第261話 山岳神殿
イリスが神馬を集め、馬車も用意された。一部は1頭引きの戦車のようだが…。いちいち突っ込むのはよそう…。
戦車は2人乗りが2台。アランとティナ、ロアンとミーシャが乗る。2頭引きの馬車が2台。これにはヘパさん、ヒルデさん、イリス、そしてワシで1台。もう1台には、マリア、玲ちゃん、マルタ、アスクレピオスが乗った。他のメンバー、ルナ(アルテミス)、タマモ、ヘカテ、マイアは留守番となった。さすがに乗れる馬車がないから仕方なく…。
ワシらヒトは、『天界の傭兵』のような立ち位置で、武器を携えている。アーマーなども着けて、戦装束だった。神様3人と神使であるアスクレピオスは正装。全員およそ山に行く格好ではない…。それをいうなら馬車や馬も同じだ。
出発して2時間ほど経った。結構飛ばしているはずなのに、あまり揺れを感じない。外を見ると…。そりゃ揺れないはずだ、空を飛んでた…。ほぉ、飛んでるかぁ…。そりゃ神馬だもんなぁ…。空も飛べるよなぁ…。高所はあまり得意じゃないんだが…。外、見なきゃよかった…。
◇◇◇◇◇
山の少し手前で停止した。やっと地に足が着く…。
「ん?なんで止まったんだ?(助かるけど)」
「いくら神馬でも、少しは休ませないとならんからな」
ヘパさんが馬車から降りてノビをする。アランとティナは楽しそうだが、もう一方のカップルは…。ロアンがグロッキーだった…。
「ロアン、どうした?気分が悪いのか?(ワシもだけど)」
「…だって、空飛んだんですよ!………やべっ、しゃべると吐きそう…」
しばらくはダメだな…。他に目をやると、アスクレピオスが神馬に何か食わせていた。近くに行き、話しかけた。
「何を食わせてんだ?(気分よくなるならワシも欲しい…)」
「馬の体力回復用の木の実ですよ。一粒で体力を8割程度回復します」
「ヒトも食べられる、気持ち悪さを取るのはないか…?ロアンがグロッキーだ…(ワシも)」
「はい、これどうぞ。一粒で大丈夫ですよ」
試しに食った…。うわっ、まず!ニガ!吐き出しそうになった。するとアスクレピオスが
「吐いたらダメですよ!…噛んだんですね…。ごめんなさい…。噛んだらダメです。口の中で溶けるのを待ってください。マモルさんは、そのまま飲んだ方がいいです…」
うぇ…。口の中に苦味が充満してる…。水をもらって、なんとか飲み込んだ。
そのままロアンのところへ行き、噛まないように伝えて口に入れさせた。アメを舐めるように、口の中で転がしている。
「…絶対噛むなよ…?…噛んだら苦いぞ…。気を付けろよ…」
それにしても、アスクレピオスは女性だということがバレたからか、物腰、人当たりが柔らかくなったな。今までは意図的に中性的(男性寄り)に思わせていたか…。理由は何だろうな…。
◇◇◇◇◇
「さて、そろそろいいか?あと少しで目的地だ。そうすれば、しばらくは地に足が着く。あと少し我慢してくれ」
ヘパさんの号令で進み始めた。予定ではあと1時間半ほどらしい。神馬のスピードとは…。考えたくはない…。
目の前に見える山々は高く、山頂は雲で見えない…。どれだけ高いんだろう…。チョモランマ級か?そんなことを考えていると、
「高さは分からん…。未だに少しづつ隆起しているからな…。この天界、未だに分かっていないことは多い。もっとも、問題はないから調査すらしていないが…」
とヘパさんが教えてくれた。相変わらずコイツは人の頭の中を読むな…。まぁ、言っても言わなくても構わん話だし、問題ないか。
「…すまんな、つい癖でな」
何食わぬ顔で言いやがった…。しかし、「すまん」と言いつつ、悪いと思ってはいない…。
◇◇◇◇◇
少し寝たのか…?気付いたところで、神馬の足が止まった。目的地に到着したようだ。
馬車を降りて、目的地だと示された方向に目を向ける。そこで見たものは、洞窟とはかけ離れた、かなり異質なものだった…。
「ヘパさん、これって、何?」
「ん?神殿だな。主にはそれ以外に見えるか?」
「いや、それは分かってる…。ワシは『近くに大岩がある洞窟』と言ったが…?」
「元はそうだった。ここは『ガイアの神殿』と呼ばれていてな、今は亡き地を治める神、私たちの始祖を祀った神殿だよ」
そう言ってヘパさんとヒルデさんが、神殿に向かって歩き出した。ワシらもその後に続く。近づくにつれて、その大きさに圧倒される。まるで『アークを探す冒険映画』に出てくる遺跡のような建造物だ。中には、大岩が転がるような、侵入者を阻む仕掛けがありそうな…。そんな雰囲気だ。
アスクレピオスも初めてなのか、ワシらと同様に感心しながら周囲を見廻していた。ロアンなどは「スゲェ…」と連呼しながら歩いてる。よそ見してると、何かにぶつかるぞ…。あ、ほら転んだ…。




