表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Fast moon&Beauty sun

作者: 麗韻

それは帰り道のことだった。

俺は駅から歩いて家に帰っていた。

俺自身歩くのが速いのかどんどんひとを追い越していた。

たくさん知り合いにもあった。

そんななか歩くのだけは速いと自他ともに認めている自分と同じくらいの速度で

歩く二人組がいた。

後ろにいて、確認できないが、声の数からして二人だ。気にはなるけど、確認す

る気はないしな。

「覚えてるかな・・・・。」とか、「大丈夫。」という言葉がとぎれとぎれだが

聞こえてくる。

たまに俺の名前も聞こえてきた。

「月君だったら。」とか

「成瀬って子――。」

と、こんな具合に。

しかし懐かしいあだ名だ。成瀬(ナルセ)槻也(ツキヤ)が俺の名前だ。

小一の頃、「槻」が書けなくて代わりにならったばかりの「月」を書いていたら

そんなあだ名を付けられた。

だけどいつの間にかそのあだ名はなくなっていた。


別に嫌いなあだ名でもなかったから、無くなってちょっと寂しかったけどな。


「あの・・・すいません・・。」

気の弱そうな声がした。

こんなんで謝られたら罪悪感すげーよな。

しかし会話しながらこの速度は疲れるんじゃないか?

「ぁ・・・すいません!!」

ほらまた謝ってる。

あれはきついって―

『ドカッ!』

とか思ってたら突然裏から衝撃が。

そのまま前にバランスを崩すもなんとか堪える俺。

あっぶね〜。

「ほら、ひろち「いきなり何すんだよ!!」

とりあえず俺はすぐ裏の長髪のババア―クラスメイトの千寛(チヒロ)に蹴られた

らしい。なので怒ったいきなり蹴るとは。

どんな教育を受けているんだ!!

いや、年齢は俺と同じで十八くらいだろーけど。

いきなり他人蹴飛ばす奴はババアでいいと思う。

「呼び掛けられたら反応くらいしなさいよ!!!」

逆だろう。お前はキレちゃダメだろう。

でも、呼び掛けられたのか?

「いつ?」

「あんたねぇ!!人がずっと『すいません』って呼んでたの気付かなかったの!?」

「あれは謝ってたんじゃないのか?」

「ちがいます!!あんたに用があってこの子が呼び掛けたんです!!」

そういって前に突きだされたのは肩に掛かるくらいの黒髪で、眼鏡をかけた娘だ

った。

正直に眼鏡をとれば美人じゃないのかなってくらいの人だった。

前に出されたらすごくおどおどしている。

そりゃもう、話し掛けづらいくらいに。

おどおどおどおどおどおど「なに?」ビクッ!!

話し掛けられた途端固まってしまった。

「おーい。」顔の前で手を振ってみるも反応なし。

変だなと思って覗き込んでみるとじわじわと顔が紅くなっていって。

熱あるんじゃないか?と思って額に手を当てると、案の定かなり熱かった。

「なぁ・・。この娘大丈夫か?熱あるみたいだけど。」

本気で不安になってきた俺は、矢野に聞いてみた。

「あんたって・・・結構鈍感?」

「んなわけないだろ、結構敏感なはずだ。」

そのはずだ。人が近づいてくればだいたい分かるしな。

「・・敏感って・・その返事なあたり鈍感だわ。ひーちゃん諦めな。」

なんか完全に呆れられたようだ。

まぁいい。

「とりあえず熱はないんだな。」

「えっ・・はっ・・はい。」

眼鏡の娘―ひーちゃんは、首を何度も縦に振った。


「・・・で?本題は?」

「えっと・・・あの・・・・そのですね・・・。」

いい加減嫌になってきた俺は、言ってやることにした。

「いい加減その演技やめてくれない?相田(アイダ)月日(ツクヒ)さん。」

「えっ・・・・・うっそ。何で私って分かったの?」

雰囲気も口調もガラリと変えていった。

相田月日は最近からテレビにも出るようになった期待の若手女優である。

「だから俺は敏感だっていったろ?」

えっへんと胸をはった。すげーだろ!って感じで。

「・・・なんかそこはかとなく心配だわ。」

妙なところで頭の回転早いのよねー。そういって矢野は考えるような仕草をした

「ひろちゃん、ありがとね。もう良いよ、ばれたし。」

「ん、わかった。あとは一人でしっかりね〜。――あっ!結果はしっかり教えてね!!

