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登校

早起きは苦ではない。時間が無くて朝食が食べれない方がよっぽど苦痛だ。バターをたっぷり塗ったトースト三枚、目玉焼き、ハム、デザートにイチゴ3個、それからどんぶりで卵かけご飯二杯からのしょうゆラーメン替え玉3。朝食はたくさん食べるほど元気が出る。


満腹になった親王時尊は長いげっぷをした。はしたないと母親の光子に怒られる前に立ち上がりランドセルを背負うと29cmのスニーカーを履いて元気よく家を出た。尊は小学生にしてはとても大きな体をしている。太っているというわけではなくガッチリとでかい。玄関から門扉までの階段を下りると1階の車庫に入っている軽自動車がエンジンをふかしている音が聞こえた。最近購入した車はスマホから冷房を入れられるから快適なんだと父親が自慢げに言っているのを思い出した。


尊の家から学校まで普通に行くと10分掛かるが、ショートカットを使うと5分短縮することができる。狭い裏路地で服が汚れたり引掛けたりしないように抜けていくのは尊の大きな体には至難の業だが毎日やっているうちするりと通ることができるようになった。


学校がある広い通りに出るとひと際大きな体をした男が丸太のような太い腕を窮屈そうに組み校門の前に立っていた。右目は義眼で顔の彫りは深く、伏し目がちの憂いを帯びた表情は陰のある青年に見えた。Dの文字をプリントしたTシャツが巨体に吸い付き、6パックに割れた筋肉をレリーフのように浮きだたせている。


彼の名前はダンクーガ佐藤。あだ名はD。

尊の一つ後輩の小学校5年生でミシンを使った洋服づくりが得意である。



片手を上げ頭を下げたDの元に尊は早足に向かった。


「D、こんなところに立ってたら下級生が怖がるじゃないか」


「尊パイセンに用があったのでここで待っていたで候」


『候』という語尾、Dの話し方が特徴的なのは祖父が室町時代から続く夢幻一刀流の継承者であるからと噂されていた。


Dはおもむろにスポーツバッグを開けて手に取ったとっくりセーターを広げると真ん中に『尊』と大きく刺繍されているのを自慢げに見せてきた。


「これ、尊パイセンにプレゼントで候」


もうすぐ夏なのにセーター?尊は眉を顰めた。だが違和感はそれだけではなかった。


「ありがとうD。今日はなにかの記念日だったかな?プレゼントをもらう資格が俺にあるのだろうか?」


膝から崩れ落ちるD。尊があのとても重要な日、『あの日』を忘れていることに愕然としていた。


「そんな、忘れたんですかパイセン?この校門で半年前にあったことを」


尊は血糖値の上がった脳をフル回転させて懸命に思いだそうとしていた。


半年前、学校の校門で起きたことといえば…


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