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VTuber事務所《FMK》 ~宝くじで10億当たったからVTuber事務所作ったらやべえ奴らが集まってきた~  作者: へいん
Chapter 1.5 "Girls in the Interlude"

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勝負の行方と女子会と

「くっそー、まさかあそこから一勝も出来ないなんて……絶対あのサイト牌操作してる」


 箱内初コラボの翌日。

 殊勝にも自分から事務所に顔を出した一鶴は、昨日のトランプ勝負の結果についてまだグチグチと文句を垂れていた。


 トランプゲーム8本勝負の勝者は、3回1位を取った☆ちゃんだ。

 小槌と幽名が勝利数2、ナキが1と全員が最低でも1勝ずつは上げていた。


 そして気になる敗者は、最下位数4回の小槌だった。

 勢いがあったのは最初の2連勝だけで、デカい口を叩いていたにも関わらず後はボロボロ。

 大富豪でナキに負け、その後幽名がホストになったブタのしっぽで☆に負けて最下位に。

 自分がホストになって選んだテキサスホールデムでさえ、幽名に完敗して3連敗。

 その後に行われたハーツとババ抜きでは、最下位こそ免れたものの、幽名と☆にそれぞれ1位を譲ってしまった。

 そしてトドメのドボンで4度目の最下位になってしまい、☆が1位になって3勝の単独トップ。

 延長戦にもつれこむこともなく、無事に負けが確定したのだった。


「☆ちゃんが最後に連続ドボン上がりしたのって絶対おかしいわよね。牌操作よ牌操作」


「まだ言ってる」


 というかコイントスでイカサマしてたようなヤツが牌操作に文句言うなよ、自分にだけ甘すぎだろ。そもそも牌操作なんてされてないし人聞き悪いことを言うな。

 ま、小槌のピエロっぷりにはリスナーも喜んでくれていたし、そこら辺の功績も含めると昨日の小槌はよくやってくれてた方だろう。


 それに俺としては配信の盛り上がり云々よりも、瑠璃の遊びに付き合ってくれた感謝が一番大きい。

 一鶴だけじゃなく、幽名もトレちゃんも、瑠璃がみんなと遊びたがっていると教えたら速攻でOKしてくれていたし、瑠璃は良い仲間に恵まれたなと思う。

 ちょっと一部の連中が頭おかしいのが玉に瑕だけれども。


「――っていうわけで、トレちゃんにご飯を奢らなくちゃならないからお金貸して、代表さん」


 なんでやねん。


「パチンコで勝った金はどこに消えた」


「はぁ……残ってるわけないじゃない?」


「普通は残ってると思うんだけど俺がおかしいのかな」


「4万もあれば足りると思うから、お願いっ!」


「どんだけ食うつもりだよ」


「馬鹿ねえ、折角だから瑠璃ちゃんと姫ちゃんとも一緒にご飯食べたいじゃない? そしたら年長者のあたしが奢らなくちゃでしょ?」


「……」


 散々年長者として情けない姿を晒しておいて、よくもまあしょうもない見栄を張れたもんだ。

 しかし箱内の結束を高める効果もあるだろうし、ある意味これも必要経費というやつだ。

 そもそも今回一鶴にギャンブルをするようけしかけたのは俺なわけだしな。

 実のところ、飯代を俺が出すのも俺の中では既定路線だったのだが、そこまで教えてやる義理はない。


「仕方ねえな」


「毎度ー♪」


 財布に手を伸ばす。

 しかし、


「アイヤ、待つアルヨ、ボス。騙されタラいけないネ。コイツに金を貸しても、本来の用途通りにナド使われるハズがナイヨ」


 財布に伸ばした手は、カタコト言葉のコスプレチャイナ娘に止められてしまった。


「ん、なんだ、もう来てたのか」


「さっきカラずっと居たヨ」


「ぎゃあああああああ!? ら、ら、ら、蘭月(ランユエ)!? なんでアンタが……!!?」


