなければならない。今聞かないと永遠に答えは出ないだろう。

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