表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/374

ゴーレム!

 俺たちは市場で買ったフルーツを持って、ジャクソンさん宅にやって来た。


 今回もマイケルが代表してドアを叩いた、すぐに返事がありジャクソンさんが迎え入れてくれる、毎日会っているけど、こうして私服でお宅ともなると少し新鮮だ。

 お3方に挨拶あいさつしてフルーツを手渡したが、女性お2人が変な顔をしている?


「あんた・・・、誰?」


 お2人はサラを知らない様だ。俺が説明しようとすると、サラが前に出て来て声をはった!


「私ですよ!サラです!サラ グランベルトです!!」

 お2人は少し考えて、思い出した様だ。


「あの暗い顔をしたサラかい!?」


「これはまた見違えたね〜!急に綺麗になって!これはもしかして、恋ってやつなのかな?」


「分かりますか?」

 サラが、ほのかに紅い顔を押さえながら答える。


 マジか・・・、やっと仲間たちの攻勢から逃れたと思ったのに!サリーさんてば、大げさに驚いてるし、ジュリアナさんは、なんかわけ知り顔で頷いてる。

 あー!待ってサラ!実は・・・、とかこの人たちに話すのはマジでかんべん!


 ジュリアナさんの手の一振りで、意図を察した仲間たちによって俺は押さえつけられ。話しを止める事が出来なかった。

 仲間たちの見事な連携はうちのパーティーの誇りだけどね!俺を押さえる為に発揮するなよ!この裏切り者!!

 おかげで、ジャクソンさんのお宅に来て早々散々からかわれたし、お3方からはヘタレ呼ばわりされた。

 いや、確かにヘタレなんだけどさ!人に言われると、結構キツイ・・・。


 珍しく、救いはジャクソンさんからもたらされた!


 次から行く12階層の為にハンマーを頂きにうかがったのだった。

 前回来た時は、少し狭いなどと思って申し訳ない!何とこの家、実は奥に長いのだ!奥はまるで武器庫の様になっていて数々の棍棒が壁に飾られていた!

 数は30前後だろうか?色々な棍棒が壁一面に飾ってある!ここに来て、何故メリッサとフランの2人が棍棒をお土産にしようなどと言っていたか理解した。


 その1つをフランが指差し、メリッサに何やら言っている。

 ダークトレントの棍棒はすでに持っていた様だ、足元には幾つものハンマーが見えるが、俺を引きつけてやまない物がある!




 それは、目の前の鉄製だと思われる逸品いっぴんだ、長くて太い、1つ1つの(とげ)が俺の親指以上もある円錐形えんすいけいをしている!!どう見ても鬼が持ってる鉄棒(かなぼう)だ!我知らず、それに手を伸ばしていたら、横から声が掛かった。


「おーっと!そいつはやれねぇよ!?」


 俺が振り向くと、サリーさんが腕を組みつつ、こちらにバチッとウインクしてきた、あまりの恐怖に・・・、もとい気持ちの悪さに、いやいや!あまりの事に俺は動きを止めた。


「何しろそいつは私の相棒だ!他に代えがきかないからね!!」


 どうやら俺の目の前にある品はサリーさんの装備の様だ。

 俺は不思議と残念に思いながらも、その武器から手を引いた。だがそれを見たサリーさんは言ったのだ、持ってみるだけなら構わない、持ってみるかい?っと!


 俺はこれを迷わず承知し、この武器を手に持った!!


 この手にズシリとくる重量感!そして手に吸い付く様なフィット感!

 この身体が、血が、魂が沸き立つ様な高揚感!!まるでこの武器が俺の手の延長の様だ!?


 その時、俺の邪魔をする奴がいた。サリーさんだ、鉄棒に手をかけている。


「言っただろ?持つだけだって。こいつをここで振り回したら、家が吹っ飛んじまうよ!それはさせられねえ。」


 凄みのある声で言われ、俺は我に返った。どうやら俺は、凄い逸品いっぴんに魅了され、のまれていた様だ。

 いつの間にか棍棒を構えていた!?

