第244話 屋敷にて…
ライアンを伴って、サハテに(ガイナム卿に)用意された屋敷に向かった。クロードはガイナム卿との話を済ませてから合流するとのこと。
屋敷には玲ちゃんとルナがいる。多分、暇を持て余してることだろう…。ワシらだけでは広すぎる…。
「ただいま〜!」
とホールに入ると、執事服を着た初老の男性と、3人ほどのメイドらしき女性たちがいた。
「「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」」
「何だ⁉︎ いつからここに?」
「本日より、ガイナム内務卿からのご指示で参りました。執事のラルフと申します。今後ともよろしくお願いいたします」
執事のラルフを先頭に、後ろに並んだメイドたちも頭を下げた。しかし、爺さんも手回しがいいこと…。
「なるほど、そういうことですか…。分かりました。いろいろお世話になります」
と頭を下げると、執事から声がかかった。
「主人が使用人に頭を下げるなど、必要のないことです」
これにはカチンときた。
「私は、手間をかけることになるかもしれんから、お願いをするという意思表示でしたことです。それを必要がないと切り捨てるなら、あなたの世話になるつもりはない。出て行ってくれて構いませんよ?そもそも、世話をしてくれるというか、手伝ってくれる者はいますから…」
「…いや、ガイナム卿のご指示ですので…」
「内務卿には私から伝えます。『上下関係なく、礼儀を弁えない者は必要ない』とね」
「差し出がましいことを申し上げ、失礼いたしました。ご主人様のお気持ちは分かりました。誠心誠意、お世話させて頂きとうございます」
と、ラルフが少々慌てながら深々と頭を下げた。メイドたちもオロオロしている。そんな時に階段から声がした。
「マモルさん、何をいじめてるですか?大人げないですよ。ライアンさん、いらっしゃい。ゆっくりして行ってくださいね」
玲ちゃんとルナ、アランとティナの姿があった。
「アラン、話がある。ライアンと、後から来るクロードも含めて話をしたい。玲ちゃんたちも一緒に…。ホントなら、ロアンにもいてもらいたいんだがね…」
「呼びました?」
階段の上に、ロアンとミーシャの姿があった。
「お前、何でいるの?エクランドの騎士団は誰が見てるんだ?」
「オヤジ殿が見てくれてますよ。レイんトコのね」
何をしてるんだか…。ロアンには団長の自覚はないのかな?玲ちゃんまでもが、
「お父さんとランスさんの2人で面倒見てくれてるみたいよ」
と呑気に言ってる…。まぁ、この際いいか。
「ラルフさん。エールをもらえますか?あと適当に摘める物を…」
「かしこまりました。すぐご用意します!あちらのダイニングにお入りください」
メイドたちに案内されて、ダイニングに入った。広い…。デカい…。コリャ声を張らないと聞こえないな…。
各々着席したところにエールが配られる。まずはエールで喉を潤した。
「クゥ〜!ウメェ!」
思わず声が出た。メイドたちがツマミを配膳しているところでラルフが問いかけてきた。
「あの、先程のランスとは、エクランドの騎士団副団長だった、『槍のランス』ですか?」
「そうですよ?ご存知なんですか?今は領主館で執事をしてもらってます」
「…ランスは私の兄です…」
「え⁉︎ そうなんですか?」
言われてみれば似ている気がする…。
「どうりで…。どこかでお見かけした気がしてたんです」
アランと、それに同意するティナ。ワシも似てるとは思ったが、カチンときたことで流してた。と、このタイミングで、遅れたことを詫びながらクロードが合流した。これを機に世間話は打ち切られた。
「…で、マモルさん、話とは?王都騎士団のことですね?」
とアランがおもむろに切り出した。さすがに察しがいい。
「…そうだ。まず今日、陛下が下された沙汰から話そう…。王都騎士団の団長と副団長は、王宮の命令に叛いた罪で死罪が言い渡された。他の上層部は国外への永久追放だ。帰国は罷りならんと…」
「…副団長って、レベッカさんも?彼女は私たちと一緒に戦ったわよ?」
「玲ちゃんの言う通りだ。そのことは陛下にもお伝えして、彼女は無罪。とはいえ、副団長の立場でありながら、団長や他の団員たちに具申ができなかったという過ちはあるとされて、しばらくの間、自宅謹慎となった。
で、今後のことなんだが…」
「この先は私がお話しします」
とクロードがワシの言葉を遮った。何か思うことがあるのだろう。
「…分かった。進めてくれ…」
「先日、ガイナム様とマモル殿の間で、軽く話されたようですが、この機会に王都騎士団と、各領地の騎士団を統合して、王都と各領地に分配する、という案が出ています。今回の沙汰で、王都騎士団は瓦解したも同然です。また、王都騎士団の練度が低いこと、覇気のなさも大きな原因です。
この統合を実現するため、どのような段取りで、誰がどのような役回りをするのか、大枠を決めるよう、ガイナム様から指示されました」
と、その時、玄関から声が聞こえた。しばらく後にダイニングのドアが開けられ、姿を見せたのは、サハテとレベッカを従えた女王陛下だった…。




