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VTuber事務所《FMK》 ~宝くじで10億当たったからVTuber事務所作ったらやべえ奴らが集まってきた~  作者: へいん
Chapter 1 "Start-Up Ready?"

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【馬】自己紹介はさておき……1000万の使い途を知りたいよね?【金廻小槌/FMK】#1

「……あー、あー。これ聞こえてるかな? 聞こえてるよね? よし、聞こえてる」


 配信画面の右半分を占拠した黒髪の女の子が、丸葉一鶴の動きに合わせて上体を揺り動かす。

 マイクテストの喋りに反応して口元もしっかりと開閉するし、一鶴が視線を動かすと画面の中の女の子も鏡合わせに視線をスライドさせる。

 2Dモデルの動作は完璧だ。何回も事前にチェックしていたとはいえ、本番になると不安になるのはご愛嬌と言うもの。


 さて、と一先ず安堵した一鶴は、次いで配信のチャットを確認した。

 配信画面の左半分は、配信のチャット欄を垂れ流すように配置しており、いわゆる雑談配信の王道的な画面構成となっている。そちらも問題なく動作しているようで、配信の開始を待っていたリスナーたちが、若干のラグはあるものの早くも反応を示してきていた。


:始まった!

:キター!

:聞こえてるよー

:思ったより凛々しい声してる

:うおおおおお

:1000万溶かす配信と聞いて

:はじまた

:もうちょいマイクの音大きくしたほうがいいかな


「マイク音大きくね、オッケ」


 オーディオインターフェースを弄ってマイクボリュームを調整する。

 リスナーとのそんな些細なやり取りに、自分は今初めての配信をしているんだという実感が溢れてきた。

 一鶴は、らしくもなく緊張していると、自身の心理状態を冷静に分析する。

 とはいえ緊張の理由はこれが初配信だからというわけじゃない。

 このあとに待ち構えるデカい勝負こそが、今一鶴の心臓を激しく脈打たせているものの正体なのだから。


 オールグリーン、感度良好、いくぞオークス――財布の貯蔵は十分だ。


「みんなオハヨー、景気はどう? 毎日しっかり稼げているかな? あたしの財布は今超潤ってまーす! FMK第1期生新人VTuberの金廻小槌です! よろしくっ!」


:よろしくー

:おはようございます

:景気の話から入るのか……

:1000万あったらそりゃ潤ってるだろうよ

:開幕1000万でリスナーにマウント仕掛けてくるな

:声良いね


 まあ掴みはこんなもんだろう。

 新人VTuberとして挨拶をすませ、これで初配信として最低限の体裁は保てたはず。

 事務所で見守っているであろう代表への義理は通せたに違いない。

 なのでここからは自由にやらせてもらおう。

 小槌が満面の笑みを湛えた。


「さ、自己紹介はさておき……あたしがFMK運営から活動資金として貰った1000万の使い途を知りたいよね?」


:自己紹介終わって草

:草

:もうちょっとなんかあるやろ

:タイトル回収

:なにに使うんやろなぁ……

:くれ

:運営から1000万貰ったってどゆこと?

:1000万の話知らない人も見に来てるのか

:ここの運営が活動資金として新人Vに1000万支給した

:へー、太っ腹だな


「時間が惜しいからさっさと発表するけど、この後15時40分から出走予定のオークスに全額ぶち込みまーす」


:草

:草

:知ってた

:ですよねー

:全額は草

:言ってることやべえなこいつ


 ■


「全額ぶち込むってさ」


「この人頭おかしい」


 事務室から配信を見ていた俺は、小槌の発言に頭を抱えて机に突っ伏した。

 ワンチャン賭けても100万だけに抑えるとか、一鶴の理性が正常にブレーキを掛けてくれることを期待していたのだが、残念ながらこいつのブレーキは不良品だったらしい。アクセル全開で峠を攻めてきやがる。

 活動資金を競馬に使うな、などのようなツッコミコメントも見られるが、大半のリスナーは小槌の暴走に草を生やしているようだ。この草ってコメントマジでムカつくな。


『本日はバーチャル東京競馬場からお送りしております、一点の曇りもない晴れ模様。バ場状態は良ってところね』


 配信背景を競馬場の写真に変えてきた小槌は、小癪にもバーチャルという体をしっかりと守った上で配信を進行させていく。

 Vとしての初配信どころか、正真正銘人生で初めての配信だってのに手際が良くて、態度も堂々としており見ていて不安感はあまりない。

 器量はあるしなんでもそつなくこなせるのに、どうしてこんな暴走しちゃってるの……。

 何かやらかしそうなヤツだとは思ってたけどさぁ。


「現在の同接は2389人。新興事務所の新人VTuberとしてはかなり良い方かと」


 一緒に配信を見ている七椿が、眼鏡のズレを直しながら明るそうな話題を提供してきた。


「一時の同接のために支払う代償がデカすぎる」


 七椿の言葉に喜ぶべきなのかどうか、それすらも悩ましい。

 この同接が後にも続くのならそれでいいが、1000万円を競馬にぶっぱするなんてウルトラCはそうそう何度も使えるものではない。

 今いる視聴者は、きっと次もこれ以上の刺激を求めてくる。

 それに応えられなければ、同接は伸びるどころかきっと落ちていくだろう。

 いや、こうやって少しでも多くの人が来てくれているというだけでも喜ぶべきか。まずは知ってもらうところから始めなくては、伸びるも落ちるもないのだから。


「ドウセツとは、なんなのですか?」


 俺が自分で自分を納得させていると、話を聞いていた幽名が本日2回目の疑問を口にした。


「同接は同時接続数の略ね。配信を見ているリスナーの人数を指している言葉……はい、姫様そっちの手も出して」


「はい、どうぞ。ありがとございます瑠璃様、勉強になりますわ」


 幽名に業界用語を教える瑠璃は、やすりを使って幽名の爪の手入れをしてあげている。

 もう完全に従者やんけ。


 それにしても小槌の配信の進行の仕方は意外と丁寧だ。

 競馬にあまり詳しくないリスナーのためにも、オークスがどういう賞なのかとか、東京競馬場の特徴とかを色々と説明していっている。


 事前に台本を練っているな、この感じは。

 一体何時からこの配信を企てていたのやら。

 1000万を貰ってからか、オーディションの合格が決まってからか、それとももっと前からか……。

 いずれにせよ、始まってしまっているものを止める手立ては存在しない。

 俺に出来るのは次回以降への対策を立てることくらいなものだ。

 小槌が馬券の仕組みを解説している様子を見ながらそう思った。


『あ、ちなみにあたしは、今日のレースは馬単でいくつもりだから』


 う、馬単!?

 単勝じゃなくって!?

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