 これが、この無骨な鉄の塊が持つ、存在感ってやつなのかもしれない。


 後で聞いたのだが、これがトニーさんやジャクソンさんが見つけた魔槍だそうだ、発見当時やたらと握り部分が長く、全体で2メートル近いこれは、槍だろうと思われていたとか。


 俺はどこが槍だ!?と思ったが、長さが長過ぎて、とても人が振り回す物だとは思わなかったそうだ。実際ヴィルやフランでは、持ち上げるのもままならない重さだ。




 この後、ハンマーを確認したが、ほとんどの物は軽くて話しにならなかった。

 一番重い物を片手で振っていたら、サリーさん以外の人たちに呆れられてしまった。ちなみにサリーさんには大ウケで、ご機嫌で自分のハンマーを使えと、さらに重い物を持って来てゆずってくれた。


 いいのだろうかと思い聞いてみたが、出産と育児に忙しいので、気にせずに使い潰せと言われた。その代わりに、子どもが産まれたら見に来る事が条件だと言われ、俺は二つ返事で了解した。




 居間に戻り、買ってきたフルーツと飲み物を頂きながらお喋りだ。

 薬の話しが出てきた、回復薬や染料などだ、魔法的効果のある染料の開発はこの辺りでは進んでおらず、もっぱらルミナス産の物ばかりだと言う。ただ、それですら染めの技術が未熟なのか、形にしてから染めないといけない欠陥けっかん所為せいか、ムラが出来てしまって、なかなか良い物が出回らないのだとか。メリッサのローブにムラがあるのはその為だそうだ。


 魔法薬、魔道具、魔法、どれを取っても最先端はルミナスの様だ。

 ルミナスは森林地帯の西にある大国で、森林地帯の小国家とはわけが違う、魔法を国防の(いしずえ)と考え、その様に政策をとっている様だ。


 それを知っているメリッサでさえ、ルージュの魔法や使い方は革新的、もしくは変だと言う。


 カリヤの街の冒険者ギルドでルージュが見せた洗浄魔法、本人は丸洗い洗濯乾燥魔法などとドヤ顔?で言っていた。

 水にマイクロバブルを送り込み、それで全身丸っと洗ってしまえという豪快な魔法だ、そして温風で乾かせば完了だが、念の為温風による肌や髪のダメージを回復魔法で治すという、何とも至れり尽くせりな魔法だ!

 分かり易くする為におけに水を入れて、そこにマイクロバブルを送り込み、数人に片手を入れさせた。数分後、両手の違いに、冒険者ギルドのお姉さまがたは狂喜乱舞した!それはもう恐ろしい光景だった!俺たちのパーティーが座ってた席でやり始めた所為せいで、俺やヴィルが弾き飛ばされる様な勢いだった!


 料理をすれば、かまどに、まきに、水に、と魔法を当たり前の様に使用するのだ。

 これを聞いて、ジュリアナさんも困惑顔こんわくがおだ。だが、これは高度な練習方なのだとメリッサは言う。

 例えば火の魔法をまきの代わりにしようとしたら、一定の火力で長い時間これを維持いじしなければならないし、かまどにしたって、物を置いた途端とたんに壊れる様では話しにならない、ここに精度や練度、そして工夫の余地があるのだとか。


 だが、これを聞いてジャクソンさんが気づいた、この間の丸焦げ肉はその所為せいか!俺も思い出して文句を言っておく。メリッサはこれが出来ればまきの代金が浮き、その上私の練習になる為、腕が上がるのだと居直った!


 仲間たちと緊急の会議だ!

 せっかくの肉が、黒くなっていたのは記憶に新しい!だが、今以上にメリッサが強くなれば、パーティーとしては当然プラスだ!薪代くらい惜しくは無い、惜しくは無いが・・・、焦げ肉は正直かんべんしていただきたい・・・。

 だが、そこにトドメを刺す奴がいた!フランだ!


「メリッサはまず料理を覚えないと、じゃないと何度でも焦がすよ?」


 !?そういえばそうだ!メリッサは実は料理が出来ない。このパーティーで一番料理が上手いのはヴィルで、2番目はサラだ!


 魔法以前の問題だ!!

 メリッサがめっちゃ顔をそらしているが、このままでは俺たちの胃袋が危ない!どうにか説得しなければ!何か何か武器(りゆう)は無いのか!


 救いの神はいた!ジュリアナさんが笑顔でメリッサに迫っている!あのメリッサが額に汗を垂らして怯えている。

 さすがだ!体育会系のごとき、パーティー内の先輩後輩の上下関係がはっきりと分かる図だ!!