 突如現れたチャイナ服の女――自称闇の何でも屋である李蘭月を見た一鶴が、ライオンに出くわしたトムソンガゼルのような勢いでビビリ散らかしながら仰け反った。

 一方俺は、いきなり現れたことに多少ビックリはしたものの、蘭月の存在自体には驚いてはいない。

 何故なら、今日彼女を呼んだのは他でもない俺だからだ。


「もう知ってると思うが改めて紹介させてもらうぞ。今日からバイトとして入ってもらった李蘭月だ。一鶴専属のマネージャーになってもらうことになるから、二人とも仲良くな」


「ソウいうコトネ」


「……!? ……!????」


 酸欠になった金魚みたく口をパクパクさせる一鶴は、よほど嬉しかったのか言葉もないようだった。

 油断したら何をしでかすか分からないじゃじゃ馬娘を乗りこなすには、やはり優秀なジョッキーに依頼するしかない。

 そこで俺が選んだのが、以前取り立て屋として事務所に現れた蘭月だったわけだ。


 蘭月は俺が知る限りでは、あの一鶴が心の底から恐れているたった一人の人間だ。

 一鶴の専属マネージャーを雇うなら彼女以外に候補はいないだろう。

 これで一鶴もしばらくは無茶をしなくなるはず。

 めでたしめでたしだ。


 ■


 結局俺は一鶴に飯代をくれてやることにした。

 敗者の飯代を俺が払うのは、元々最初から決めていたことなのでそこは問題ない。

 問題があるとすれば、金を渡す相手が一鶴だということだけ。

 しかし今日からは蘭月が気配を消して影から見張ってくれるので、一鶴も横領してパチンコに行くような真似は出来ないはずだ。


 で、楽しい女子会の当日。

 幽名を迎えにきた瑠璃が、事務所を出る前に俺の所に話をしにきた。


「代表、いろいろありがと」


 出し抜けに礼を言う瑠璃に、俺は窓の外に目をやって空模様を確かめた。


「明日は雪かな」


「どういう意味よ」


「今日はやけに素直だなって思っただけだよ。いつもは捻くれまくってるのに」


 俺が率直な感想を口にすると、瑠璃はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。


「今回コラボ配信のお膳立てをお願いしたのは私なんだから、礼くらいするのは当然でしょ」


「まあ、それくらいの要望に応えられないようじゃ、代表やってる意味ないしな。礼を言われるほどでもないさ」


「それに、みんなでご飯行く場も用意してくれたじゃん。ご飯代も多分代表が出してるんでしょ?」


 瑠璃の言葉に、俺は一瞬沈黙してしまった。


「……どうしてそう思った?」


「一鶴さんがコラボ配信で賭けをするよう唆したのは代表なんでしょ? でも私や姫様やトレちゃんが負けて損するかもしれないのに、代表がそんな提案するなんて変だって思って。そう考えたら最初からこの形に持っていくつもりだったのかなって、なんとなく」


 大体瑠璃の想像通りだ。

 友達を遊びにも誘えない人付き合いの苦手な妹のために、みんなでご飯を食べに行く機会を与えてやれたらなー、なんて余計なお世話を発揮したのが今回の俺だ。


 FMKの仲間たちと、もっと仲良くしたい。

 それが瑠璃の一番の願いだってのは、分かり切っていたことだしな。


 しかしそんな俺の浅い考えも、妹である瑠璃には全部お見通しだったようだ。

 全く……これだから兄妹ってやつはやりづらくていけないな。


「妄想乙、俺はそこまで考えてませんでした」


「あっそ。素直じゃないのはどっちなんだか」


「うるせ」


 シッシッと俺が追い払うジェスチャーをすると、瑠璃はベーっと舌を出して応戦してきた。

 そうして事務室を出ていく直前、瑠璃は最後にこちらに振り返ってはにかんだ。


「次もヨロシクね、おにいちゃん♡」

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