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ジェノサイドエンジェルス2

 ジェノサイドエンジェルスとの出会いは悪い物ではなかった。

 時代にあらがい、戦い続け、時に誤解され、時にやり過ぎて被害を出し、被害にも会ってきた女性たちの、奮闘ふんとうの結果だろう。

 それを、どうのこうの言う資格は俺にはないと思う。


 ただ驚いた事に、彼女たちが選んだのは12階層だった、ジャイアントゴーレムが出ない為、なんとかなる範囲ではあるが、8階層よりましな程度ではないのかと聞いてみたら。金属の需要じゅようは安定して常にあり、また魔法の鞄(マジックバック)が効果を発揮する場所なのだとか。

 出たなマジックアイテムの筆頭魔法の鞄(マジックバック)


魔法の鞄(マジックバック)の運搬能力は重量じゃないんだ!分かるか?重さじゃなく大きさなんだ!」

 ティアーズリーゼさんが手を腰にあて、仁王立ちでドヤ顔だ!

 すぐに俺やメリッサはその意味に気づけた!


「すげー!魔法の鞄(マジックバック)すげー!金属の運搬に最適じゃないですか!?」


「トールこれはうちも買うべきかもしれません!お宝として出たら儲かるのは当然ですが、運用すればさらなる利益が望めます!私としたことが盲点でした!!」


「えー!!もう分かちゃったの!?あたしなんか何度テレサに説明された事か!あたしももっと自慢して説明したかったのに!テレサー!テレサー!」


「落ち着きなさいリーゼ、優秀な後輩たちで頼もしいではありませんか。まだその価値を分かってない子たちもいる様ですし、あなたが覚えた事を説明してあげなさいな。」


 うん、さっきのテレサー!テレサー!辺りで色々と台無しだけど、そんなに説明したいなら他の連中への説明は彼女に任せよう。


 ここは12階層だ、俺たちフェアリーテールとガーフィッシュそれから彼女たちジェノサイドエンジェルスくらいしか居ない、普通のパーティーはやっぱり12階層で泊まったりしないのだ、その為、わざわざ邪魔しに来るやつらも居ない。

 俺とメリッサは、今のうちにテレサさんに価格などの確認だ!テレサさんが言うには運搬出来る量で価格がもの凄く上がるのだとか、ジェノサイドエンジェルスの所有する魔法の鞄(マジックバック)は最少クラスに分類されるが、それでも荷馬車に半分くらいは運べて、お値段金貨にして38枚だったとか。

 ただすぐに売れてしまうので、見かけたら即買うくらいでないとダメだと言われた!商人が買ってしまうそうだ、それなら値段も上がるのではと思ったが魔法の鞄(マジックバック)については、法外な値段を付けると商人ギルドが黙っていないそうだ!その為、値段が落ち着いているのに早いもの勝ちになるのだとか。

 正直、今回の一番の収穫はこの情報ではなかろうか?


「あたしたちが稼いでると女のくせにとか、ひどいやっかみがあった物だよ。そいつらをぐうの音も出なくしてやる為に、情報を収集し努力を重ねてきた結果さ!」


 どう話が進んだんだろう?最後は本当に自慢してるしティアーズリーゼさん、でもその格好で自慢されても、話に集中出来ないと思います!メリッサもいつの間にかそっちを見て戦慄してるし!

