異世界の侵略的外来種ワースト1位
特に創作に取り入れろとかいうわけではないので、へぇー何言ってんだこいつぐらいに読んでください。
侵略的外来種:異世界転生者
先日、異世界転生者は文化や技術の発展に伴う悪影響に対し責任を持つべきかどうかという趣旨のエッセイを読んだ。
そのエッセイでの筆者の主張は転生者には一切の責任がないと主張していた。
これに関して普段から考えていたことがあったので拙いながら見解を述べようと思う。
また、今回の文章を書くにあたり参考元のエッセイを改めて読もうと思い、探したが、削除されてしまったのか見つからなかったため元エッセイの主張を誤解している個所があっても許していただきたい。
さて、タイトルにも書いた通り私は異世界転生者を侵略的外来種だととらえている。
よって転生者本人に責任はないが神にはある。
しかし、責任がないからといって文明人としてその影響については自覚的でなければならないと考えている。
侵略的外来種とは、人間の活動に伴って、意図する、しないに関わらずそれまでその生き物が生息していなかった場所に持ち込まれたもののうち持ち込まれた先の環境に適応し在来生物に悪影響をおよぼすものをいう。
転生物の作品において転生する理由を神の都合や、明確な背景が描かれなくともその存在を示唆する場合が多い。
例えば、勇者に魔王を倒してほしいといった場合はハブの駆除を目的として連れてこられたマングースと状況が近い。
また神のミスにより死なせてしまった、死に際を哀れに思い転生させる行為などは可哀想だからと飼えなくなったペットを逃がす行為と変わらない。
こうして異世界に持ち込まれてしまった転生者たちは何をするのだろうか。
現実の外来種の問題として様々なものがあるが生態系への影響としては「捕食」「遺伝子的攪乱」「競合」がある。
これを転生者で見てみると「捕食」に関しては多くの転生者が冒険者と称し現地の生物・モンスターを捕食や素材目的に乱獲している。
「遺伝子攪乱」についても現地に定着した転生者の多くがハーレムを形成することは広く知られている。
とはいえこれらに関してはさして問題ではないだろう遺伝子撹乱は転移の場合はともかく転生では起こりえないし、起こったとして人間に当てはめれば人権、人種差別になるそっちの方がよっぽど問題だ。
しかし「競合」を考えたときには大きな問題がある。
「競合」とは外来種が在来種の生息・生育環境を奪ってしまったり、えさの奪い合いをしてしまうことだ。
例えばザリガニが侵入した池では水草を全てはさみで切られザリガニしか住めない泥沼に姿が変わってしまう。
この自分が住みやすくするために環境そのものを変えてしまうという特徴を転生者も強く持っている。
元居た環境を再現しようと技術・文化・思想を際限なく持ち込もうとするのだ。
参考元エッセイでは挙げられていたのはチョコレートの普及による虫歯が例に挙げられていたが、それ以前に現代でもチョコレートの原材料であるカカオ農園での労働搾取は解決できていない大きな課題だ。
こういう問題は初動でケアできなければその解決にひどく時間を要する。
チョコを食べたい儲けたいという気持ちのみで再現し需要を高めてしまうと現地労働者に忍耐を強いる期間をいたずらに早めてしまう結果に繋がるかもしれない。
思想に関しても思わぬ影響を与える可能性がある。
別に転生者が思想家や哲学者であるわけではないだろうが、きっと前世では資本主義圏の中で生活していたであろう。
それが王政や貴族の影響量の高い封建社会が残る異世界に現れる。
そしてなぜか転生者は王侯貴族に気に入られるケースが多く王政を残したまま資本主義による産業の創出や、歴史にのっとり工場制手工業を導入し産業革命を行う。
すると貧富の差は現代以上に広がるかもしれないし、転生者の周りだけが発展するような状況は仕方ないとはいえ違和感がある。
また、以前に聞いた話だが自動車を開発したフォードの最大の発明は、効率化により会社の業績を伸ばし、この利益でもって労働争議によらず労働者の賃金を2ドルから5ドルに上げたことだと聞いたことがある、これによりアメリカに共産主義が広がることを防ぐ一因になったらしい。
上記のフォードの様な労働環境の改善を王や貴族、それに近い転生者が行うことで民衆が階級社会、身分の差というものを盲目的に受け入れたままになり民主主義が台頭できなくなる可能性もあるのではないか?
技術についても基礎研究などない便利さの結果だけを提供するやり方ではいびつに発展しまうかもしれないし、長い年月をかけて築かれてきた文化を思いがけぬことで破壊してしまうかもしれないし時にはクリスマスやハロウィンを意図的に持ち込むこともある。
クラシック、ジャズ、ロックやポップスといった地球由来の音楽が流行し現地で生まれるはずだった旋律が消えるかもしれない。
こういった環境の変化についていけなくなり命を落とす原生生物・重任は必ず出てくるだろうし転生者の活動で地球とは全く違う進歩を遂げるはずだった技術や文化の可能性を閉ざし異世界の多様性が失われてしまうことになりかねない。
もちろん今あげたような話は仮定の仮定の様な話だし転生者がもたらす益の方が多いこともあるだろう。
しかし私は同じ地球人として彼らにはこの罪にならない罪に自覚的であってほしいし、もしこれから転生する予定がある方がいれば知識チートをする前に一呼吸ついて考えてみてほしい。
そして神々におかれましては安易な異世界転生はやめて「入れない」「捨てない」「広げない」を徹底していただきたい。
とここまで長々と書いたが異世界転生は現地人によって行われる場合が抜けている。
その時はいま述べたものは全部忘れ思う存分好き勝手やってほしい、きっとそれも含めその世界の生態系だろうから。
古土様のこちらのエッセイがわたしの条件反射的な文より100倍良質であったのでご紹介します。
『Web二次創作小説史1995-2008 転生オリ主とトリップ夢主』
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