「メリッサ。」


「は、はい!」


「あんたまだ料理が出来ないの?」


「そ、それは、その・・・。」


「私言ったわよね?勉強ばっかりじゃダメだって。」


「は、はい、おっしゃっておられました。」


 おっしゃって?もうメリッサの言葉がおかしいな、大丈夫か?しかも若干震えてないか?


「特にパーティーでの活動中は、パーティーの士気を維持するのに、美味しい料理はとても有効で、成功したければまず料理を学べって、そう教えた筈なんだけどねぇ。」


「はい、その、・・・教わりました。」


 マジか!?冒険者として成功するには、まず料理を作るところからなのか!?俺それ聞いてないよ?聞いても出来る自信がないけどね!!


 思わずヴィルを見ると、ヴィルは無言でサムズアップして見せた。

 なんて奴だ!お前はいつも、細かな所まで気の利く奴だ!俺も親指を立てて返しておいた。それを見てマイケルが微笑んでいた。

 サラの私も負けませんよ!っと言う主張に、メリッサ以外の皆んなは心温まる思いだった。


 これにより、同時進行で会得してみせろとの無茶振りで、ジュリアナさんも矛を収めた。


 肝心の12階層の話をせっかくなので聞いてみた。

 ゴルディさんの口振りでは、下手すると、この街唯一のゴーレムハンターのパーティーなので、話しを聞いておいて損はないだろう。


「ゴーレムに関してはマイケルやヴィルにも聞いたんですが。出来ればお3方にも、何かコツなどあればお聞きしたいのですが?何かありませんか?」


「ゴーレムは硬えな!ただそれだけだ!お前なら何の問題もないな!!」


「そうですね、あのハンマーを片手で扱う様な方に、私では何と助言すれば良いのやら。」


「まあ、あれだ!トールの場合はとにかくぶっ壊せ!!それが通用する!後は周りの奴らは近づくな、だな!巻き込まれるからな!トールを暴れさせた方が、皆んなで叩くより早いかもしれん。」


 何か酷い言われ様だ!なのに皆んな腕とか組んで、ウンウン頷いてるし!

 俺はオーガかなにかか!?


「後はそうだな、15階層のタイタンに挑むのは止めとけ!あれは桁違いだ!」


 その後も15階層のタイタンなるモンスターの話をしてくれた。

 12階層〜14階層はそう変わらず、3メートルくらいのゴーレムが主体の12階層。13階層になるとジャイアントゴーレムなる5メートル級が加わり、石蜥蜴(ストーンリザード)というモンスターも稀に見る。

 ハンマーだけだとこの蜥蜴とかげのスピードや尻尾、そして噛まれると毒が厄介だが、何人かが普通の武器を持っていれば、問題なく対処出来るそうだ。石の様に硬いわけではなく、石に擬態ぎたいしている為石蜥蜴(ストーンリザード)と言うそうだ。


 14階層になるとジャイアントゴーレムが主体になり、ゴーレムが減る。その代わりにガーゴイルが出て来て、これがちょっと面倒くさいとの事だ。

爪に毒を持ち、手には石の槍、羽根があって飛ぶ事もしょっちゅうあるのだとか。その上火の球(ファイアーボール)の魔法まで使い、不利とみれば逃げて行くので、対処は決めておいた方がいいと言われた。

 ただ奴らの火の球(ファイアーボール)の魔法は、メリッサの火の矢(ファイアーボルト)に劣るので、それ程警戒しなくても何とかなるだろうとの事だった。



 そして15階層だ、この階層はとにかく広い!ちょこちょこと遺跡の破片が落ちているけど、それぐらいで、後はモンスターがタイタン一体しか居ないそうだ。

 タイタンとは15メートルくらいのゴーレムで、見上げながら戦う事になるとジャクソンさんが教えてくれた。しかも身体が層になっていて外の部分を壊すと軽くなるのか動きが速くなるのだとか!やってられないな!


 その為、足を完全に壊してしまおうとしたが、中の層は硬くて傷を付けるのがやっとだと、悔しそうにジャクソンさんが話してくれた。

 このタイタン討伐はジャクソンさんが指揮したのだが、結局失敗に終わったのだとか。今ではタイタンは放置して先に進むのが定石だ。

 広い階層に1匹居るだけなので簡単に避けて通れるし、自分からはほとんど襲って来ない。下の階層に挑む者の休憩所や、拠点扱いを受けている。


 未だ討伐されないモンスター、その為、冒険者ギルドが畏怖(いふ)と敬意を込めてこの個体に名をつけた『タイタン』と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