 テレサさんは一向にお構いなしだ、フランを捕まえてトップパーティーの『スマッシャーズ』の情報を得ようとしている。忘れていただけなのですぐに伝えたから、その事でからかっているわけではない。

 だがトップパーティーは、トップにいる理由があるとテレサさんは考えているそうで、そうやって分析していき自分たちの力に変えるのだとか。

 スポーツチームの分析班みたいだ!普通といえば普通だが、それすらもやらない冒険者も多い。うちも自分たちの鍛錬や技をみがく事に重点を置いていて、他のパーティーの分析までは手が回っていない。


「トールあなたは何か『スマッシャーズ』の情報持ってない?」


 テレサさんに聞かれたが、特に思いあたる物はない、訓練で相手してもらった時も特に癖のある特筆するべき物は何もなかったと思う。


「そう言えばディルダンの事で相談を受けましたね、一度『ガーフィッシュ』と一緒に話してみる必要があるかもしれませんね。」


「それって、私たちが同席しても邪魔にならない?」


「どうでしょう?でも『スマッシャーズ』が警戒を解いてくれると皆さんもやり易いでしょう?ダメ元で話してみてはいかがです?」


 俺はマイケルとアンドリューを呼んで、この間の話の返答をどうするのか聞いた。


「トールの言っていた案で良いと思うよ、俺も時間のある時に考えてみたんだけどね、うちのパーティーだと動きずらくなりそうだしね、アンドリュー『ガーフィッシュ』を勧めても良かったの?」


「ああ、うちでも話し合ってみたが、今色々と試して挑戦してるから、逆に今なら丁度良いかと思えたな。うちはベテランパーティーでもないし、相手も新人(ペーペー)じゃない、またギャーギャー言いながら最善の形を探すさ。同席については相手次第かな、俺たちとしては構わない。」


 アンドリューはジャクソンさんに意見を聞いて、今後のパーティーについて話し合ったあの夜から変わったと思う。リーダーとして成長しているのはもちろん、斥候せっこうとしても、今でも時々上手く行かないとヴィルに話しを聞いている姿を見かける。


「もし良かったら『スコーピオンズ』の分析を聞かせてもらってもいいですか?」

 マイケルは分析結果が気になる様だ、俺はどんな項目を確認しているのかそっちの方が気になる。


「あ〜、あそこはね、最悪よ?それでも聞く?」


 俺たちは思わず顔を見合わせてしまった、分析結果最悪のトップパーティーって一体何だろう?


 聞かなきゃ良かった・・・。


 どっかの暴力団かと思ったよ、幾つかのパーティーを傘下に収めて他人の上前をはねて探索する。やばくなったら荷物持ち(ポーター)を囮にトンズラするそうだ。

 奴隷も何人か連れていて、その人たちも闇市で安く買って、荷物持ちに囮にと使うのだとか。駆け出し冒険者も、そうやって使い潰してのし上がったのが『スコーピオンズ』というパーティーだ。

 おかげで最近は、新人も荷物持ちも『スコーピオンズ』に近寄らないし関わらない。


「もう噂も広まってるし、あのパーティーも終わりでしょう。衛兵もギルドも警戒してるしね、後は何か証拠が掴めれば処刑台に立たせれそうなんだけどね、中々尻尾を出さないのよね〜、スコーピオンの癖にね。」


「なんかテレサさん、手慣れてません?」


「馬鹿な事やってる奴らを破滅に追い込むのは楽しいわよ〜、癖になるわね!」

 頼もしさが行き過ぎて、やばい人の発言になってるよ!


「これは内緒だけどね、冒険者ギルドも信頼出来るパーティーに調査依頼とかする事があるのよ?冒険者は国家に属さない武力集団だからね、きちんと管理出来ないと領主様から目を付けられて介入されたりするし、兵士代わりにされても困るからね〜。かといって、冒険者が犯罪者集団になっちゃあ領主様も困るしね。」


 Gメンとかそういうやつだろうか?冒険者ギルドはそんな事までやってたのか、会社や企業とはちょっと違うとは思ってたけど、中々大変なんだな。


 体感時間か体調、もしくは積載限界で俺たちはダンジョンから出るわけだが、今回は意外と早かった様だ、空が明るい時間帯の帰還になった。

 太陽の位置からいって、まだお昼ちょっとすぎくらいだろう。


 冒険者ギルドに戻り、ギルド職員に頼んで『スマッシャーズ』に伝言する。こういった事はよくある様で、ギルド職員も快く引き受けてくれる。とはいえただで頼むのも悪いので大銅貨の1枚でも渡しておく。

