第7話 鍛冶屋の娘
母屋は西洋的な屋敷に見えたが、実は作業場と一体化した造りになっていた。その作業場、見るからに鍛冶屋のそれである。大きなフイゴに、赤々と燃える炭。見たところ木炭のようだ。
「ここは鍛冶屋か?」
「そうよ、私の工房」
何と、"残念なお嬢様"は鍛冶屋さんだったのか。オッチャン、びっくりした。"残念なお嬢様"、重い槌を振るうようには見えないな。体型的にも、筋骨隆々なものではなく、グラマラスではあるものの、細身の良いスタイルだし…。いや、そんな目でみたらいかんな。今の時代、スタイルのこと言おうものなら、即座にセクハラ扱いされる…。て、ここもそうなのかな?
「で、アンタが屋根ぶち抜いてくれた納屋には玉鋼なんかのストックがあるの」
だから頭の下がゴツゴツしてたのか…。鉄の塊の上に転がってれば、そりゃ痛いわな…。
「どんなモノを打つんだい?」
「やってるのは、ほとんど鍬や鋤なんかの農機具の修繕よ。刃物系はせいぜい包丁くらいかな?剣なんかは魔法で生成するからね、最近は…。それで、話できそう?あ、お茶いれなきゃね」
魔法?更に混乱するワードが出てきやがった…。こりゃ転生、もしくは転移確定だな…。自分の頭の中を整理する意味も込めて、話してみるか。状況を見ながら、スマホや転生の話をしてみよう。このキーワードを無視して、説明しきそうにないし…。
「少し長くなりそうだけど、順を追って話そう。これから話す内容を信じるか否かは、貴女にお任せする」