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転校初日

作者: YAMAKAZ

 給食を食べ終わった後の昼休み、更衣室で体操服に着替えた琴里は、どきどきしながらトイレに向かった。

 中をのぞくと、同じ学年の子が、何人かおしゃべりをしたり、トイレを済ませたりしていた。

 琴里は、ぎゅっと唇をかみしめて、うつむいたまま運動場に向かった。


 彼女は西本琴里、小学5年生。今日転校してきたばかりである。

 内気な性格ではないが、転校してきたばかりということもあり、まだ友達ができず、休み時間は一人でおとなしくしていた。それに、前の学校では、休み時間に友達どうしで誘い合ってトイレに行っていた彼女にとって、来たばかりの学校で、知らない人の中、一人でトイレに行くことは、とても勇気のいることだった。


 琴里は、今日学校に来てから、一度もトイレには行っていない。小さな勇気が出せずにいた。水筒にお茶を入れて持ってきてはいたが、できるだけ飲まないようにしていた。それでも、3時間目くらいになると、トイレに行きたくなるのは自然の流れである。

 高学年なので前押さえこそしないが、授業中は足を組んだり、体をひねったりしながら、我慢していた。休み時間は、トイレを見に行き、誰もいなければトイレを済ませようと考えていた。しかし、これまでトイレに誰もいないということはなかった。

 給食時間になると、我慢もだいぶきつくなってきた。同じ班の人から前の学校の話などを聞かれながら、意識はトイレに向かっていた。それに、給食には牛乳がついてくるため、水分をひかえるということができない。大きな不安を感じながら、給食時間を過ごしていた。

 5時間目は運動場で体育のため、昼休みに着替えることになる。琴里は同じクラスの子がいる中、更衣室のすみで着替えをすませた。着替えている間も、自然と足を交差させたり、足踏みをしたり、前屈みになったりしていた。


 結局昼休みにもトイレを済ませることができず、体育の時間を迎えてしまった。

 クラスの体育係が前に立って、準備運動を進める。琴里も、かけ声に合わせて準備運動をするが、どうしても足ぶみをしてしまっていた。体操服のハーフパンツから伸びる足が少し震えている。

 準備運動が終わると、先生が前に立って、今日の説明をしている。琴里は、体育座りで唇をぎゅっとかみしめて、前を向いている。その足はぴったりと閉じられている。しかし、先生の話は頭には入ってこない。じっとしているのもつらいくらい、琴里の尿意は高まっていた。

 転校早々、クラスのみんなの前でおしっこを漏らしてしまうかもしれないという焦りと不安で、琴里の目には涙がうかんでいた。

 今日の体育は50m走。先生の説明が終わると、スタート位置に移動するために、全員立ち上がった。琴里もいっしょに立ち上がるが、立った拍子に尿意が高まり、少しちびってしまった。琴里は焦ってぎゅっと前を押さえてしまった。慌てて手を離したが、みんなが見ているような気がして、顔を上げることができなかった。

 スタート位置に移動すると、出席番号順位並んで、自分の番を待った。琴里は転校生ということで、出席番号は一番最後の37番。クラスのみんなが先生の合図でスタートするのを、最後まで見なくてはいけなかった。しかも、先生はゴールの所にいるため、「トイレに行かせてほしい。」というためには、そこまで行かなくてはいけなかった。前の学校ならともかく、今の琴里にはとてもできることではなかった。

 10番くらいの子がスタートしたあたりで、琴里のお腹がびっくとへこんだ。慌てて両手で前を押さえたが、今度はさっきよりもたくさん出てしまった。押さえた手のひらにも湿り気を感じた。下を見ると、ハーフパンツの裾から水滴が落ちていた。琴里は、水滴の跡を足で消した。周りの子は気づいていないようであるが、限界なのは誰が見ても明らかだった。

 25番くらいの子がスタートしたところで、足踏みなどをしていた動きが止まり、琴里の手がぎゅっと前を押さえた。琴里は下を向いたまま顔を上げることができなかった。少しずつ体が前に傾いていく。

 琴里の前を押さえている手から水があふれ、足下に落ちていく。ハーフパンツの裾から足を伝って水が流れ、足下にたまっていく。水の落ちる音に、周りにいたクラスメイトが振り向き、琴里と足下の水たまりを交互に見つめている。

 紺色のハーフパンツの色を変え、足を伝って流れ、足下に水たまりを広げていく琴里のおしっこ。しばらくして全てを出し終えても、琴里は水たまりの上から動けずにいた。うつむいて立つ琴里のハーフパンツからは、まだ水滴が落ち続けていた。


 おもらし事件から1ヶ月後。琴里には休み時間にいっしょに過ごすことのできる友達もでき、当時とは比べものにならないくらい明るくなり、楽しく学校生活を送っていた。


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