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第284話 それぞれの想い

「…あの、マモル様…」


 おずおずとワシに声をかけてきたのはハンナだった。


「どうした?」


「私にクロードさんのフォローをやらせてください!」


 意を決した面持ちでハンナが言い放った。一瞬、何を言われたのか理解が追いつかず、言葉が出なかった。


「え、いや、別にクロードがいいなら問題ないけど…。でも、何で?」


 意図がわからない…。クロード自身も驚いていた。


「クロードさんはお1人で各国を回られますよね?話し相手と言いますか、お供がいた方が、気持ち的にも楽になるかと…」


 モジモジと顔を赤らめ、クロードをフォローしたい理由を言ってきた。…と、その時ようやくハンナの気持ちが分かった!


「ハンナ、頼めるか?クロード、彼女を一緒に連れて行ってくれ。確かに1人で行くより気が楽になるだろうし、元々同じ騎士団にいて、気心も知れてるだろ?」


「はい、構いません。ハンナ、よろしく頼む」


 ハンナの笑顔が嬉しそうに弾けた。まさかハンナがクロードに想いを寄せていたとはねぇ…。いかんな、ワシもかなりのニブチンだな…。オッさんになった証拠か…。となるとロゼッタは…?と見回すと、ライアンの傍らにいた。なるほどね。これでクロードとライアンに、酔って絡まれることはなくなりそうだな。うまく行くことを祈るばかりだ。



*  *  *



「ガイナム様に親書を作成頂く件ですが…」


「あぁ、その件の説明はワシからするよ。コッチはお願いする立場だからね。マリアと一緒に、ガイナム卿にも各国に出向いて頂かないとならんから、その説明もしないとな」


 朝食を食べた後の一服の時に、クロードと話をして、王宮に出向く旨を伝えた。マルタに留守を頼み、そのフォローをアランとティナに依頼した。


 ガイナム卿の下へは、ヒルデさんが一緒に来ることに…。嫌々ではあるが、天界に行く前、彼女が同行してガイナム卿に説明したからな。その後の段取りの説明もしやすいだろう。


◇◇◇◇◇


 自室に行き、王都に出向く準備をしているところに、ヒルデさんとルナが来た。


「アルテミスがマリアに付いて行くそうよ?」


「え、急にどうした?」


「うん、マリア1人だと、何かあった時に大変でしょ?万が一戦闘になった時、ガイナム卿を守りながらだと、防戦一方になっちゃう…。そのフォローのためだよ」


 ルナも考えているようだな。確かに彼女の言う通りだろう。


「分かった。そうしてくれると助かる。けど、くれぐれも無理はするなよ?」


「分かってます!マリアと一緒に準備するね!」


とニッコリと笑顔を見せ、部屋を出ていった。その姿を見送りながら、ヒルデさんが


「みんなそれぞれが、自分のやるべきことを考えてるわね。イリスもマルタとティナと一緒に、新たな魔法を開発しようとしてるみたいだし。タマモもその手伝いをしてるわね。ヒトもそれぞれに考えてる…」


「…それはいいんだけど、アフロディーテはどうしたの?」


 ヒルデさんの返事が、一息遅れる…。


「…今、私の部屋にいるわ…。あの子と話をしてる…」


 あの子って、半妖のサーシャか⁉︎


「…大丈夫なのか?」


「…2人にしてほしいと言ってきたのは、サーシャの方よ…。敵うわけはないから、話をするだけって…」


 そんな話をしていたら、部屋のドアがノックされた。ドアを開けると、サーシャの手を引くアフロディーテがいた。


「ブリュンヒルデ、話は終わりましたよ。私はこの子を連れて、一度天界に戻ります」


「天界に、って、この子は行っても大丈夫なのか?」


「半妖とはいえ、ブリュンヒルデ、いえヒルデの加護が付いているから、なんの影響もないわ。向こうでエウリュアレたちに面倒を見てもらいます。どうせ私は一緒には行けないし…」


 どうやら、拗ねていらっしゃる…。


「いきなりアフロディーテ様がサーシャを連れて天界に立ったら、周りの者たちが卒倒しかねないわ。マモル、王都にはアフロディーテ様と行って。そして、『全知全能』の権能を授かったことを伝えなさい。私が行って、後からアフロディーテ様と権能のことを伝えるより、話が早く済む」


 いや、それはそうなんだが…。まぁ、仕方ないか…。アフロディーテを見ると、満面の笑みを浮かべている。


「えっ?私が行っていいの?」


「そのかわりと言ってはなんですが、くれぐれも、女神として、最高神としての威厳は保ってくださいね…?」


「それは当然です。けど、今や最高神はマモルでしょ?」


 まだ、それは伏せておきたい…。するとヒルデさんが


「マモルは権能は授かって、更に『神に近い存在』になった程度にしておきたいわね。流石に天界行ってきました、帰ってきたら神様の最高位に就きました、ではヒトの世にはインパクトが大きいわ。だからまだ伏せておくのよ」


「分かりました。ヒルデの言う通りにします。私も行くなら着替えないといけないわね。ヒルデ、手伝ってちょうだい」


「…あたしゃメイドか…?」


 2人が部屋を出ようすると、そこにひょっこり顔を出した者がいた。


「あの〜、私がお手伝いしましょうか…?」


 そこにはエウリュアレがいた…。


「え?なんでここにあなたがいるの?」


 驚いたようにヒルデさんが聞いた。


「…実は、先日のスタンピードの騒ぎの時に、イリス様をお手伝いしていたんです。神馬の手配など…。で、そのままマリア様のお宅にいたんですが、先程イリス様から


 『すぐに領主館のヒルデ様のところに行くように』


と念話がありまして…。急いで来た次第です…」


 イリス…。エウリュアレに対する扱いが雑過ぎ…。それに、領主館ってこんなに出入り自由だっけ?


「ちょうどよかった。エウリュアレ、アフロディーテ様の支度を手伝ってちょうだい。あと、王都にも着いて行って」


 ヒルデさんも雑だなぁ…。なんの説明もせずに…。ん?まさか、イリスからの念話で説明されてるのか…?いろいろ気になることはあるけど、いちいち突っ込むのはやめよう…。疲れる…。

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