」そういって千寛は去っていった。

なんだったんだ。

あれ。思わずボーゼン。

「お金はカフェにいる帽子被った人にもらってね〜!!」なるほど雇われていたの

か。そして、フフフと小さく笑ったあと、月日が言った。

「知り合いなのに相変わらずちゃっかりしてるよね。」「知り合いなのか??」

「ばれないようにってことは芸能界関係じゃないんだな。なんのようだ?」

そろそろ本題に入ろうと、急かすように俺は言った。何で急かすかって?早く帰

って寝てーもん。

「えっと・・・だからさ・・・日野(ヒノ)朝奈(アサナ)って知らない?」

意を決したという感じで告げられた。

そう言われて、なにか確信があっようだから正直に答える。

「知ってるよ、それがどうかした?」

日野朝奈は昔引っ越していった幼なじみだ。懐かしいな〜とか思った。

「まだ覚えてる?」

「覚えてるよ。」

ちょっと心残りがあるからな。

「そうじゃなくて・・・・約束の方。」

「ちょっとまて。なんであんたがそれを知ってる?」

「わかんないかな〜?」

「なんの――」

なんのことだ。そう言おうとして気が付いた。

月日が朝奈本人だってことに。

「お前・・マジで来たのか。忘れてくれてもよかったんだぞ?俺なんかより良い

奴がより取り見取りだろ。」

おもわず気を遣ってしまう。

だんだん頬が紅潮していくのがわかって、らしくないなとか思ったりする。

「そうだよ。だから、月君を選んだんだよ。だから会いに来たんだよ。」

それくらい察してよ。とでも言いたそうな膨れっ面をしている。

向こうも顔が真っ赤だった。

昔の約束とは、別れるときになかなか泣き止まないこいつに、また会えたら付き

合おうと告白したこと。

真剣に言ったんだが状況が状況だった。

泣き止ますための約束だと思われたと思って諦めていた。

まさあ本当に来るなんて・・・。

「ホントにいいんだな?後悔しても知らないぞ?」

「うん。」

はぁ。と溜め息を吐きながら続ける。

言いたいことが伝わってないから。

「くどいようだけどこれだけは言っておく。俺は昔の俺とは変わってる。話し方

とかだけじゃなくてな。」

「・・・・。」

「いつかそんな違いを見つけると思う。それでも大丈夫って言えるか?」

槻也は少し躊躇ってから付け加える。

「俺は・・期待して裏切られたくないんだ。」

臆病者の答え。最後の、最大の本音。

それを聞いたとき、朝奈は考える。

そして少しあとに答える。

「それでもいいよ・・・月君が友達からって思うならそうでもいいし、思った通

りにしていいって言うなら付き合いたい。昔だって知らないこともあったと思う

から。」

太陽の日は夜の闇に囲まれた月をやさしく照らす。

闇から解放された月は、燦然と輝く闇のなかとは違い、儚くその姿を映しだす。


槻也の闇は朝奈の言葉によって。取り払われた。

「じゃぁ改めて言わしてくれ。」

そして少し躊躇したあと続けた。

「俺は、日野のことが今でも好きだ。」

そんな言葉に顔を真っ赤にして朝奈は言う。

「そう言うのって普通、状況からしてこっちじゃない?」可笑しそうに笑いなが

ら。

「じゃぁこっちは言わせて。――私と・・付き合ってください」笑いながらいっ

た。

幸せそうに、本当に幸せそうに。

西の空には太陽が、東には月が、二人ことを見守るように輝いていた。

「じゃぁ最後は俺からだな。」

「?最後って、これで終わりでしょ?」

訳が分かっていないようす。こんなんでほんと芸能界渡っていけるのか?って思

うほど無防備な顔だった。

それに、こうやって気を逸らさないといけないくらい可愛い顔だった。

「これだよ。」

お互いが向き合うように抱き寄せ、朝奈の顔を上げてみた。それで察したのか。

「待って待って待って!!まだ心の――んんっ〜〜!!」

心の準備とかしてたら時間が勿体ないんだよバカ。



感想・アドバイスがあったらお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すごく良かったです。 昔の約束っていいですね。 期待されるが不安っていうのわかります… すっごくすらすらと読めました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