 伝言板でも用意すれば良いのにと、精算を待ちながら話していたら、メリッサに識字率の低さを指摘された、こういう所が未だに慣れない、字が書けない人読めない人がいるという事が、中々理解出来ないのだ。

 ギルド依頼票とか討伐依頼とか実は字が読めると有利なんだそうだ。メリッサ以外は元いたパーティーなんかで習ったそうだ、俺とメリッサがほぼ完璧に読めて、ヴィルとフランが大体読める、マイケルが意外と読めなくて、我が恋人殿は壊滅的だった。


 もっと早く気づけよ俺!?


「サラは少しづつ覚えていこうな、分からなかったら俺やメリッサが教えるから!」


「トール俺も教えてくれ!うちには得意な奴が居ないんだ!」


「俺も俺も!俺も頑張って覚えるっすよ〜、ぜひぜひ!」


 『ガーフィッシュ』のアンドリューとレンが言って来る、『ガーフィッシュ』には読んだり書いたり出来る人が居なかった様だ、どうやって今まで冒険者やってたんだよ!?


「もしかして・・・、計算も・・ヤバイ?」


「愚問ですよトール!私でもトールの計算速度には敵いませんよ?」


 メリッサが自信満々に言い放つ!この世界の常識5ポイントー!あれ実はめっちゃお得だったんだな!?今、切実に欲しいよ!


「トールは計算も出来るんだね〜、すごいね〜。」


 コニーの称賛しょうさんにも、俺は自分の迂闊うかつさの方が勝ってしまい、まともに答えられない。

 字も計算も出来なくても、こうして生きて行けている、その事が不思議でしょうがない!だがこれが現実か。日本の、あちらの世界の教育がどれほどすごいのか、ここに来て始めて実感出来る。

『ガーフィッシュ』の面々の顔を見ると、ぼーっと授業を受けていた自分が申し訳なくなってくる。


 どうせ待ち時間で暇なので、計算を教えてみる事にした。とはいえ、教えるというほどの事はしないし出来ないので、九九を教えてみた、これなら道具も要らないし丸暗記の暗算だ・・・。


 教育・・・、俺には無理かもしれない。何故分からないのかが分からないのだ!小2の頃だっただろうか?クラスで合唱する様にして唱えていた気がする、正直よく覚えていないし、何をしているのか意識した記憶すら無い、困った・・・。


「少しずつ・・・覚えていこうか。」


 そんな事を言って、とりあえずお茶を濁しておいた。これは先生方の苦労がしのばれるな、いや、やる気のあるこいつらに教える方が、まだましかもしれない。




 その時、ギルドに新たな人物が入って来た。

 エルフだ!焦げ茶色の髪をワカメちゃんカットした、見事なプロポーションをした美人さんだ!後ろには2人の狐の獣人までいる!?

 珍しい種族の集団の登場にギルド内が騒めく、俺たちも一緒になって見物だ!メリッサ指をさすな!お前はそれに反応し過ぎだ!金髪さんがスゲエのは分かったから!身長も高いがあの服!!和服?なんて呼ぶんだっけあれ!?思い出せない!!クッソ〜!


 ん?小さい方の狐の獣人さんこっちを見てる?いや、あれは栗鼠りすの獣人かな?他の2人が美人な上にあのプロポーションだ、気づくのが遅れてしまった。

 栗色の髪と言うのだろうか?明るい髪色にクリクリとした大きな目、フランより少しだけ背が低いか?可愛いいで通用するレベルの子だが。


 俺?ああマイケルを見てるのかイケメンだしな〜!!

 こっちを指さして、エルフの女性となんか話してるが、ギルド内の男性陣がうるせえ!全く聞こえねえー!

 え?エルフさんを先頭にこっちに来た!?


渡辺わたなべくん?」

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